第85回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える64)

◆小平市の「小平市民等提案型まちづくり条例の運用」(イメージ図、下記参照)をご照会します。

 

「まちづくりの発意」から始まり、「地区まちづくり準備会」「地区まちづくり協議会」を経て、「地区まちづくり計画」や「地区まちづくりルール」をつくり、まちづくりを進めるイメージがコンパクトにまとまっているかと思います。

 

文京区においては「まちづくり活動の支援」のページで、「区民が主体となるまちづくりの推進のイメージ」を掲載していますが、抽象論に留まっています。

 

文京区まちづくり推進要綱」を見直したり、新たに「協働・協治の理念に基づく『文の京』まちづくり基本条例」等を制定したりする際には、小平市のような具体的なフローのイメージ図をつくり、区民にしっかり示してほしいと思います。(続く)
(2019年2月12日)

第84回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える63)

◆小平市の「小平市民等提案型まちづくり条例」には「地区まちづくり協議会」に関連してもうひとつの特徴があります。

 

「地区まちづくり準備会」「地区まちづくり協議会」のほかに、「推進地区まちづくり協議会」もあるのです。

 

条例で確認すると、次のようになっています。

 

◎まず「推進地区」です。

第8条 市長は、次の各号のいずれかに該当する地区において、市街地の整備又は都市環境の改善を目的とするまちづくりを重点的に推進する必要があると認めるときは、当該地区をまちづくりを重点的に推進する地区(以下「推進地区」という。)として指定をすることができる。
  (1) まちづくりに関する計画等において重点的な都市整備が必要とされている地区
  (2) 都市計画法に基づく都市計画事業の施行地区及び周辺地区
  (3) その他市長が特に必要と認める地区
  2 市長は、前項の指定に当たり、推進地区の地区住民等の意見を反映させるため、説明会の開催その他必要な措置を講ずるとともに、あらかじめ地区まちづくり審議会の意見を聴かなければならない。
  3 市長は、第1項の指定をしたときは、その旨を公告しなければならない。
  4 前2項の規定は、推進地区の指定の変更又は取消しについて準用する。

 

◎次に、「推進地区まちづくり協議会」です。

第9条 市長は、前条第1 項の指定をしたときは推進地区の地区まちづくりの推進を図るため当該推進地区の地区住民等その他規則で定める者により組織する協議会( 以下「推進地区まちづくり協議会」という。) を設置し、当該指定を取り消したときは推進地区まちづくり協議会を廃止するものとする。
  2 市長は、前項の規定により推進地区まちづくり協議会を設置し、又は廃止したときは、その旨を公告するとともに、地区まちづくり審議会に報告しなければならない。

 

(地区まちづくり計画の案の策定)
第10条 地区まちづくり協議会及び推進地区まちづくり協議会( 以下「地区まちづくり協議会等」という。) は、次に掲げる事項を定めた地区まちづくり計画の案を策定することができる。
  (1) 地区まちづくり計画の名称
 (2) 地区まちづくり計画の地区の位置及び区域
 (3) 地区まちづくり計画の目標及び方針
  2 地区まちづくり協議会等は、地区まちづくり計画の案に、次に掲げる事項を定めることができる。
 (1) 地区まちづくり計画の地区における建築行為等に関する制限( 以下「地区まちづくりルール」という。)
 (2) その他地区まちづくりのために必要な事項
  3 地区まちづくり協議会は、次の各号に掲げる要件のすべてを満たす地区まちづくり計画の案を策定したときは、市長に対し、規則で定めるところにより地区まちづくり計画としての認定を申請することができる。
 (1) おおむね3000平方メートル以上の面積を有するまとまりのある区域であること。
 (2) 地区における土地利用、建築物の建築、自然環境の保全、景観の形成等の方針を定めたものであること。
 (3) 地区住民等から規則で定める基準以上の同意を得ていること。
 (4) 小平市都市計画マスタープランその他の市のまちづくりに関する計画及び市が行うまちづくりに関する施策に適合していること。
 (5) その他規則で定める要件
 4 推進地区まちづくり協議会は、地区まちづくり計画の案を策定したときは、地区住民等に対して説明会の開催その他必要な措置を講じた上で、市長に対し、地区まちづくり計画としての認定を申請することができる。

 

( 地区まちづくり計画の案の縦覧等)
第11 条 市長は、地区まちづくり計画としての認定をしようとするときは、あらかじめ次に掲げる事項を公告し、当該計画の案を当該公告の日の翌日から起算して2 週間公衆の縦覧に供しなければならない。
 (1) 地区まちづくり計画の案のうち名称、位置及び区域
 (2) 縦覧場所
 2 市長は、地区住民等に対する周知のため必要があると認めるときは、地区まちづくり協議会等に対し、縦覧期間中に説明会の開催その他必要な措置を講ずるよう求めることができる。
 3 地区住民等は、縦覧に供された地区まちづくり計画の案について意見があるときは、縦覧期間の満了の日までに、意見書を市長に提出することができる。

 

これに対して、文京区には「文京区まちづくり推進要綱」において、「まちづくり推進対象区域」というものが定められています。

 

第3条 まちづくり推進対象区域とは、次の各号いずれかに該当するものをいう。
 (1) 文京区都市マスタープランにおいて、地域拠点又は生活位置付けられた区域
 (2) 良好な住環境の保全、魅力ある景観づくり 、地域への貢献に資する一体的な整備等を図る必要があると認められた区域
 (3) 別表に掲げるまちづくり事業を推進する必要があると認められた区域
  1 木造住宅密集市街地整備促 進事業
  2 防災生活圏促進事業
  3 緊急木造住宅密集地域防災対策事業
  4 都市防災不燃化促進事業
  5 市街地再開発事業
  6 都心共同住宅供給事業

 

「文京区まちづくり推進要綱」の見直しや、「協働・協治に基づく『文の京』まちづくり基本条例」などの制定の際には、地元区民の発意に基づく「まちづくり協議会」の中で、上記(1)と(3)に該当する場合は「推進区域まちづくり協議会」として区別し、認定要件や支援内容も別に設定することを検討すべきではないでしょうか。(続く)
(2019年2月8日)

 

第83回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える62)

◆小平市の「地区まちづくり協議会」の認定と「地区まちづくり準備会」の登録にあたって、小平市にあって文京区にない仕組みを指摘しておきたいと思います。


それは小平市には「小平市地区まちづくり審議会規則」があり、それに基づく「審議会」があるということです。

 

地区まちづくり協議会」は市長が認定しますが、その前に「審議会」の意見を聴くことになっています。

 

第7条の3 市長は、前項の認定をするときは、あらかじめ地区まちづくり審議会の意見を聴かなければならない。

 

これに対して、文京区の場合は「区長が認定する」となっているだけです。

 

もちろん、小平市の場合、「審議会」の役割は、「地区まちづくり協議会」の認定にかかわる意見を市長にするだけにとどまりません。

「審議会」の委員の構成は
    (1) 市民3人以内
    (2) 学識経験を有する者 2人以内
    (3) 小平市の区域内に存するまちづくりに関係する団体の代表2人以内

 

この構成が最適かどうかは別途、検討する必要がありますが、少なくとも文京区においても「まちづくり推進要綱」を見直したり、「協働・協治に基づく『文の京』まちづくり基本条例」といったものを新たに制定したりするのであれば、こうした区長に対する助言機能を担う「審議会」の必要性も調査・研究すべきでしょう。

 

結果として、こうした「審議会」は不要であるという結論に至ったとしても、「調査・研究も具体的な検討もしませんでした…」という事態だけは避けてほしいと思います。(続く)
(2019年2月7日)

 

第82回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える61)

文京区と小平市の「まちづくり協議会」の認定要件の比較を続けます。

 

小平市の「地区まちづくり準備会」も見てみます。登録を受けると、以下の支援を受けられるようになります。

   ◎まちづくりアドバイザーの派遣
    ・一度に3人まで
    ・1年に4回まで
    ・最長で4年

  ◎助成金の交付
    ・1年度に5万円まで
    ・2年度まで(延長できる場合あり)

 

こうした支援を受けるための「地区まちづくり準備会」の登録要件は
   (1)規約等を定めていること
   (2)代表者を定めていること
   (3)おおむねの活動対象区域を定めていること
   (4)その他規則で定める要件
       ・構成員が5人以上であること
    ・構成員の過半数が地区住民等であること
    ・活動内容が特定の者に利害を及ぼすものではないこと
    ・政治的活動又は宗教的活動を目的とするものではないこと
    ・その他市長が不適切であると認める活動を行うものではないこと

 

さて、「文京区まちづくり協議会助成金交付要綱」における「まちづくり協議会」に対する支援内容は下記でした。
   ・1年度に5万円を上限
   ・3年度まで(区長が必要と認めた場合は延長可能)

 

文京区では「まちづくり協議会」の認定を受けなくても、「まちづくりコンサルタント」の派遣を受けられますから、「アドバイザー」と「コンサルタント」という名称の違いはあっても、この専門人材の派遣という意味では似ていると考えていいでしょう。

 

こうして見てくると、実は小平市の「地区まちづくり準備会」に対する助成金と、文京区の「まちづくり協議会」に対する助成金がほぼ同額であることが見て取れます。

 

何が言いたいのかというと、助成金の額という面では小平市の「地区まちづくり準備会」と同等の位置付けながら、認定要件はというと小平市の登録要件より格段に厳しくなっているという点です。

 

「文京区まちづくり推進要綱」における「まちづくり協議会」は、支援内容と認定要件において、必ずしも合理的なバランスが取れているとは言えず、見直しの際にはどのようにするのが一番相応しいか徹底的に調査・研究した上で新しいものにしてもらいたいと思います。(続く)
(2019年2月6日)

 

第81回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える60)

引き続き、文京区と小平市の「まちづくり協議会」の認定要件を比べます。

 

◆小平市では「地区まちづくり協議会」の認定を受けると、以下の支援を受けられるようになります。

  ◎まちづくりアドバイザーの派遣
    ・一度に3人まで
     ・1年に4回まで
     ・最長で5年

  ◎助成金の交付
     ・1年度に20万円まで
     ・3年度まで(延長できる場合あり)

 

そして、そうした支援を受けるための「地区まちづくり協議会」の認定要件は以下となっているわけです。
 (1)規約等を定めていること
 (2)代表者を定めていること
  (3)活動区域を定めていること
  (4)地区住民等の自由な参加を保障していること
  (5)認定を受けることについて、地区住民等から規則で定める基準以上の支持を得ていること
   ・基準は、活動区域の地区住民等(居住する者にあっては、20歳に達している者に限る。)のおおむね3分の1とする
  (6)活動内容が特定の者に利害を及ぼすものではないこと
  (7)その他規則で定める要件
   ・構成員が10人以上であること。
   ・構成員の過半数が地区住民等であること。
   ・政治的活動又は宗教的活動を目的とするものではないこと。
   ・その他市長が不適切であると認める活動を行うものではないこと。

 

これに対して、「文京区まちづくり協議会助成金交付要綱」は、下記のようになっています。
  ・1年度に5万円を上限
  ・3年度まで(区長が必要と認めた場合は延長可能)

 

文京区ではこうした助成金を交付してもらうための認定要件として下記があるということになります。

 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証 されていること。
 (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、 まちづくり活動の目的 を達するために必要な区域において、 まちづくり 活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、 活動を行う区域 内の区民等多数 の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

両区市を比べて結論として言えることは、小平市の方が受けられる支援が手厚いにもかかわらず、文京区の場合は(5) 当該団体の主たる活動が、 活動を行う区域 内の区民等多数 の支持を受けていること(※小平市の場合は「おおむね3分の1)と、厳しくなっているということです。

 

もちろん、各市区でいろいろな事情が違いますから一概にその是非は問えませんが、それでも「文京区まちづくり推進要綱」を見直したり、「協働・協治に基づく『文の京』まちづくり基本条例」などを新たに瀬呈する際は、小平市のケースを参考にしたいところです。(続く)
(2019年2月5日)

 

第80回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える59)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について、小平市と比較してみましょう。

◆小平市は「小平市民等提案型まちづくり条例」があるとともに、市のHPには「身近な地区のまちづくりを進めてみませんか」と題するページがあり、「地区まちづくり協議会」と「地区まちづくり準備会」に対して、助成金の交付やまちづくりアドバイザーの派遣をしています。

 

まず、「地区まちづくり準備会」ですが、登録要件は以下となっています。
 (1) 規約等を定めていること
 (2) 代表者を定めていること
 (3) おおむねの活動対象区域を定めていること
 (4) その他規則で定める要件
   ・構成員が5人以上であること
   ・構成員の過半数が地区住民等であること
   ・活動内容が特定の者に利害を及ぼすものではないこと
   ・政治的活動又は宗教的活動を目的とするものではないこと
   ・その他市長が不適切であると認める活動を行うものではないこと

 

次に、「地区まちづくり協議会」の認定要件は以下となっています。
 (1) 規約等を定めていること
 (2) 代表者を定めていること
 (3) 活動区域を定めていること
 (4) 地区住民等の自由な参加を保障していること
 (5) 認定を受けることについて、地区住民等から規則で定める基準以上の支持を得ていること
   ・基準は、活動区域の地区住民等(居住する者にあっては、20歳に達している者に限る。)のおおむね3分の1とする
 (6) 活動内容が特定の者に利害を及ぼすものではないこと
 (7) その他規則で定める要件
   ・構成員が10人以上であること。
   ・構成員の過半数が地区住民等であること。
   ・政治的活動又は宗教的活動を目的とするものではないこと。
   ・その他市長が不適切であると認める活動を行うものではないこと。

 

これに対して、「文京区まちづくり推進要綱」における「まちづくり協議会」の認定要件は以下の6項目です。
 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証されていること。
 (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、まちづくり活動の目的を達するために必要な区域において、まちづくり活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域 内の区民等多数 の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

さて、文京区と小平市の認定要件を比べてどのように評価すればいいでしょうか。

 

次回、詳しくみていきたいと思います。(続く)
(2019年2月4日)

 

第79回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える58)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について、武蔵野市と比較してみましょう。

 

◆武蔵野市には「武蔵野市まちづくり条例」があり、「地区まちづくり協議会」の認定制度と、「地区まちづくり準備会」の登録制度があります。

それぞれの概要と認定要件は以下のとおりです。

 

◎地区まちづくり協議会・・・地区まちづくり協議会とは、自分たちの身近な地区のまちづくりについて提案を行うために、市から認定を受けた団体のことです。地区まちづくり協議会に認定された団体は、都市計画、地区計画、地区まちづくり計画の提案を行うことができます。

 

地区まちづくり協議会の認定を受けるための主な要件は以下のとおりです。
  (1) 対象区域が決まっていて、その面積が1000平方メートル以上であること。
  (2) 10人以上の区域内の住民等で構成されていること。
  (3) 設立の目的や趣旨について、区域内の住民等のおおむね10分の1以上の同意を得ていること。
  (4) 代表者、会計等の役員を決めていること。など

 

◎地区まちづくり準備会・・・地区まちづくり準備会とは、地区まちづくり協議会の設立を目的として活動し、市の登録を受けている団体のことです。

 

地区まちづくり準備会の登録を受けるための主な要件は以下のとおりです。
  (1) おおむねの対象区域が決まっていること。
  (2) 3人以上の区域内の住民等で構成されていること。
  (3) 代表者を定めていること。など

 

これに対して、「文京区まちづくり推進要綱」における「まちづくり協議会」の認定要件は以下の6項目です。
  (1) 区民等によって構成されていること。
  (2) 区民等に参加の機会が保証 されていること。
  (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
  (4) 当該団体が、 まちづくり活動の目的 を達するために必要な区域において、 まちづくり 活動を行うものであること。
  (5) 当該団体の主たる活動が、 活動を行う区域 内の区民等多数 の支持を受けていること。
  (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

武蔵野市の(3) 設立の目的や趣旨について、区域内の住民等のおおむね10分の1以上の同意を得ていること、という認定要件は八王子市より緩やかなものと言えます。

 

文京区の場合、「まちづくり準備会」はありませんが、「まちづくり推進要綱」の見直しや「協働・協治に基づく『文の京』まちづくり基本条例」などの制定にあたっては、「まちづくり研究会」や「まちづくり準備会」という組織形態も加えた上で、認定要件はそれぞれの組織形態に最も相応しいものをゼロから考えてほしいと思います。(続く)
(2019年2月1日)

 

第78回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える57)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について、八王子市と比較してみましょう。

◆八王子市には「八王子市地区まちづくり推進条例」があり、「地区まちづくり協議会」の認定制度があります。

八王子市のHPには次のように書いてあります。

 

地区まちづくり協議会・・・地区まちづくり協議会は、地域のみなさまで結成される地区まちづくりを推進するための組織です。協議会では、まちづくりの方針や建物のルールなどについて地区内で話し合いを重ね、合意した方針やルールを地区まちづくり計画案としてまとめるなどの活動を行います。

 

協議会に認定されると、活動費の助成やまちづくりアドバイザーのあっ旋など、市がまちづくりのお手伝いをします。地区まちづくり協議会の認定については、まちなみ整備部まちなみ景観課までご相談ください。

 

そして、認定要件は以下の9項目となっています。
   1.規約等があること。
 2.代表者を定めていること。
 3.活動区域を定めていること。
 4.地区住民等で構成されていること。
 5.地区住民等の自由な参加を保障していること。
 6.地区住民等(居住者は20歳以上)のおおむね3分の1以上の支持を得ていること。
 7.活動内容が特定の者に利害を及ぼすものでないこと。
 8.政治上の活動及び宗教的活動を目的としたものでないこと
 9.その他市長が不適切であると認めた活動を行うものではないこと。

 

特に、私たちが注目しているのは、文京区の「まちづくり推進要綱」に基づく「まちづくり協議会」の認定要件の(5) 当該団体の主たる活動が、 活動を行う区域内の区民等多数の支持を受けていること--という部分です。

 

八王子市の場合、「6.地区住民等(居住者は20歳以上)のおおむね3分の1以上の支持を得ていること」がそれに当たるかと思いますが、文京区の方が要綱上の認定要件であるにもかかわらず、八王子市の条例上の認定要件より厳しくなっています。

 

当然のことながら、「3分の1以上の支持を得ていること」と規定するにしても、「多数の支持を受けていること」と規定するにしても、合理的根拠に基づく説明責任が自治体にあり、臣民・区民がある程度、納得する必要があるでしょう。

 

「まちづくり推進要綱」を見直す際、あるいは「協働・協治に基づく『文の京』まちづくり基本条例」などを新たなに制定する際には、「3分の1以上の支持を得ていること」と改めることも選択肢のひとつとして、合理的根拠を巡り議論する必要があるのではないでしょうか。(続く)
(2019年1月31日)

 

第77回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える56)

杉並区ケースと同様、練馬区についても3パターンある「まちづくり」の手続きの流れのフローチャートを画像で貼り付けておきます。

 

文京区において、「まちづくり推進要綱」を見直したり、新たに「『文の京』まちづくり基本条例」等を制定する際には、練馬区や杉並区にあるようなフローチャートを作って区民に示したうえで、パブリック・コメントを募集してほしいと思います。

 

それが、文京区が「文の京」自治基本条例で謳う「協働・協治」の理念に沿った手続きでしょう。(続く)
(2019年1月30日)


第76回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える55)

引き続き、文京区と練馬区の「まちづくり協議会」の認定要件を比較していきたいと思います。

 

◆「練馬区まちづくり条例」は第25条で、「総合型地区まちづくり協議会の認定」について定めています。

第25条 区長は、総合型地区まちづくり計画の案を作成しようとする団体で、その設立の目的がこの条例の目的に即しており、つぎに掲げる要件を満たすものを総合型地区まちづくり協議会として認定することができる。
 (1) 総合型地区まちづくり計画に係る地区の区域が定まっていること。
 (2) 設立の目的および趣旨についての当該地区の住民の合意が規則で定める基準に達していること。
 (3) 構成員が当該地区の住民等であり、おおむね当該地区の区域全体から参加していること。
 (4) 当該地区の住民等の参加の機会が保障されていること。
 (5) 代表者、会計等の役員が定まっていること。
 (6) 会則、規約等の定めがあること。
 (7) 前各号に掲げるもののほか、区長が必要と認める要件を満たすものであること。

 

これに対して、「文京区まちづくり推進要綱」における「まちづくり協議会」の認定要件は以下の6項目です。

 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証 されていること。
 (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、 まちづくり活動の目的 を達するために必要な区域において、 まちづくり 活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、 活動を行う区域 内の区民等多数 の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

違いとしては、練馬区にあって文京区にないものが、練馬区の(1)地区の区域が定まっていること。

 

逆に文京区にあって練馬区にないものが、文京区の(3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること、かと思います。

 

もうひとつ、似ているようで異なるのが練馬区の(2)と文京区の(5)でしょう。

 

練馬区の(2)にある「規則で定める基準」が具体的に何を示すのか分からないですが、練馬区では「設立の目的および趣旨」を重視しているのに対して、文京区は「主たる活動」を重視しているように読み取れます。

 

ですが、練馬区が条例上の規定であるのに対し、文京区の場合は要綱上の規定ですから、一般論からすれば、文京区の要綱上の規定の方が緩やかであってもいいのではないでしょうか。

 

文京区の(5)の「まちづくり協議会」の認定要件は、要綱上の規定であることを踏まえ、下記のようなものであってもいいような気がします。

 

当該団体の設立の目的および趣旨が、活動を行う区域内の区民等多数の支持を受けていること」--

 

文京区において「まちづくり推進要綱」を見直したり、新たに「『文の京』まちづくり基本条例」等を制定したりする際には、ぜひ検討して頂きたいと思います。(続く)
(2019年1月29日)

 

第75回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える54)

◆練馬区も「まちづくり条例」の中で、「地区まちづくり準備会」と「地区まちづくり協議会」を分けて、位置付けています。

さらに、「地区まちづくり」を3種類に分類した上で、それぞれで、「地区まちづくり準備会」と「地区まちづくり協議会」を設ける力の入れようです。

 

まず、「地区まちづくり」を3種類を見てみましょう。

 

■総合型地区まちづくり (まちづくり条例第24条~第28条)・・・身近な地区を単位とした住民による主体的なまちづくりが進められるよう、建築その他土地利用等に関するルールや基準等を定める制度。
  (例)戸建て中心のみどり豊かな地区にしたい/地域の建物の色使いを調和させたい

 

■施設管理型地区まちづくり (まちづくり条例第29条~第33条)・・・住民主体の地区のまちづくりが進められるよう、公園、緑地などの施設について、地区住民や利用者が主体となった管理・利用に関する事項を定める制度。
  (例)公園の管理・利用の仕方についてルールを決めたい

 

■テーマ型まちづくり (まちづくり条例第34条~第39条)・・・みどりの保全や良好な景観の形成などをテーマとして、区民等が主体となって、区と協力してまちづくりを推進するための提案ができる制度。

 

次に、具体的に条例でどう定めているか見てみます。(このコーナーでは「総合型地区まちづくり」に絞って考えます) 

 

総合型地区まちづくり計画)
第24条 総合型地区まちづくり計画とは、規則で定める要件を満たす地区において、当該地区の住民等が主体となって、開発事業その他土地利用等に関する基準等を定め、もって当該地区におけるまちづくりを推進することを目的に定める計画をいう。

 

(総合型地区まちづくり協議会の認定)
第25条 区長は、総合型地区まちづくり計画の案を作成しようとする団体で、その設立の目的がこの条例の目的に即しており、つぎに掲げる要件を満たすものを総合型地区まちづくり協議会として認定することができる。
 (1) 総合型地区まちづくり計画に係る地区の区域が定まっていること。
 (2) 設立の目的および趣旨についての当該地区の住民の合意が規則で定める基準に達していること。
 (3) 構成員が当該地区の住民等であり、おおむね当該地区の区域全体から参加していること。
 (4) 当該地区の住民等の参加の機会が保障されていること。
 (5) 代表者、会計等の役員が定まっていること。
 (6) 会則、規約等の定めがあること。
 (7) 前各号に掲げるもののほか、区長が必要と認める要件を満たすものであること。
 2 前項各号に掲げる要件を満たしている団体で、同項の規定による認定を受けようとするものは、規則で定めるところにより区長に申請しなければならない。
 3 区長は、第1項の規定による認定をしようとする場合において、必要があると認めるときは、部会の意見を聴くことができる。
 4 区長は、第1項の規定により総合型地区まちづくり協議会を認定したときは、その旨を公表するとともに、当該総合型地区まちづくり協議会の代表者に通知しなければならない。
 5 住民等は、総合型地区まちづくり協議会を設立することを目的として、総合型地区まちづくり準備会を設立することができる。
 6 住民等は、総合型地区まちづくり準備会を設立したときは、規則で定めるところにより区長に届け出て、登録を受けることができる。

 

(総合型地区まちづくり計画の案の提案等)
第26条 総合型地区まちづくり協議会は、当該地区内の住民等を対象として説明会を開催し、十分な意見聴取を行い、かつ、当該地区内の住民のおおむね2分の1以上の同意かつ当該地区内の土地所有者等の2分の1以上の同意(同意した者が所有する当該地区内の土地の地積と同意した者が有する借地権の目的となっている当該地区内の土地の地積の合計が、当該地区内の土地の総地積と借地権の目的となっている土地の総地積との合計の2分の1以上となる場合に限る。)を得たうえで、規則で定めるところにより総合型地区まちづくり計画の案を区長に提案することができる。
 2 総合型地区まちづくり協議会は、前項の総合型地区まちづくり計画の案の作成に当たり、規則で定めるところにより当該地区の目標およびまちづくりに関する方針等を定めた地区まちづくりの理念を定め、区長に報告することができる。
 3 区長は、前項の地区まちづくりの理念がこの条例の目的に即していると認めるときは、当該地区まちづくりの理念を公表するものとする。

 

(総合型地区まちづくり計画の認定)
第27条 区長は、前条第1項の規定による総合型地区まちづくり計画の案の提案があったときは、その旨を公表し、当該総合型地区まちづくり計画の案を公表の日の翌日から起算して3週間公衆の縦覧に供する。
 2 住民等は、前項の規定による公表があったときは、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された総合型地区まちづくり計画の案について意見書を区長に提出することができる。
 3 区長は、前項の規定により意見書が提出されたときは、速やかに当該意見書の写しを当該総合型地区まちづくり協議会の代表者に送付するものとする。
 4 総合型地区まちづくり協議会は、前項の規定により意見書の写しの送付を受けたときは、速やかに当該意見書に対する回答書を区長に提出しなければならない。
 5 区長は、前項の回答書が提出されたときは、第2項の規定により提出された意見書の要旨および当該回答書を公表するものとする。
 6 区長は、第2項の意見書および第4項の回答書の内容を考慮し、あらかじめ部会の意見を聴いたうえ、第14条に規定する基準に基づき、総合型地区まちづくり計画として認定するかどうかを判断するものとする。
 7 区長は、前項に規定する判断をしたときは、その旨、当該総合型地区まちづくり計画の案および当該判断に係る区の見解書を公表するとともに、当該見解書を当該総合型地区まちづくり協議会の代表者に通知しなければならない。

 

文京区の場合、「まちづくり推進要綱」なので、練馬区の充実した条例とは一様に比べられるものではありません。

 

それでもひとつ挙げるとすれば、練馬区の場合、冒頭、「当該地区の住民等が主体となって、開発事業その他土地利用等に関する基準等を定め、もって当該地区におけるまちづくりを推進することを目的に定める」としている点は重要でしょう。

 

少なくとも、文京区の「まちづくり推進要綱」の中に、「主体」という言葉も、住民等(区民等)が主体」というくだりも出てきません。

 

「まちづくり推進要綱」を見直したり、「文の京」まちづくり基本条例を新たに制定する際は、ぜひとも「区民等が主体である」という言葉を入れてほしいと思います。(続く)
(2019年1月28日)

 

第74回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える53)

杉並区の3パターンある「まちづくり協議会」の定義・位置付けと認定要件が分かる資料を画像で貼り付けておきます。

 

文京区において、「まちづくり推進要綱」を見直したり、新たに「『文の京』まちづくり基本条例」等を制定する際には、杉並区にあるようなフローチャートを作って区民に示したうえで、パブリック・コメントを募集してほしいと思います。

 

それが、文京区が「文の京」自治基本条例で謳う「協働・協治」の理念に沿った手続きだと思います。(続く)
(2019年1月24日)




第73回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える52)

杉並区まちづくり条例見直しに向けた提言」(杉並区まちづくり条例に関する懇談会報告書)を振り返り、文京区の「まちづくり推進要綱」見直しの際の参考にしたいと思います。

 

「文京区まちづくり推進要綱」では、第5条において単に「まちづくり協議会」というものが出てくるだけです。

 

◆これに対して杉並区の場合は、まず「まちづくり団体」というものがあり、その次に「まちづくり協議会」が出てくるのです。

 

◎(まちづくり団体)・・・まちづくり条例に基づく
 第13条 良好な街並みの保全及び創出等のまちづくりを行うことを目的とする団体で、当該団体の活動区域内において居住する者、事業を営む者及び土地又は建築物等について権利を有する者で構成され、かつ、規則で定める要件に該当するものは、規則で定めるところにより、まちづくり団体として区長に届け出ることができる。
  2 まちづくり団体は、当該団体を解散したときは、規則で定めるところにより、区長に届け出なければならない。

 

◎(まちづくり団体の届出等)・・・まちづくり条例施行規則に基づく
 第5条 条例第13条第1項の規定による届出は、まちづくり団体登録(更新)届(第1号様式)に次に掲げる書類を添えて行わなければならない。
  (1) 団体の代表者及び構成員の氏名及び住所を記載した名簿
  (2) 団体の活動区域を示す図面
   (3) 団体の規約その他これに類する書類
   (4) 前3号に掲げるもののほか、区長が必要と認める書類
   2 区長は、前項の規定により届出のあった団体を登録したときは、同項のまちづくり団体登録(更新)届をまちづくり団体登録簿につづるものとする。
   3 区長は、前項の規定により団体を登録したときはまちづくり団体登録(更新)通知書(第2号様式)により、登録しなかったときは通知書(第3号様式)により、通知するものとする。
   4 まちづくり団体の登録期間は、登録の日から3年間とする。

 

杉並区の場合はさらにその上で、「まちづくり協議会」を3つのパターンに分けています。

 

■その1■(テーマ型まちづくり協議会)・・・まちづくり条例に基づく
 第16条 区長は、テーマ型まちづくり(まちづくりのうち、みどりの保全及び育成、歩行環境の向上その他の区長が別に定める特定の分野に取り組むことを主たる目的とするものをいう。次項において同じ。)を行っているまちづくり団体で、規則で定める要件に該当するものを、まちづくり景観審議会の意見を聴いた上で、テーマ型まちづくり協議会として認定することができる。
   2 テーマ型まちづくり協議会は、規則で定めるところにより、テーマ型まちづくりに係る提案を区長に行うことができる。
  3 第14条第2項及び第3項の規定は、テーマ型まちづくり協議会の認定等の手続について準用する。

 

(テーマ型まちづくり協議会の要件)・・・まちづくり条例施行規則に基づく
 第12条 条例第16条第1項の規則で定める要件は、次のとおりとする。
   (1) 団体の活動の内容がまちづくり基本方針及びこれに基づく区の施策に照らして適当であること。
   (2) 団体の活動区域内において居住する者、事業を営む者及び土地又は建築物等について権利を有する者(次号において「居住者等」という。)が10人以上いること。
   (3) 規約に役員、会計及び団体に所属していない居住者等の当該団体への加入の機会を保障する旨の定めがあること。

 

■その2■(市街地整備型まちづくり協議会)・・・まちづくり条例に基づく
 第14条 区長は、市街地整備型まちづくり(まちづくりのうち、市街地整備、都市環境の向上等のため、第17条第2項の規定によるまちづくりルールの登録の申請、第18条第1項の規定によるまちづくり構想の提案等をすることを主たる目的とするものをいう。次条第1項において同じ。)を行っているまちづくり団体(これに準ずる団体で、区長が特に認めるものを含む。第16条第1項において同じ。)で、規則で定める要件に該当するものを、まちづくり景観審議会の意見を聴いた上で、市街地整備型まちづくり協議会として認定することができる。
   2 市街地整備型まちづくり協議会の認定を受けようとするものは、規則で定めるところにより、区長に認定の申請をしなければならない。
  3 市街地整備型まちづくり協議会は、前項の規定により申請した内容を変更したとき、又は当該まちづくり協議会を解散したときは、規則で定めるところにより、区長に届け出なければならない。

(市街地整備型まちづくり協議会の要件)・・・まちづくり条例施行規則
 第7条 条例第14条第1項の規則で定める要件は、次のとおりとする。
  (1) 団体の活動の内容がまちづくり基本方針及びこれに基づく区の施策に照らして適当であること。
  (2) 団体の活動区域(以下この条及び次条において「活動区域」という。)内において、市街地整備型まちづくり協議会又は地区指定型まちづくり協議会として認定されている団体がないこと。
  (3) 活動区域に一体性があること。
  (4) 活動区域の面積が5,000平方メートル以上であること。
  (5) 活動区域内において居住する者、事業を営む者及び土地又は建築物等について権利を有する者(以下この条及び次条において「居住者等」という。)が10人以上いること。
  (6) おおむね活動区域内全体からの居住者等の参加があること。
  (7) 規約に役員、会計及び団体に所属していない居住者等の当該団体への加入の機会を保障する旨の定めがあること。
  (8) 団体の活動の目的及び内容について、当該団体に所属していない居住者等に対し、説明及び意見聴取等を行っていること。

 

■その3■(地区指定型まちづくり協議会)・・・まちづくり条例に基づく
 第15条 区長は、地区指定型まちづくり(推進地区において行う市街地整備型まちづくりをいう。)を行っているまちづくり団体で、規則で定める要件に該当するものを、まちづくり景観審議会の意見を聴いた上で、地区指定型まちづくり協議会として認定することができる。
  2 前条第2項及び第3項の規定は、地区指定型まちづくり協議会の認定等の手続について準用する。

 

(地区指定型まちづくり協議会)・・・まちづくり条例施行規則に基づく
 第11条 第7条から前条までの規定は、地区指定型まちづくり協議会について準用する。

 

文京区の「まちづくり協議会」の認定要件(5)にあるような「当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること」という規定は、杉並区の「まちづくり団体」はもとより、いずれのタイプの「まちづくり協議会」にもありません。

 

その代わりと言っていいかどうか分かりませんが、杉並区の「市街地整備型まちづくり協議会」と「地区指定型まちづくり協議会」の認定要件には「団体の活動の目的及び内容について、当該団体に所属していない居住者等に対し、説明及び意見聴取等を行っていること」が入っています。

 

文京区の「まちづくり協議会」が「条例」に基づくものではなく、かつ、「まちづくり協議会」の定義や位置付けが明確になっていないのに、認定要件に(5)が入っているのは厳しいように感じます。

 

杉並区の要件が緩いかどうかの評価は措くとして、「団体の活動の目的及び内容について、当該団体に所属していない居住者等に対し、説明及び意見聴取等を行っていること」という要件は合理的であり、まちづくりに携わろうとする多くの文京区民の理解を得られやすいと思います。

 

「文京区まちづくり推進条例」を見直す、あるいは新たに「まちづくり基本条例」を制定する際は、ぜひとも杉並区の例を検証し、参考にしてほしいと思います(続く)
(2019年1月23日)

 

第72回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える51)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について引き続き考えます。

 

今日は杉並区と比較したいと思います。

 

◆杉並区では平成15年4月1日、「まちづくり条例」を施行しました。

 

その後、見直し作業を進め、平成21年4月1日に改正しましたが、その見直し作業では「まちづくり協議会」も対象となっていました。

 

杉並区まちづくり条例見直しに向けた提言」(杉並区まちづくり条例に関する懇談会報告書)を紐解いてみましょう。

 

「見直しの方針」のところに次のように書いてあります。

 

「まちづくり協議会の認定要件に曖昧さがあり、まちづくり専門部会等からも要件を明確にするよう意見が出されました」--。

 

「見直しの方針として、大きく次の三点が重要なことである考えました」とした上で、「まちづくり協議会にかかわる事項」として、「まちづくりにかかわる団体には多様性があり、想定される活動のプロセスや活動成果のイメージを考えながら制度設計をする必要があること。また、協議会の意義を確認し、協議会の認定要件などを整える必要があること」と指摘しています。

(※杉並区におけるまちづくり協議会の登録と認定のイメージは下記の図を参照)

 

杉並区の当時の見直し方針は、そのまま文京区にも当てはめることができるのではないでしょうか。

 

文京区の場合、「まちづくり推進要綱」ができてから30年経っているわけです。

 

その中に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件の見直しに当たっては、上記の杉並区の見直し方針をそのまま取り入れてもいいのではないでしょうか。

 

せっかく杉並区でこうした見直しの先行事例があるわけですから、その経緯をじっくり研究・検証して、文京区にふさわしい形の「まちづくり協議会」のあり方を検討してほしいところです。(続く)
(2019年1月22日)


第71回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える50)

文京区の「まちづくり推進要綱」における「まちづくり協議会」の認定要件は以下の6項目です。
 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証 されていること。
 (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、まちづくり活動の目的 を達するために必要な区域において、 まちづくり活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域 内の区民等の多数の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

◆これに対して、渋谷区の「まちづくり条例」に基づく「まちづくり協議会」の認定要件は以下の10項目です。
 一 まちづくり協議会(以下「協議会」という。)の目的が、条例第二条の基本理念に基づいていること。

 二 協議会の構成員が地区住民等であり、活動する地区全体から参加し、その人数(一世帯に複数の当該構成員がいる場合は、一世帯を一人とし、当該構成員が法人の場合は、一法人を一人として算定する。)が三十人以上で、かつ、その二分の一以上が地区内に居住していること。
  三 地区内の町会、商店会、企業及び各種団体等の代表者が参加する等、当該協議会が、その活動する地区を代表していると認められること。
  四 当該協議会が活動する地区が、他の協議会の活動する地区と重複していないこと。
  五 協議会の活動する地区に地理的な一体性があること。
  六 定期的に協議会の活動がなされていること。
  七 会則及び役員の定めがあること。
  八 会長及び役員が民主的な方法で選任されること。
  九 当該協議会が活動する地区のすべての地区住民等が、協議会への入退会を自由に行うことができること。
  十 特定のものに対して著しい利益又は不利益を与えるものでないこと。

 

★違い(その1)★・・・文京区には「まちづくり基本条例」がなく、「まちづくり」の定義もされていないため、渋谷区の認定要件の「一」はありません。

 

ちなみに渋谷区の条例第二条の基本理念とは次のとおりです。
(基本理念)
 第二条 区、区民及び企業等は、快適で多様な定住空間の形成、生活文化を発信する活力ある副都心の育成、にぎわいのある身近な生活空間の形成、人にやさしい環境の形成、豊かなみどりと良好な景観の形成及び災害に強く安全なまちの形成をまちづくりの目標とし、相互の理解、信頼及び協力の下に、協働型のまちづくりに取り組まなければならない。

 

★違い(その2)★・・・文京区は協議会の構成員の人数について定めていませんが、渋谷区では「三十人以上で、かつ、その二分の一以上が地区内に居住していること」と定めています。

 

★違い(その3)★・・・文京区は活動地域の定めを特に認定要件としていませんが、渋谷区は「四」と「五」において要件を設けています。

 

★違い(その4)★・・・ガバナンスや民主的運営を担保するための要件として、渋谷区の方が詳細に定めています。特に渋谷区で定めている下記の4項目は、文京区においてあってもおかしくないでしょう。

 七 会則及び役員の定めがあること。
 八 会長及び役員が民主的な方法で選任されること。
 九 当該協議会が活動する地区のすべての地区住民等が、協議会への入退会を自由に行うことができること。
 十 特定のものに対して著しい利益又は不利益を与えるものでないこと。

 

★違い(その5)★・・・文京区においては「当該団体の主たる活動が、活動を行う区域 内の区民等の多数の支持を受けていること」とあるが、渋谷区にそうした規定はなく、その代わり渋谷区の場合は「地区内の町会、商店会、企業及び各種団体等の代表者が参加する等、当該協議会がその活動する地区を代表していると認められること」という要件になっています。

 

一般的に考えれば、「条例」で定めた「まちづくり協議会」の認定要件の方が、「要綱」で定めたものより厳しくなっていて当然といえるかと思います。

 

しかし、「★違い(その5)★」で見ても分かるように、「当該団体の主たる活動が、活動を行う区域 内の区民等の多数の支持を受けていること」という要件は、文京区の方が厳しく定めているように映ります。

 

例えば、仮に文京区の認定要件として現状の(5)の代わりに渋谷区の「三」である方が要件を満たしやすいと言えます。(※少なくとも私たち「千石4丁目南地区まちづくり協議会」にとってはそうなります)

 

「文京区まちづくり推進要綱」を見直したり、「まちづくり基本条例」をつくる際にはぜひ、こうした点を念頭に入れてもらいたいと思います。(続く)
(2019年1月21日)

 

第70回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える49)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について、渋谷区と比べてみたいと思います。

 

◆渋谷区の「まちづくり協議会」は、「渋谷区まちづくり条例」の第19~21条に基づくものです。(※この点ですでに文京区とは違います)

 

文京区の場合、上記「要綱」において、単に「区長が認定することができる」としていますが、渋谷区の場合、「区長は認定をするかどうかを判断するに当たっては、あらかじめまちづくり審議会に諮問しなければならない」(第19条の3)としています。

 

では、渋谷区の「まちづくり審議会」とはどのようなものなのでしょうか。

 

「渋谷区まちづくり条例」では次のように定めています。

(渋谷区まちづくり審議会)
第七条 区長の附属機関として、渋谷区まちづくり審議会(以下「まちづくり審議会」という。)を置く。
  2 まちづくり審議会は、区長の諮問に応じ、次に掲げる事項について調査及び審議し、その結果を答申する。
    一 この条例によりその権限に属する事項
    二 前号に掲げるもののほか、区長がまちづくりについての基本的な事項又は重要事項として必要と認めるもの
  3 まちづくり審議会は、まちづくりに関する事項について、区長に意見を述べることができる。

(まちづくり審議会の組織及び運営)
第八条 この章に定めるもののほか、まちづくり審議会の組織及び運営について必要な事項は、区規則で定める。
(※「渋谷区まちづくり審議会」の組織等については「渋谷区まちづくり条例施行規則」で別途、定めてあります)

 

「まちづくり協議会」の認定にあたって、区長の恣意的な判断が入り込む余地をなくし、公平性・公正性を担保する仕組みとして「まちづくり審議会」があることが分かります。

 

文京区においてこうした「審議会」が必要かどうかの判断は分かれるかと思いますが、少なくとも必要性を議論をした上で、必要ないというのであれば、その合理的な根拠と理由は区民に示すべきでしょう。

 

渋谷区の場合、区長の認定を受けると、「認定まちづくり協議会」という位置付けになります。

 

同区のHPには、「認定まちづくり協議会」について、次のように説明しています。

地域においてまちづくりに取り組む団体(当該地域の住民などで構成され、町会・商店会および各種地域団体が参加しており、当該地域を代表しているというコンセンサスを得られている団体)を、「まちづくり協議会」として区が認定しています」--。

 

さて、その認定要件ですが、渋谷区の場合、10項目あります。

  一 まちづくり協議会(以下「協議会」という。)の目的が、条例第二条の基本理念に基づいていること。
  二 協議会の構成員が地区住民等であり、活動する地区全体から参加し、その人数(一世帯に複数の当該構成員がいる場合は、一世帯を一人とし、当該構成員が法人の場合は、一法人を一人として算定する。)が三十人以上で、かつ、その二分の一以上が地区内に居住していること。
  三 地区内の町会、商店会、企業及び各種団体等の代表者が参加する等、当該協議会が、その活動する地区を代表していると認められること。
  四 当該協議会が活動する地区が、他の協議会の活動する地区と重複していないこと。
  五 協議会の活動する地区に地理的な一体性があること。
  六 定期的に協議会の活動がなされていること。
  七 会則及び役員の定めがあること。
  八 会長及び役員が民主的な方法で選任されること。
  九 当該協議会が活動する地区のすべての地区住民等が、協議会への入退会を自由に行うことができること。
  十 特定のものに対して著しい利益又は不利益を与えるものでないこと。

 

文京区の場合と比べてみましょう。文京区の場合、認定要件は下記の6項目です。
 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証 されていること。
 (3) 当該団体が継続して 6月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、まちづくり活動の目的 を達するために必要な区域において、 まちづくり活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域 内の区民等の多数の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規等を定めていること。

 

次回は上記を踏まえ、文京区と渋谷区の認定要件の違いを検証していきたいと思います。(続く)
(2019年1月18日)

 

第69回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える48)

文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件(5)について、世田谷区との比較で考えてみたいと思います。

 

(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。

 

◆世田谷区は「世田谷区街づくり条例」を定めており、45~46条が助成や要件の規定になります。

 

世田谷区における「地区街づくり協議会」とは、「地区ごとの良好な街づくりのために、地区住民等が主体となって組織される団体」と定義してます。

 

活動目的は主に2つ。
 1.地区街づくり計画の原案の作成
 2.地区街づくり計画の実現に向けた自主的な街づくり活動
 ※上記のほか、地区計画の素案の申出や都市計画の決定等の提案をすることもできます。

 

文京区の「まちづくり協議会」の認定要件と比べた場合、世田谷区の特徴は要件は3つしかありませんが、この中に文京区における(5)が含まれています。

 

世田谷区における助成を受けるにあたっての地区街づくり協議会の要件(次の3つを満たすこと) 
 1.地区住民等の自発的参加の機会が保障されていること
 2.構成員が地区住民等(街づくりに関して知識経験を有する者を含む。)であること
 3.活動が地区住民等の多数の支持を得ていると認められること

 

では、世田谷区の場合、どのような助成が受けられるでしょうか。

 

助成額は助成活動(地区街づくり計画原案作成/地区街づくり計画実現のための活動)に要する次の1?4の経費の合計額で、一年度最大40万円。また、通算5年度までの合計額は150万円、通算3年度までの合計額は120万円を限度とする。
  1.地区街づくり計画の原案の作成のための調査及び研究活動(上限30万円)
  2.勉強会、見学会等の学習活動(上限20万円)
  3.パンフレットの発行等の広報活動(上限25万円)
  4.協議会の事務運営及び連絡調整(上限5万円)

 

ここで、要件と助成内容の関係を、文京区と世田谷区で比べてみたいと思います。

 

文京区が「まちづくり推進要綱」で規定した「まちづくり協議会」の助成額は3年間で15万円、一方、世田谷区は「条例」で規定した「地区まちづくり協議会」の助成額が通算5年度までの合計額で150万円(通算3年度までの合計額で120万円)。

 

しかし、要件としては同じ、「多数の支持を受けている(あるいは得ている)」という項目が入っているわけですから、文京区の方が助成額の割に要件は厳しいということが言えるのではないかと思います。(続く)
(2019年1月17日)

 

第68回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える47)

文京区の「まちづくり推進要綱」と大田区の「地域力を生かした大田区まちづくり条例」を、まちづくり団体の認定要件という面で比較してみます。

 

特に「文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件(5)について、その相当性について大田区のケースと比べながら引き続き考えます。

 

(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。

 

◆大田区の「地区まちづくり協議会設立支援事業」
 第11条 区長は、協議会の設立を目指す団体が次に掲げる要件の全てを満たすときは、当該団体からの申請に基づき、規則で定めるところにより登録専門家の派遣を行う。
 (1) まちづくり活動を行う対象地区(以下「活動対象地区」という。)が、大田区都市計画マスタープランに基づき、規則で定めるまちづくり拠点地域(以下「まちづくり拠点地域」という。)の全部又は一部を含む一体的な地域であること。
 (2) 活動対象地区が、他の協議会が活動するまちづくり拠点地域でないこと。ただし、区長が必要と認めるときは、この限りでない。
 (3) 地区のまちの将来像及びまちづくり活動の方針を策定し、継続してまちづくり活動を行うことを目的とする団体であること。
 (4) 特定の者の利害に係る活動又は特定の開発事業等に賛成し、若しくは反対する活動を行う又は行ったことがある団体でないこと。

 

大田区の「地区まちづくり協議会設立支援事業」においては、文京区の「まちづくり協議会」の認定要件にある、冒頭に挙げた(5)のようなものはありません。

 

◆大田区の「地区まちづくり協議会支援事業」
 第12条 区長は、協議会の認定を受けようとする団体が次に掲げる要件の全てを満たすときは、当該団体からの申請に基づき、審査会の審査を経て、協議会として認定する。
 (1) 前条各号に掲げる要件を全て満たすこと。
 (2) 活動対象地区内の全ての自治会等が、協議会の認定を受けようとする団体のまちづくり活動に参加している又はまちづくり活動を承認していること。
 (3) 活動対象地区内の自治会等、商店会、居住者、事業者又は土地所有者等で構成されていること。
 (4) 活動対象地区及び当該活動対象地区を含むまちづくり拠点地域内の全ての自治会等、商店会、居住者、事業者及び土地所有者等に自発的参加の機会を保障していること。
 (5) 策定した地区のまちの将来像及びまちづくり活動の方針がまちづくりの基本と整合していること。

 

「地区まちづく協議会」の認定要件は当然ながら、「設立支援」よりも厳しくなっていることが分かります。(2)にあるように、ある意味、文京区の「まちづくり協議会」の認定要件にある(5)より厳しいものとなっていることが見て取れます。

 

◆大田区の「地区計画素案策定支援事業」
 第14条 区長は、地区計画検討団体が次に掲げる要件の全てを満たすときは、当該地区計画検討団体からの申請に基づき、規則で定めるところにより登録専門家の派遣を行う。
 (1) 地区計画を検討する対象地区(以下「地区計画検討地区」という。)の全ての自治会等及び商店会が、地区計画の検討を行うことについて承認していること。
 (2) 地区計画検討地区の面積が原則として5,000平方メートル以上であること。
 (3) 検討を行う地区計画がまちづくりの基本と整合していること。
 (4) 特定の者の利害に係る活動又は特定の開発事業等に賛成し、若しくは反対する活動を行う又は行ったことがある団体でないこと。

 

「地区計画」を前提にしたものであり、さらに厳しい要件を備えていることが分かります。

 

大田区の場合、まちづくり組織・団体のそれぞれの活動段階における定義や位置付けをしっかりしているので、それぞれの支援要件についても徐々に厳しくなっていくいことに合理性を見い出すことができます。

 

しかし、文京区の場合は、そもそも「まちづくり協議会」の定義と位置付けが曖昧であり、それゆえに認定要件が相応しいものであるかどうか判断が付きにくくなっていると言えるでしょう。

 

特に、(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること、という要件が本当に妥当なものであるかどうか、合理的判断を付けづらいのではないでしょうか。

 

大田区のケースを見てくると、(5)よりももっと別の認定要件を入れるべきではないか、といった思いもしてきます。(続く)
(2018年1月15日)

 

第67回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える46)

文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件(5)について、他の区と比べながら引き続き考えます。

 

(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。

 

◆大田区は「地域力を生かした大田区まちづくり条例」を制定しています。認定要件の比較に入る前に、大田区の条例の特徴を確認しておきましょう。

 

特色はいくつもありますが、そのひとつは「定義」した項目の多さではないでしょうか。30項目にも及びます。(※文京区の「まちづくり推進要綱」における定義項目は「区民等」「団体」「まちづくりコンサルタント」の3つだけです)

 

例えば、条例の名称にも使っている「地域力」については以下のように定義しています。
 ・地域力=区民、事業者及び自治会、町会その他の団体が持っている力並びにこれらの者及び区が互いに連携し、協働することによって生まれる力により多様な地域の課題を解決し、魅力ある地域を創造していく力をいう。

このほか、重要なところでは、次のように説明しています。
 ・まちづくり活動=地域のまちづくりに関する課題の解決に向けて行う自主的な活動をいう。
 ・まちづくり専門家=都市計画、建築等まちづくり分野の専門的知識及び経験を有する者をいう。
 ・地区まちづくり協議会=地区のまちの将来像及びまちづくり活動の方針に基づいた活動を行う区長の認定を受けた団体をいう。

 

その上で大田区では、3つの支援事業を条例で定めています。
 (1) 地区まちづくり協議会設立支援事業・・・まちづくり活動を行う団体の地区まちづくり協議会(以下「協議会」という。)設立に向けた支援を行う事業
 (2) 地区まちづくり協議会支援事業・・・協議会のまちづくり活動の円滑な実施と活動内容の充実を図るため、協議会の運営及びまちづくり活動に対して支援を行う事業
 (3) 地区計画素案策定支援事業・・・地区計画により地区の特性を生かした街並みを形成するため、住民の発意による地区計画を検討する団体(以下「地区計画検討団体」という。)の地区計画の検討及び地区計画素案の策定に対して支援を行う事業

 

大田区の条例のもうひとつの特色は、「地区まちづくり支援事業の適正かつ円滑な実施及び公平性を確保するため、区長の付属機関として大田区まちづくり認定審査会(以下「審査会」という。)を設置する」(第9条)というものです。

 

「審査会」の構成は、「区民、学識経験者、区議会議員及び区職員のうちから、区長が委嘱し、又は任命する委員10人以内をもって構成する」としており、何を審査するのかは以下の4項目です。
 (1) まちづくり専門家の登録及びその取消しに関すること。
 (2) 協議会の認定及びその取消しに関すること。
 (3) 前条第2号及び第3号に規定する支援事業の助成及び報告に関すること。
 (4) 第15条第1項の地区まちづくりルールの登録及びその取消しに関すること。

 

前置きが長くなりましたが、次回、組織・団体の要件(大田区の場合は支援要件)を見ていくことにします。(続く)
(2019年1月11日)

 

第66回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える45)

文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件(5)について引き続き考えていきたいと思います。

 

(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。

 

目黒区の場合、登録制度として「地域街づくり研究会」があり、認定制度として「地域街づくり団体」があります。

 

「地域街づくり研究会」は「概ね5人以上で構成する街づくりに関する自主的な研究・活動を行う団体」であり、専門家派遣の講師謝礼(同一年度に5回まで 助成あり)と、団体等の運営に係る経費の助成(上限5万円まで)が受けられます。

 

しかし、登録要件として、文京区の「まちづくり協議会」の認定要件として定めてあるような  、「当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること」といった要件はありません。

 

一方、「地域街づくり団体」は「概ね10人以上で構成する『地域街づくり計画』『地域街づくりルール』の策定を含む街づくり活動を行う団体」であり、専門家派遣の講師謝礼(同一年度に5回まで)、団体等の運営に係る経費の助成(上限5万円まで)、地域街づくり計画の作成に係る経費の助成(上限20万円まで)、地域街づくりルールの作成に係る経費の助成(上限20万円まで)が受けられます。

 

そして「地域街づくり団体」の認定要件になってくると、「団体の認定には、活動内容が地域住民等に周知され、多数の賛同を得ていることが必要となります」というように厳しくなります。

 

文京区と目黒区を比べてみましょう。

 

文京区の「まちづくり協議会」は認定制度ではありますが、助成内容という意味では目黒区の「地域街づくり研究会」と似たような位置付けです。

 

ですが、認定要件となると、目黒区の方がやや厳しいとは言え、文京区の「まちづくり協議会」は、目黒区の「地域街づくり団体」に準じた要件が入ってきていることが分かります。

 

もちろん、これだけではどちらがより適切な制度であるか、どちらが全国的に見てより一般的な制度・仕組みであるかは判断が付かないことも確かです。

 

次回以降、さらに全国の他の自治体のケースを見ていきたいと思います。(続く)
(2019年1月10日)

 

第65回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える44)

文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件は6項目あるわけですが、今日は5番目の要件に焦点を絞って考えたいと思います。

 

(5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。

 

第1に、「主たる活動」とは具体的に何を指すのかがこれだけではよく分かりません。

 

第2に、「多数の支持」が具体的にどの程度なのか、これを読んだだけでは把握しづらくなっています。(過半数でいいのか、6割なのか、7割なのか、8割なのか…)

 

第3に、「当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること」を、何を以て証明すればいいのかよく分かりません。「区域内の区民等」から「支持しています」との同意書(あるいは賛同書)を提出しなければならないのでしょうか。

 

こうした疑問が生じるひとつの理由として、「要綱」と言えども「逐条解説」や「手引書」のようなものがないことが挙げられるでしょう。

 

もうひとつの大きなポイントは、3年間にわたり年間5万円の助成(3年間で15万円)を受ける団体の認定要件として適切であるかどうかです。

 

15万円と言えども区民の血税であり、認定要件はいくら厳しくても厳しすぎることはない、といった意見もあるかもしれません。

 

ただ、一方でバランスというものもあるのではないでしょうか。

 

区の他の助成金制度の認定要件とのバランス、さらには全国の他の自治体の「まちづくり協議会」に対する支援制度の中でのバランス--。

 

結論から言えば、「文京区まちづくり推進要綱」を見直すのであれば、文京区における「まちづくり協議会」の定義や位置付けを明確にした上で。(5)がその要件として相応しいかどうかも再検討すべきだと考えています。(続く)
(2019年1月9日)

 

第64回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える43)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件は以下の6項目です。

 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証されていること。
 (3) 当該団体が継続して6 月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、まちづくり活動の目的を達するために必要な区域において、まちづくり活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規則等を定めていること。

 

昨日の続きで言うと、この認定要件が、3年間にわたり(延長も可能にはなっていますが…)、合計15万円の助成金を受けるに相応しいかどうかがポイントであると言えます。

 

平たく言えば、3年間にわたり区民の血税15万円を助成するにあたり、相応しい組織・団体でなければならないということになるでしょう。

 

(1)は構成員の規定であり、区民の血税15万円を助成するにあたって、その組織・団体が「区民等によって構成されていること」という要件は理解できます。

 

(2)は参加機会の平等性の規定であり、同じように区民の血税を助成する以上、必要な規定でしょう。

 

(3)は実績の有無に関する規定であり、区民の血税15万円を助成するわけですから、それなりの実績を積んでいる必要があるという考えは理解できます。(※6カ月以上という期間についてはまた別の議論があるかとは思います)

 

(4)は目的に関する規定であり、必要不可欠と言えますが、現状の規定内容でいいかどうかということになると議論の余地があるかと思います。

 

というのも、文京区においては「まちづくり」の定義がなく、従って「まちづくり活動」なるものも、区民個々人の主観に委ねられる曖昧な概念だからです。

 

(6)は当該団体のガバナンス(組織統治)の最低限を満たしているかを問う規定であり、こんなに簡素でいいかどうかは措くとして改めて議論の余地はないでしょう。

 

問題は(5)です。

 

これが文京区の「要綱」で定めた、区民の血税15万円を助成する組織・団体の認定要件として相応しい(=厳しすぎもせず、緩すぎるものでもない)ものであるかどうか、次回、改めて考えたいと思います。(続く)
(2019年1月8日)

 

第63回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える42)

昨年に続き、「文京区まちづくり推進要綱」第5条の「まちづくり協議会」の認定要件について考えます。

 

もしかすると、区民からだけでなく、区職員や区議の方々からも「認定要件の規定にこだわりすぎているのではないか」といった指摘を受けるかもしれません。

 

しかし、こう考えてみてはどうでしょうか。

 

極端な例かもしれませんが、例えば仮に「まちづくり協議会」への助成金が毎年1億円で、3年間で3億円だったらどうでしょうか。

 

3年間で3億円を助成するに相応しい活動をするのかどうかとともに、そもそもその主体である「まちづくり協議会」なるものが信用と信頼に値する組織・団体であるかどうか、厳しい認定要件を課すのではないでしょうか。

 

助成金の額が年間1000万円ならどうでしょう? あるいは同100万円ならどうでしょう?

 

そう考えてくると、認定要件をどうするか(どのように規定し、どのように盛り込むか)は重要なポイントと言えることが分かるのではないでしょうか。

 

ここで先に全国の他の自治体の事例を紹介すれば、地域のまちづくり活動の主体として以下のような組織・団体があり、自治体はそれぞれに応じた支援策を講じています。

 ◎まちづくり研究会
 ◎まちづくり協議会準備会
 ◎まちづくり協議会

 

認定制度であれば「認定要件」となりますが、登録制度であれば「登録要件」ということになります。

 

文京区には「まちづくり推進要綱」において「まちづくり協議会」なるものの認定制度があります。

 

しかし、しっかりとした定義付けがないだけに、実態的には全国の他の自治体で言うところの「まちづくり研究会」のようなものかもしれませんし、「まちづくり協議会準備会」のようなものであるのかもしれません。

 

いずれにしても、「まちづくり研究会」であるのか、「まちづくり協議会準備会」であるのか、あるいは「まちづくり協議会」であるのか--。

 

さらに登録制度か認定制度かによって、それぞれの要件は変わってきます。

 

私たち文京区の住環境を守る会(千石4丁目)/文京区千石4丁目南地区まちづくり協議会が「請願」等において、初期段階からきめ細かく支援する仕組み・制度の充実を求めているのは、こうした登録・認定要件についてもそれぞれの段階に相応しいものにすべきであるとの要望を込めているからに他なりません。(続く)
(2019年1月7日)

 

第62回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える41)

文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について、引き続き考えます。

 

昨日とは別の切り口から、認定要件が相応しいか(=厳しすぎるか、緩すぎるか)を検証してみたいと思います。

 

例えば、文京区に「まちづくり基本条例」があったとして、そこに「まちづくり協議会」が出てきて、助成金も「まちづくり協議会助成金交付条例」に基づいて出すようになっていたらどうでしょうか。

 

あるいは、仮に文京区に「文京区まちづくり協議会設置条例」があり、さらに「まちづくり協議会助成金交付条例」もあったとしたらどうでしょうか。

 

逆に、「条例」でも「要綱」でもなく、単なる「規程」であったらどうでしょうか。(※文京区の場合は「要綱」です)

 

何が言いたいのかというと、法的拘束力等の面から「条例>要綱>規程」となっていることに鑑みれば、「まちづくり協議会」の認定要件も「条例」で規定されているのなら厳しく、単なる「規程」であれば緩く(「条例」での規定に比べれば…)となるはずです。(※あくまで一般論としてです)

 

つまり、文京区の「まちづくり協議会」の認定要件は、「要綱」で定めている「まちづくり協議会」の認定要件として相応しいのかどうかということになります。

 

もし、全国の他の自治体が「条例」において定めている「まちづくり協議会」の認定要件と同じようなものが、文京区の「要綱」で定めている「まちづくり協議会」の認定要件においてもそのまま盛り込まれているようなら、「厳しすぎる」と言ってもいいのではないでしょうか。

 

もちろん、文京区固有の特別な事情があれば、全国の他の自治体より厳しくてもいいですし、緩くてもいいわけですが、そうするためには特別な事情であることを合理的な根拠をもって説明する責任が出てきます。

 

もしかすると、こうした理詰めの議論に難色を示す向きもあるかもしれませんが、そうしていかないと行政の公平性、公正性、平等性を担保することはできず、「まちづくり協議会」の認定において行政の判断権者の恣意的な判断や裁量権の逸脱につながりかねないのです。(続く)
(2018年12月21日)

 

第61回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える40)

今日から「文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」の認定要件について考えたいと思います。

 

何を考えるかというと、文京区における「まちづくり協議会」の認定要件が相応しいものであるかどうかという点です。

 

「相応しい」という一般的な言葉を使いましたが、正当な根拠と理由に基づいて「適切である」「合理的である」と言い換えてもいいでしょう。

 

要は、認定するにあたって要件が合理的理由がないにもかかわらず厳し過ぎてはいけないし、逆に緩すぎてもいけないということです。

 

ただ、ここで改めて問題になるのが、文京区において「まちづくり協議会」とは何かという定義や位置付けがなされていないことです。

 

「まちづくり協議会」が文京区のまちづくり行政上、極めて重要なものであり、極めて高い公共性や公正性、公平性を担保しなければならないのであれば、認定要件もまた極めて厳しいものであって当然です。

 

一方、そうでないなら、そうでない根拠と理由において、要件もまた緩やかであっても問題ないと言えるでしょう。

 

つまり、「まちづくり協議会」が文京区の行政上、極めて高い重要性を持たないにもかかわらず、認定要件が極めて厳しいものであったなら、それはそれで問題ということになります。

 

ここで私たち区民が判断する根拠とするのは、「文京区まちづくり推進要綱」であり、「文京区まちづくり協議会助成金交付要綱」です。

では、「まちづくり協議会」が区長から認定を受けるとどうなるのでしょうか。

 

「文京区まちづくり協議会助成金交付要綱」によると、次のようになっています。

第5条 助成金の額は5万円を上限として、当該年度の予算範囲内で、区長が定める。
 2 助成金の交付を受けることができる期間は、初めて助成金を受けた年度から3年を限度とする。ただし、区長が特に必要と認めたときは延長することができる。

 

「まちづくり協議会」の認定を受けると、他にも区から何か受けられるのかもしれませんが、少なくとも公開情報をもとに区民が知ることができるのは助成金を受けられるということに限られています。

 

つまり、「まちづくり協議会」の認定要件は、3年間にわたり(延長も可能にはなっていますが…)、合計15万円の助成金を受けるために課せられた要件ということができるかと思います。(続く)
(2018年12月20日)

 

第60回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える39)

「まちづくり協議会」とは何か?を考えるにあたり、「町会」や「自治会」との関係も踏まえておかねばならないでしょう。

 

大きく分けると、「まちづくり協議会」の中に「町会」や「自治会」を構成員として含ませるケースと、そうでないケースがあるようです。

 

◆例えば、茨城県守谷市の「まちづくり協議会」の場合、「自治会」や「町内会」は「まちづくり協議会」の一員となり、同市では次のように説明しています。(※メージ図は下記参照)

 

「自治会・町内会は限定された地域での活動を担いますが、『まちづくり協議会』は複数の自治会・町内会を含む一定のまとまりのある地域において、地域ネットワークを生かし、『地域づくり』や『地域の課題解決』について広がりを持って活動します」

 

「地域の現状を把握し活動している自治会・町内会が『まちづくり協議会』の一員となり連携することは、『まちづくり協議会』を設立・運営する上で非常に重要であると考えています」--。

 

千葉県佐倉市の「地域まちづくり協議会」も茨城県守谷市と似たような位置付けと言えるのではないでしょうか。

 

「地域まちづくり協議会」は、各小学校区を基準として区域内で活動する自治会・町内会を基盤に、地域で活動する団体・組織が、それぞれの目的や活動を尊重し合い、緩やかに連携・協力することで、地域が対応できる課題などは協働して、その解決を図っていただこうとする組織です」と説明しています。

 

千葉県香取市は「住民自治協議会(まちづくり協議会)」という名称からも分かるように、「町会」や「自治会」は「まちづくり協議会」の構成員の位置付けです。

 

「住民自治協議会(まちづくり協議会)とは、小学校区単位程度の範囲で、住民の皆さんや自治会、地区社協、民生委員、PTA、子ども会、高齢者クラブなど地域で活動するさまざまな主体が集まって構成され、それぞれが互いに連携、協力して活動する組織です」

 

「地域福祉の推進」「地域防災の推進」「地域環境の保全」「地域教育の推進」「郷土文化の振興」「地域産業の振興」と、これらの活動の担い手の育成及び支援を行いながら、地域を大切に考え、多様な立場から意見を出し合い、より良い地域を目指して協議や活動を行う、地域のまちづくりの主役です」--

 

◆こうした「まちづくり協議会」の説明の”集大成”とも言えるものが千葉県山武市がつくった「地域まちづくり協議会設立に向けたガイドラン~市民協働の羅針盤~」でしょう。

 

「地域の身近な課題解決に向けて、地域が一体となって取り組む組織であり、概ね小学校単位で設立し、その目的を「様々な地域課題や地域のニーズに的確に対応していくため、地域におけるコミュティの充実を図り、地域が主体となって地域の身近な課題を解決できるしくみを築いていくこと」としています。

 

◆一方、岐阜県可児市はいわゆる「町会」や「自治会」とは区別し、異なる役割を「まちづくり協議会」に担わせています。

 

「地域のまちづくりの担い手として、自治会やまちづくり協議会などを『地域コミュニティ団体』として定義するとともに、地域でのまちづくりの連携を図っていただくために、市がまちづくり協議会、まちづくり計画を認定するときに、地域での自治会等と協議会との連携、役割分担がされていることを確認します」

 

「まちづくり協議会が策定するまちづくり計画では、区域、目標、運用する組織とその運営方針が定められており、複数の事業計画をつくることができるのに対して、協働のまちづくり事業はまちづくり協議会を含めた市民公益活動団体が、特定の テーマに ついて事業を実施するものであるため、まちづくり計画とは異なり、事業の回数、期間、助成金額などに制限を設けました」--。

 

さて、文京区ですが、「文京区まちづくり推進要綱」第5条に出てくる「まちづくり協議会」は、行政主導の色彩は濃いですが、後者(まちづくり協議会の中に「町会」や「自治会」を構成員として含ませないケース)の位置付けに近いものです。

 

ちなみに、文京区には「文の京」安全・安心まちづくり協議会というものがありますが、このHPでテーマにしている「まちづくり協議会」とは全く異なるものです。

 

それは次の説明を改めて確認すれば明らかでしょう。

 

安全・安心まちづくりに係る施策の実施に関し、広く地域活動団体や区民、専門家、関係行政機関に意見を伺い、施策に反映させていくほか、公平性及び中立性を担保する観点から設置したものです。

 【審議事項】
  1.安全・安心まちづくりに係る施策の実施に関すること。
  2.推進地区の指定に関すること。
  3.その他、安全・安心まちづくりに関すること。

 

こうして見てくれば、「『文の京』安全・安心まちづくり協議会」との違いを明確にする上でも、「まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」について、区としてしっかりと定義しておく必要のあることが分かると思います。(続く)
(2018年12月19月)


第59回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える38)

回はいわゆる「まちづくり協議会」とはどういうものか、その定義と位置付けを探るべく、全国の他の自治体のケースを見てみました。

 

実は自治体によっては、「まちづくり協議会」をその組織状況や活動歴などによって、2つに分けているところもあります。

 

◆例えば、練馬区の場合、「地区まちづくり準備会」と「地区まちづくり協議会」の2本建てです。

「地区まちづくり協議会」は認定制度であり、「協議会」としての認定を目指して活動する組織・団体を「地区まちづくり準備会」(登録制度)として位置付け、支援しています。

 

◆目黒区も2本建てとなっています。同区のHPでは次のように説明しています。(※支援内容は一番下の図を参照)

「最初の一歩として、身近な話し合いの場になるのが、「地域街づくり研究会」です。概ね5人以上のメンバーで構成します。研究会への専門家の派遣や、活動費の助成を行い、区が活動を支援します」--。

 

「街づくりの課題を解決するには、様々な人たちの協力が必要不可欠です。地域全体で課題を共有し、解決に向けた話し合いが必要となります。街歩きや点検マップづくり、広報誌の発行など、地域に街づくりの輪を広げていく活動の場が、『地域街づくり団体』です」--。

 

武蔵野市も「地区まちづくり準備会」(登録制度)と「地区まちづくり協議会」(認定制度)の2本建てです。

「地区まちづくり準備会」は、地区まちづくり協議会の設立を目的として活動し、市の登録を受けている団体。 一方、「地区まちづくり協議会」は、自分たちの身近な地区のまちづくりについて提案を行うために、市から認定を受けた団体であり、地区まちづくり協議会に認定された団体は、都市計画、地区計画、地区まちづくり計画の提案を行うことができる。 

 

小平市も同様に、「地区まちづくり準備会」(登録制度)と「地区まちづくり協議会」(認定制度)の2本建てです。(※イメージ図は下記参照)

「地区まちづくり」は、地区住民等による身近な地区における土地利用等に関する計画及び基準(以下「地区まちづくり計画」という。)の策定並びに地区まちづくり計画の実現並びに第26条に規定する法定制度の活用に向けた活動をいう。

 

「地区まちづくり準備会」(第6条) 地区住民等は、次条第4項に規定する地区まちづくり協議会の設立を準備するための団体を組織し、市長に対し、規則で定めるところにより登録を申請することができる。

 

「地区まちづくり協議会」(第7条) 地区住民等は、地区まちづくりの推進を目的とする団体を組織し、市長に対し、規則で定めるところにより認定を申請することができる。

 

文京区の場合は「まちづくり協議会」しかありませんが、住民の発意に基づく初期段階からのまちづくりを支援していくということになれば、やはり複数本建てとする方が自然であり、合理的でしょう。

 

「まちづくり研究会」→「まちづくり準備会」→「まちづくり協議会」とする3本建てなら、よりきめ細かな支援体制を築けるとも言えます。

 

「文京区まちづくり推進要綱」の見直しに当たっては、「協働・協治」の理念からも区民の幅広い意見を聞きながら、文京区に相応しいあり方をしっかり議論・検討していく必要があると言えるでしょう。(続く)
(2018年12月18日)

目黒区の「地域街づくり研究会」や「街づくり団体」等に対する支援内容



第58回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える37)

そもそも、「まちづくり協議会」とはどういうもので、全国の他の自治体はどのように定義したり、位置付けたりしているでしょうか? 

 

いくつか自治体の例を挙げてみたいと思います。(※自治体によって名称が微妙に違う場合もあります。行政主導の「まちづくり協議会」も含みます)

 

大田区(認定制度)・・・「地区まちづくり協議会」は地区のまちの将来像及びまちづくり活動の方針に基づいた活動を行う区長の認定を受けた団体をいう。

 

世田谷区(認定制度)・・・「地区街づくり協議会」は地区街づくり計画の原案の作成(第12条)及び地区街づくり計画の実現に向けた自主的な街づくり活動を行うことを目的とした地区住民等による団体。

 

渋谷区(認定制度)・・・「まちづくり協議会」は地域においてまちづくりに取り組む団体(当該地域の住民などで構成され、町会・商店会および各種地域団体が参加しており、当該地域を代表しているというコンセンサスを得られている団体)を、「まちづくり協議会」として区が認定しています。

 

港区(登録制度)・・・「まちづくり組織」は区内でまちづくりの活動を行うことを目的とする団体で、区長の登録を受けることができる。

 

平塚市(認定制度)・・・「地区まちづくり協議会」は平塚市まちづくり条例に基づいた、地区住民で構成される地区まちづくりを行う団体で、市に認定されると、地区計画の原案の申出や、地区まちづくり計画の認定申請をすることができる。

 

千葉県木更津市・・・「まちづくり」は良好な地域社会の形成を目指すことをいい、「まちづくり協議会」は地域におけるまちづくりの活動を目的とし、当該地域における市民等により設立される団体をいう。

 

千葉県我孫子市・・・「まちづくり協議会」とは、「コミュニティづくり」の母体となる組織。地域で活動する団体や個々の住民から構成される自主的な組織で、住民の相互の連絡・交流および地域のさまざまな問題の解決を図る。

 

岐阜県美濃加茂市・・・「まちづくり協議会」は、「住み続けたい、住んでよかったというまちにしていこう」「地域で解決できることは地域で解決していこう」と、それぞれが地域の特性を活かし、自分たちでできることは自分たちで決め、まちづくり活動をする。

 

神戸市(認定制度)・・・「まちづくり協議会」はまちづくり提案の策定、まちづくり協定の締結等により、専ら地区の住み良いまちづくりを推進することを目的として住民等が設置した協議会で、市長は次の各号に該当するものをまちづくり協議会として認定することができる。

 

愛知県岡崎市(認定制度)・・・「まちづくり協議会」は地域単位のまちづくりへの取り組みを応援するため、地域住民を主体に設立され、 一定の地域の住民の発意により、その地域のまちづくりの目的等を、地域の5割以上の住民等の同意により協議会を設立し、市が認定する組織。

 

滋賀県東近江市(認定制度)・・「・まちづくり協議会」とは、地区の課題解決と個性を生かしたまちづくりに取り組むため、多様な主体が参加して自主的に設置する地域自治組織をいう。

 

宮崎県都城市・・・「まちづくり協議会(まち協)」は、住民が主体となって、自分たちが住むまちを住みよいまちにするために、自分たちで何ができるかを考え、積極的に活動する。

 

福井県坂井市・・・「まちづくり協議会」は、地域を基礎に市民誰もが参画できる組織であり、それぞれの実情と創意工夫により自主的に活動する団体。設立や活動については、市民と行政の協働を進め地域の活性化、まちづくりに取り組むこととし、その方法や内容、範囲などは地域住民の話し合いにより計画・実施していく。

 

鳥取市・・・「まちづくり協議会」は、地域の身近な課題解決に向けて、地域が一体となって取り組む組織です。地域をよりよいものにしていくため、自分たちのまわりでどのような課題があるかを地域住民の視点で検討し、地域が一体となって課題解決に向けて取り組む組織。

 

これらは全国の自治体のごく一部の例に過ぎませんが、各自治体が「まちづくり協議会」についてしっかり考え、明確な定義や位置付けを決めていることが分かります。

 

文京区においても、区民の発意に基づくまちづくりを積極的に推進していくのであれば、全国の他の自治体のケースを参考に、文京区としての「まちづくり協議会」の定義や位置付けをしっかり決めるべきでしょう。(続く)
(2018年12月17日)

 

第57回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える36)

文京区まちづくり推進要綱」の第5条に出てくる「まちづくり協議会」について、引き続き考えます。

 

前回は、文京区の「まちづくり協議会」がいわゆる”行政主導”タイプというよりも、区民自治に基づく部類に近いところまで確認しました。(※とは言え、文京区の場合、「まちづくり推進要綱」自体は行政主導の色合いが濃いものと言えます)

 

さらに先に進む前に、そもそも一般論としての「まちづくり協議会」とはどのようなものなのかを見ていきたいと思います。(※なぜなら、文京区においては「まちづくり」についても、「まちづくり協議会」についても明確な定義付けがされていないからです)

 

Wikipediaに出ているかと思いましたが、残念ながらありませんでした。(※「まちづくり」という項目はありましたが…)

 

総務省の「地域自治区制度」の説明の中で、「地域自治区制度によらない協議会等の設置事例」の「条例による事例」として、神戸市の「まちづくり協議会」が挙げられており、以下のような説明があります。(下記画像参照)

 

 「神戸市まちづくり条例により、まちづくり協議会制度を創設。住み良いまちづくりを推進することを目的として住民等が設置した協議会を、まちづくり協議会として認定する制度」--。

  ・まちづくり協議会は、地区のまちづくりの構想に係る提案を「まちづくり提案」として策定することができる。
  ・市長は、施策の策定及び実施にあたっては、「まちづくり提案」に配慮するよう努める。

 

一方、地方創生担当大臣の下に開催する「地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議」にも、「地域の課題解決のための地域運営組織」のひとつとして「まちづくり協議会」が出てきます。(※ここで出てくる「まちづくり協議会」は行政主導によるものです)

 

ちなみに「地域運営組織」とは「地域の生活や暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に基づき、地域課題の解決に向けた取り組みを持続的に実践する組織」をいいます。

 

こうして考えてくると、いわゆる「まちづくり協議会」は、地域運営組織のひとつであり、地域自治区制度によらない協議会等として位置づけられるのではないかと思います。

 

そして、文京区の場合は「地域自治区制度によらない協議会等の設置事例」のひとつであるとともに、「要綱による事例」といえるでしょう。(続く)
(2018年12月14日)


第56回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える35)

文京区まちづくり推進要綱」の第5条「まちづくり協議会」について考えるにあたり、全国の他の自治体のケースと比べてみたいと思います。

 

ここでまず、「まちづくり協議会」というものが大きく分けると2種類あることを押さえておきたいと思います。(※このシリーズでは文京区にある「安全・安心まちづくり」のようなものは対象から外しています)

その1つは、行政主導による(あるいは行政主導色の強い)「まちづくり協議会」であり、もう1つは市民自治(=区民自治)に基づく「まちづくり協議会」です。

 

全国各地に「まちづくり協議会」という名称の組織・団体は多数あり、その定義も多種多様ですが、大きく分けると上記の2つある点を理解しておきましょう。

 

◆中央区の「まちづくり協議会」も前者に入るかと思います。

 

中央区のHPには次のように書いてあります。

 

「まちづくり協議会は、区内における地域特性を生かしたまちづくりの整備構想や整備計画などについて、区と当該地域の住民と意見交換を重ねながら、災害に強い良好なまちづくりを推進していくことを目的としており、区内全域を13地区に区分しています。このまちづくり協議会の活動を通じて、地域のまちづくりの意見・意向などを整理し、本区のまちづくり施策に反映させることに努めています」--。

 

では、文京区の場合はどちらに入るでしょうか。

 

文京区基本構想」「文京区基本構想実施計画」「文京区都市マスタープラン」を見ても、中央区のように区内全域を区域割りするような「まちづくり協議会」は確認できません。

 

文京区まちづくり推進要綱」第5条に書いてある「まちづくり協議会」を巡る規定を読んでも、文京区の場合は後者(=区民自治に基づく「まちづくり協議会」)に入ることが分かるかと思います。(続く)
(2018年12月13日)

 

第55回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える34)

文京区まちづくり推進要綱」において、「まちづくり協議会」の認定要件は下記のようになっています。

 

 (1) 区民等によって構成されていること。
 (2) 区民等に参加の機会が保証されていること。
 (3) 当該団体が継続して6 月以上まちづくり活動を行っていること。
 (4) 当該団体が、まちづくり活動の目的を達するために必要な区域において、まちづくり活動を行うものであること。
 (5) 当該団体の主たる活動が、活動を行う区域内の区民等の多数の支持を受けていること。
 (6) 当該団体が会則、規則等を定めていること。

 

ぞして、これら全ての要件を満たすと、区長から「まちづくり協議会」として認定を受けることができ、そうなると「文京区まちづくり協議会助成金交付要綱」に基づいて年5万円の助成金(3年を限度)を受け取ることができます。

 

3年間で15万円が多いか少ないかは主観によって異なるでしょうが、区民の税金から支払われることに変わりはありません。

 

従って、助成金を受ける「まちづくり協議会」がいい加減な団体・組織であってはならないわけで、それなりの「認定要件」が必要であることは当然でしょう。

 

しかし、「認定要件」が緩すぎでも問題ですが、厳しすぎるのも問題ではないでしょうか。

 

「認定要件」が①年間5万円を3年間受けるに相応しい団体・組織であるかどうかのものなのか、それとも②「まちづくり協議会」そのものとして相応しいかどうかのものなのか、区別する必要がありますが、「まちづくり協議会」の定義付けがされていないことから、とりあえずは前者と理解するしかありません。

 

そうなると、次の2つの側面から検証する必要性が出てきます。

 

1つは、文京区内の他の助成制度とのバランス(助成額に相応しい要件であるかどうか)、もう1つは全国の他の自治体との比較における兼ね合いです。(※必ずしもバランスや兼ね合いがしっかり取れていなければならないというものではありませんが、合理的な根拠もなくかけ離れているのも問題でしょう)

 

このシリーズではとりあえず、全国の他の自治体の「まちづくり協議会」の定義付けや「認定要件」と比べながら考察していきたいと思っています。(続く)
(2018年12月12日)

 

第54回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える33)

文京区において、何のために(=何を目的として)、「まちづくり協議会」なもるものが「文京区まちづくり推進要綱」に出てくるのでしょうか。

 

認定要件についての議論は後回しにして、第5条の2と3を読むと分かってきます。

第5条

 2 区長は、まちづくり協議会の認定をしたときは、予算の範囲内において、当該団体に対して助成金を交付することができる。
 3 前項に規定するもののほか、まちづくり協議会に係る助成金に関しては、文京区まちづくり協議会助成金交付要綱に定めるところによる。

 

つまり、助成金を交付する受け皿団体として「まちづくり協議会」のあることが見て取れます。

 

逆に言うと、必ずしも「まちづくり協議会」という名称である必要はなく、助成金交付の受け皿としてであるなら「まちづくり推進団体」でも「認定まちづくり団体」でも構わないと言えるでしょう。

 

それに、文京区の条例や要綱等の体系において、「まちづくり協議会」の定義付けや位置付けが明確にされていないため、他の条例や要綱と整合性を取る必要も基本的にないからです。

 

しかし、そのことは別の面で問題を生みかねません。

 

ひとつは、文京区において「まちづくり協議会」という名称だけが独り歩きして、何の目的のために設けているのか区民に理解しづらくなっていること。

 

もうひとつは、区民・区議・区職員が思い描く「まちづくり協議会」なるものに認識のズレが生じ、「協働・協治」の精神を以てしても話し合いがうまく噛み合わなくなるおそれがあること。

 

さらに全国の他の自治体において、吟味された上で使われている「まちづくり協議会」と混同するおそれがあること。

 

その他にもまだいろいろとあるかもしれません。

 

文京区が30年前にこの「推進要綱」をつくった時の「まちづくり協議会」なるものと、全国の各自治体が「まちづくり基本条例」をつくり、「まちづくり協議会」の概念と機能をレベルアップ(あるいはブラッシュアップ)していく中で、文京区の「まちづくり協議会」だけ、取り残されてしまったのではないでしょうか。

 

実は、このことは「まちづくり協議会」の認定要件とも密接に絡む重要な問題です。

 

次回は「まちづくり協議会」の目的や定義付けと、「認定要件」の関係についてまで踏み込んで考えたいと思います(続く)
(2018年12月11日)

 

第53回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える32)

文京区における「まちづくり協議会」について、引き続き考えていきます。

 

「まちづくり条例」や「まちづくり協議会」に話が及ぶと、必ず「文京区にもありますよ」という人がいます。

 

確かに、「文京区安全・安心まちづくり条例」があり、「『文の京』安全・安心まちづくり協議会」があります。

しかし、これらは、私たちがこのHPでテーマーにしている「まちづくり条例」や「まちづくり協議会」とは違うものです。(※広義の意味では含まれるかもしれませんが、そうだとしても「文京区安全・安心まちづくり条例」において「まちづくり」とは何なのかについて定義付けされていません)

 

ここで改めて確認しておきますが、文京区には「文の京」自治基本条例はありますが、「まちづくり基本条例」はなく、「まちづくり」の定義もしていなければ、「まちづくり協議会」の定義もしていません。

 

その意味では、区議会(委員会)の答弁等で、「本区の条例、要綱は、それぞれ目的に沿って個別に制定しているということでございます」といった発言もあるようですが、厳密な意味で正確とは言えないと思っています。

※事実、文京区には、全国の他の自治体にあるような、区民(市民)の自発的な発意に基づくまちづくりを初期段階から手厚く支援する仕組みも制度もないからです。

少なくとも、「文京区まちづくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」は、「『文の京』安全・安心まちづくり協議会」とは全く別物です。

逆に言えば、その違いをはっきり区民に理解してもらうためにも、まずは文京区における「まちづくり」とは何なのか、「まちづjくり推進要綱」に出てくる「まちづくり協議会」とはどういった位置付けのものなのかを明確にしておく必要があるでしょう。(続く)
(2018年12月10日)

 

第52回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える31)

文京区まちづくり推進要綱」の第5条に出てくる「まちづくり協議会」について考えていきたいと思います。

 

第5条には次のように書いてあります。

 

「区長は、第3 条に規定するまちづくり推進対象区域において面的な整備又は保全のためのまちづくり活動を行う団体が、次の各号に掲げる要件を満たすときは、まちづくり協議会として認定することができる」--。

 

※ちなみに第3条で規定するまちづくり推進対象区域とは次の各号いずれかに該当するものをいう。
 (1) 文京区都市マスタープランにおいて、地域拠点又は生活位置付けられ た区域
 (2) 良好な住環境の保全、魅力ある景観づくり、地域への貢献に資する一体的な整備等を図る必要があると認められ た区域
 (3) 別表に掲げるまちづくり事業 を推進する必要があると認められた区域(別表は略します)

 

推進要綱」の第5条を読んで分かることは、第1に「第3条に規定するまちづくり推進対象区域において面的な整備又は保全のためのまちづくり活動を行う団体」であるということ(←文京区内にいくつそうした団体があるのか、その数と実態を文京区が把握しているのかどうかは不明です)

 

第2に、上記団体のうち、この「推進要綱」で定めた「要件」を満たすと、文京区長は「まちづくり協議会として認定することができる」というものです。

 

しかし、このシリーズの冒頭でも指摘しましたが、文京区においては、文京区における「まちづくり」とは何なのか? 何を指すのか? どう定義付けしているのか?が定かではありません。

 

従って、「まちづくり協議会」と言われても、「まちづくり」の定義が曖昧なだけに、組織としての「まちづくり協議会」なるものもやはり曖昧と言わざるを得ません。。

 

「文の京」自治基本条例を読み返してみましたが、「まちづくり協議会」という言葉は出てきません。

 

「文京区基本構想」にも出てきません。

 

「文京区基本構想実施計画」(平成29~31年度)には「地区まちづくりの推進」の事業名のところで下記のように1カ所だけ出てきますが、「まちづくり協議会」の定義は書いてありません。

「良好な市街地環境の早期形成を図るため、地域において住民主体のまちづくり協議会を組織し、手法等を検討しながら、まちづくりを推進します」--。

 

「文京区都市マスタープラン」も改めて紐解いてみましたが、92ページに掲載されているイメージ図の中に1カ所出てくるだけでした。

 

「文京区まちづくり推進要綱」の第5条に出てくる「まちづくり協議会」ですが、文京区のHPで公表されることになったのは今年11月21日でした。

 

文京区において「まちづくり協議会」とは何なのか? 何のためにあるのか? 文京区としては区民がしっかりイメージできるように説明する責任があるでしょう。(続く)
(2018年12月7日)

 

第51回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える30)

文京区まちづくり推進要綱」では、その「対象区域」が定めてあるわけですが、全国の他の自治体ではどうなっているでしょうか。

 

ただ、調べてみてもまちづくり基本条例」や「まちづくり推進要綱」において、あらかじめ対象区域を定めているケースはなかなか見つからないというのが実情です。

 

例えば、名古屋市のケースを見てみましょう。

 

名古屋市には「名古屋市地域まちづくり推進要綱」がありますが、その中では特に「対象区域」を定めていません。

 

その一方で、名古屋市では上記とは別に、「名古屋市重点地域まちづくり推進実施要綱」があり、その第1条で「本市が、名古屋市都市計画マスタープランにおいて重点地域と定める地域(金山地域に限る。以下「重点地域」という。)での地域まちづくりの推進のため実施する施策について必要な事項を定めるものとする」と定めています。

 

こうして文京区と名古屋市の「推進要綱」を、「対象区域」という側面から比べてみると明らかでしょう。

 

名古屋市は市全域を対象とした「地域まちづくり推進要綱」をつくった上で、さらに「重点地域」向けに別の「推進要綱」もつくっているわけです。

 

これに対して文京区にはひとつの「まちづくり推進要綱」しかなく、しかもその対象地域として重点を置いているのは”行政主導”の色合いが濃い地域(都市マスタープランの「地域拠点」や「生活拠点」、別表で掲げる特別な事業)であるということが分かります。

 

もちろん、前回見てきたように、第3条(2)良好な住環境の保全、魅力ある景観づくり、地域への貢献に資する一体的な整備等を図る必要があると認められた区域とすることで、文京区全域を対象とすることは可能なのかもしれません。

 

しかし、地元区民の発意に基づき、区民の自発的な申し出によるまちづくりの芽を育て、育むようなまちづくりをしていくのであれば、敢えて「対象区域」を設ける必要はないようにも思えます。

 

「まちづくり推進要綱」を見直す際、あるいは条例化を検討することになった際は、「対象区域」の定義を外す方が区民の自由な意思を尊重し、まちづくりの機運を盛り上げていくことにもつながるような気がします。(続く)

(2018年12月6日)

 

第50回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える29)

文京区の「まちづくり推進対象区域」について、引き続き考えていきます。

 

文京区まちづくり推進要綱」の第3条(1)で定めている「文京区都市マスタープランにおいて、地域拠点又は生活位置付けられ た区域」とは、どのような「区域」なのでしょうか。

 

これを知るためには「文京区都市マスタープラン」を確認しなければなりません。

 

◆地域拠点・・・都心地域・下町隣接地域・山の手地域それぞれにおいて、広域的に人や情報が集まる拠点であり、広域商業や業務などの機能と、日常生活の利便性を高める様々な機能が集積し、地域の活性化の核となります。文京シビックセンター周辺、根津駅・千駄木駅周辺、茗荷谷駅・教育の森公園周辺に配置します。地域拠点は、次に示す生活拠点の機能も併せ持つものとします。

 

◆生活拠点・・・圏域として広がりのある山の手地域において生活圏域を考慮して配置する拠点であり、商店街を中心とした日常生活の利便性を高める様々な機能が集積し、地域の活性化の核となります。山の手地域東部の白山駅周辺と、山の手地域西部の江戸川橋駅周辺に配置します。

 

具体的にどこがそれらの拠点になっているかというと、下の図のようになっています。

 

「地域拠点」は薄紫色、「生活拠点」はオレンジ色です。

 

文京区内においてはかなり限られた地域であることが見て取れます。

 

次に、(2)を飛ばして先に(3)別表に掲げるまちづくり事業 を推進する必要があると認められた区域を考えてみますが、これも限られた地域であることは想像に難くありません。
 別表(第3条関係)
  1 木造住宅密集市街地整備促進事業
  2 防災生活圏促進事業
  3 緊急木造住宅密集地域防災対策事業
  4 都市防災不燃化促進事業
  5 市街地再開発事業
  6 都心共同住宅供給事業

 

私たち「千石4丁目南地区まちづくり協議会」が対象としているエリアは(1)(3)には該当しませんから、「まちづくり推進要綱」の対象エリアにしてもらうためには、(2)の「良好な住環境の保全、魅力ある景観づくり、地域への貢献に資する一体的な整備等を図る必要があると認められた区域」である必要があります。

 

(2)は定義上、かなり広範になっていますが、私たちの地域は「良好な住環境の保全」を「図る必要があると認められた区域」ということになるのかと思っています。(続く)

(2018年12月5日)


第49回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える28)

今日から文京区まちづくり推進要綱」における「まちづくり推進対象区域」について考えていきたいと思います。

 

「推進要綱」では、第1条において「この要綱は、文京区都市マスタープランを踏まえ、整備または保全の必要性のある区域(以下「まちづくり推進区域」という。)について、区民等とともに安全で快適なまちづくりを推進することを目的とする」と定めています。

 

らに、第3条では、「まちづくり推進対象区域とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう」となっており、3項目を挙げています。

 (1) 文京区都市マスタープランにおいて、地域拠点又は生活位置付けられ た区域
 (2) 良好な住環境の保全、魅力ある景観づくり、地域への貢献に資する一体的な整備等を図る必要があると認められ た区域
 (3) 別表に掲げるまちづくり事業 を推進する必要があると認められた区域

   別表(第3条関係)
  1 木造住宅密集市街地整備促進事業
  2 防災生活圏促進事業
  3 緊急木造住宅密集地域防災対策事業
  4 都市防災不燃化促進事業
  5 市街地再開発事業
  6 都心共同住宅供給事業

 

ここで気になるのが、そもそも「まちづくり」を推進する「区域」をあらかじめ定めておく必要がある(=定めておかなければならない)のだろうかという点です。

 

私たち「千石4丁目南地区まちづくり協議会」が求めているのは、地元区民の自発的な申し出によるまちづくりの支援策です。

 

ですから、まちづくりの必要性があるかないかは、第一義的に地元区民が判断するものであり、地元区民が必要であると考えれば基本的には推進する必要があると考えるべきでしょう。

 

あらかじめ「まちづくり」を推進する対象区域が決められているというのは、地元区民の発意に基づく「まちづくり」とは違ってきてしまいます。

 

もちろん、地元区民が必要と感じ、必要と判断すれば、全て推進すべきであると言っているわけではありません。

 

ここで言いたいのは、地元区民の発意や自発的な申し出を尊重したうえで「まちづくり」を推進し、それを支援するのであれば、「条例」や「要綱」においてあらかじめ「対象区域」を定める必要があるのでしょうか?ということに他なりません。

 

文京区内のどこでどんな「まちづくり」の必要性が生じるか分かりません。

 

それは地元区民の意識にも関係してきます。

 

必要性が生じていても長年、気付かなかったものの、あることをきっかけに必要性を感じることもあるでしょう。

 

いずれにしても、文京区のどこであっても、地元区民が必要性を感じ、必要だと判断するなら、積極的に推進していけるような「まちづくり推進要綱」にすべきではないでしょうか。

 

「対象区域」にまで要件を設けてしまうと、せっかくの地元区民のまちづくりの機運をしぼませてしまいかねないと思います(続く)

(2018年12月4日)

 

第48回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える27)

「まちづくりコンサルタント」を派遣に関し、文京区の「まちづくり推進要綱」と「まちづくりコンサルタント派遣要綱」「同要領」は、区民目線で区民に寄り添う形になっているでしょうか。

 

私たち「千石4丁目南地区まちづくり協議会」の立場から考えると、「まちづくりコンサルタント」を派遣してもらうに当たって、次のことが重要であると思っています。

 

第1に、私たちが重視しているのは、他の自治体におけるまちづくりの経験と知識、見識です。

 

特に「まちづくり協議会」の立ち上げという初期段階からの知見があり、自治体のまちづくり条例や関連要綱についても詳しい人材を派遣してもらいたいと思っています。

 

なぜなら、私たちの協議会は長年の活動歴がある組織ではありません。

 

また、文京区においてはまちづくり関連条例や要綱が全国の他の自治体に比べて充実しているとは言い難く、「まちづくり推進要綱」の見直し等も欠かせない状況にもあると考えているからです。

 

第2に、これが最も重要になってくるかと思いますが、合意形成ノウハウを豊富に持っている人です。

 

地元区民のまちづくり団体・組織において、一番弱点であるのは合意形成ノウハウであり、多くの「まちづくり協議会」の活動が頓挫してしまう大きな原因のひとつに合意形成の失敗があると思わざるを得ません。

 

地区まちづくり計画にしろ、建築協定にしろ、地区計画にしろ、個々の区民の利害や温度差を乗り越えて「まとめあげる」には大変な時間と労力が要ります。

 

まさにそこが「まちづくりコンサルタント」の腕の見せ所であり、「合意形成はみなさんで…」と、一歩引かれてしまっては派遣してもらう意味などなくなってしまいます。

 

付け加えるなら、その際に重要になるのが「俯瞰的な視点」であり、「第三者的な視点」で絶えず協議会の活動をチェックし、必要に応じて指摘、助言する能力です。

 

それには、最初に戻りますが、他の自治体において豊富なまちづくりの経験と知識、見識が欠かせません。

 

第3に、「融合」する能力です。

 

まちづくりの構想でも計画でも、個々の地元区民の意見や希望を単純に足し合わせるだけなら誰でもできます。

 

対立点を解消せず、玉虫色の表現であいまいにしておくだけなら、敢えて「まちづくりコンサルタント」を派遣してもらう必要はありません。

 

地元区民の意見や希望を、対立点を解消しつつ「融合」して全体像としてまとめあげることができて、初めて「まちづくりコンサルタント」を派遣してもらう意味があるというものです。

 

こうした点を「条例」や「要綱」に盛り込むことは難しいかもしれませんが、区民目線で区民に寄り添うまちづくり支援策にするためには、「条例」や「要綱」の背後にそうした理念が行間を通じて読めるようでなければならないでしょう。

 

それとともに、「条例」や「要綱」を使う区職員の側にも、導き手としてのこうした自覚がなければうまく運用していけないのではないでしょうか。続く)
(2018年12月1日)

 

第47回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える26)

なぜ、私たちがこれだけ「まちづくりコンサルタント」に強い関心を寄せるかといえば、一般企業でもそうですが、「コンサルタント」を使いこなすことは意外に難しいという現実があるからです。

 

どんなに優秀な「コンサルタント」を確保しても、それを使いこなせなければ意味がありませんし、「まちづくりコンサルタント」の派遣費用は文京区の予算から出すわけですから、使いこなせなければ税金の無駄遣いということになってしまいます。

 

大手企業であったとしても、「経営コンサルタント」を使いこなせていないケースを見聞きします。

 

地元区民が「まちづくりコンサルタント」を使いこなすに当たっては、一般企業よりも ずっと高いハードルがあることは疑う余地がないでしょう。

 

仕組みというのは枠組み(あるいは形)だけ整えればいいというわけには行きません。

 

「まちづくりコンサルタント」の派遣事業も同じです。

 

「まちづくりコンサルタント」を登録してもらい、そこから「まちづくり協議会」の要請に従って区長が選定し、派遣する--という仕組みだけつくったからと言って、自動的に成功に導けるというわけでないことをしっかり認識しておく必要があります。

 

まちづくりに関して言えば、地元区民(住民)で組織する「まちづくり協議会」が「まちづくりコンサルタント」を自由自在に使いこなせるとは言えないことを前提として、区が選定段階からきめ細かく目配りし、その後も「協議会」が使いこなせるように陰に陽に支援していくことが欠かせません。

 

そして、そのためには区職員自身が「まちづくりコンサルタント」を使いこなすための要諦を心得ていなければならないのです。

 

その重要な要諦のひとつは、「まちづくり協議会」に主体性を持たせることにあります。

 

「まちづくりコンサルタント」を上手に使いこなすためには、第一に「まちづくり協議会」が主体性を確立していなければならないからです。

 

「まちづくり協議会」を認定すればそれで終わり…、「まちづくりコンサルタント」を選定すればそれで終わり…、派遣したらそれで終わり…では、単に確保した予算を消化しているだけに過ぎなくなってしまいます。

 

実効性の伴った「まちづくりコンサルタント」派遣事業にするためにも、「要綱」「要領」の見直しだけで終わらせるのではなく、「まちづくり協議会」に主体性を持たせ、「コンサルタント」を使いこなせるようにする区職員の支援態勢まで踏み込んで見直していく必要性があると言えるでしょう。(続く)
(2018年11月30日)

 

第46回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える25)

「まちづくり」を「戦略」面と「戦術」面で区別して考えると、「まちづくりコンサルタント」は「まちづくり」の「

戦略」を立てる(あるいは「戦略」面で支援をする)という意味合いで使う場合が多いのではないでしょうか。

 

一方、意識するしないにかかわらず、あたかも「戦略」が「非常に高度」で、「戦術」レベルというものは「たいした話じゃない」的な発想が広くあるのも事実であり、文京区の「まちづくり推進要綱」や「まちづくりコンサルタント派遣要綱」「同派遣要領」を読む限り、そうした印象を受けます。

 

しかし、地元区民にとって、「戦略」と「戦術」のどちらがより重要であり、区民においてどちらの能力に欠けているかと言えば、それは「まちづくり」の「戦術」の方であると言えるかと思います。

 

話は変わりますが、日本の著名な経営コンサルタントである田坂広志氏の「講演録」を引用したいと思います。(※GLOBIS知見録「あすか会議2015」の「戦略思考と戦術思考を磨き上げていますか?」から)

 

「戦略」と「戦術」の根本的な違いを鋭く指摘しており、これは「まちづくりコンサルタント」の業務においても重要な示唆に富んでいます。

 

たとえば、私はかつて日本総合研究所で異業種連合のコンソーシアムをつくってきたが、そこで戦略を語っているときはラクなんだ。『スマートグリッドでこういう実証実験をやろう。真ん中に電力会社を置いて、あとはメーカーさんとゼネコンさんとSIerさんに集まってもらおう』といった戦略を立てること自体は簡単だし、わくわくする

 

でも、ある段階から、『さあ、どうする?』という話になる。我々は趣味で戦略を議論しているわけじゃないので、実行しようとなった瞬間、まさに戦術志向の段階に入る。

 

では、戦術思考とは何か。間違っても、『大きなものが戦略で小さなものが戦術』という話じゃない。戦術思考とはすべて『固有名詞』。『真ん中は電力会社』と言うなら、具体的にはどの電力会社にコンソーシアムへ参加してもらうのか、と。その際、どの部署の誰に話をするのか。そうした固有名詞が出てこない限り現実は動かない。

 

そこで『ゼネコンさんが云々』といったことを具体的な固有名詞で考えるとき、最も強く求められる知性が『想像力』と言える。『あの部署のあの人にこういう話をしたらどうなるか」「むしろ、こちらの部署に話をするほうがいいんじゃないだろうか』『まずあの会社に声をかけたら、この会社がどう反応するだろうか』。そういったことを想像することが、目の前の現実を変えるビジネスプロフェッショナルの基本になる。

 

たとえばサッカーでも、『なかなかあの選手はいいイマジネーションを持っていますね』なんて言うことがある。本来であればビジネスの世界でも、想像力がない限り目の前の現実を変えることはできない。

 

そして、そうした想像力の前提になるのは人間観と組織観だ。

 

まずは、『人間というものは、こういう風に動いたとき、こんな風になるだろう』という人間観。それで、ビジネスでも『あの部署を先に攻めたら、別部署のあの部長がへそを曲げるかもしれない』といったことまで考えていく。

 

組織観についても同じだ。たとえば、『今、あの会社でこの組織はこういう位置づけになっているから、こういう仕掛け方をしても難しいだろう』と。組織というものの仕組みをどれほど知っているか。人間と組織をどれくらい熟知しているかが皆さんに問われる。これが戦術思考というレベルの知性になる」--。

 

長く引用しましたが、「まちづくりコンサルタント」あるいは「まちづくり」そのものにおける「戦略」と「戦術」も同じです。

 

「まちづくりコンサルタント」が「戦略」思考だけで、「戦術」思考を磨き上げていなければ、地元区民にとって派遣を受ける意味はないと言っても過言ではなく、「まちづくり」も成功しないでしょう。

 

「戦略」思考だけなく、「戦術」思考を磨き上げた「まちづくりコンサルタント」をいかに確保し、文京区内の「まちづくり協議会」に送り込んでいくかが重要であり、区にもその点を真剣に考えてほしいところです。

 

「要綱」を見直すだけでいいのか、「条例」にするのがいいのか、あるいは「要綱」や「条例」とは切り離して考えるべきなのか分かりませんが、いずれにしてもこうした視点を念頭に入れて新しい仕組みづくりを進めない限り、実効性のある制度・仕組みにはなっていかないのではないでしょうか。(続く)
(2018年11月29日)

 

第45回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える24)

文京区の「まちづくりコンサルタント派遣実施要領」によると、「まちづくりコンサルタント」を選定するのは区長と定めています。

 

第4条 「派遣するまちづくりコンサルタントは、要綱第4条第1項の規定により登録されたまちづくりコンサルタントの中から区長が選定する」

 

つまり、現状でいうと、「まちづくり協議会」が派遣を申請した場合、区長は現在登録している4つの法人の中から選んで派遣することになります。

 

ここで気になるのは、区長が選定した「まちづくりコンサルタント」が、果たしてその「まちづくり協議会」(あるいはその地域のまちづくり)に最適な人選であるかという点です。

 

たとえ高度な専門知識を持ち、各方面で様々な実績があったとしても、まちづくりは”ケース・バイ・ケース”の側面が強く、その「まちづくり協議会」にうまくマッチするかどうかは分かりません。

 

知識・能力・実績だけでなく、その「まち」、そこの「住民」にうまくマッチするかどうか、いわば”マッチングの妙”も問われてくると言えます。

 

◎区民目線、住民目線で考えてくれるかどうか?

◎根気よく区民の心根に寄り添ってくれるかどうか?

◎熱意と情熱を持って取り組んでくれるかどうか?

◎単なる”押し付け”にならないかどうか?

◎円滑な合意形成の仕方など目に見えないスキルを持っているかどうか?

 

区民にしてみれば、気になる点がいくつもあるわけです。

 

せっかく「まちづくりコンサルタント」を派遣してもらっても、単に「構想」や「計画」だけがまとまって分厚い書面だけが残り、計画自体は頓挫してしまった…というようなことでは本末転倒なわけです。

 

「条例」や「要綱」「要領」で定めておくかどうかは別にして、いかにして効果の上がるマッチングが可能かについても知恵を絞らなければ、実効性の上がるまちづくり支援策とは言えません。(続く)
(2018年11月28日)

 

第44回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える23)

文京区には「まちづくりコンサルタント派遣要綱」と「派遣要領」はあっても、誰がコンサルタントとして登録しているか分かるような「登録簿(登録名簿)」をHPなどで公表していません。

 

従って区民は、仮にこの制度を活用しようと思っても、どんな人(あるいは法人)が登録してあるか(=派遣してもらえるか)、「事前にちょっとHPで見てみよう」といった具合には調べられないのです。

 

ちなみに、文京区に確認したところ、現時点で登録しているのは4法人(個人としての登録はなし)とのことでした。

 

しかし、全国の他の自治体では「登録簿」をHP上で公開しているケースもあります。

 

港区の「まちづくりコンサルタント登録者名簿」は文京区の20倍以上の94者(社)に及びます。

 

◆さいたま市の「まちづくり専門家一覧表」には30人が掲載されています。

 

◆八王子市は「まちづくりアドバイザー」ですが、23人が登録しており、具体的な専門分野や支援可能な分野、これまでの実績・論文、PR事項などが記載された「登録票」まで、ネット上で閲覧できるようになっています。

 

◆新潟市も「まちづくりアドバイザー等」となっていますが、8者(社)が登録しており、八王子市同様、「登録シート」も閲覧できます。

 

区民にしてみれば、どのような人(法人)なのか? これまでどこでどのような実績を上げているのか? 最後まで親身に相談に乗ってくれそうか?など、気がかりなことは多くあるわけです。

 

そうした区民の不安を事前に解消していくためにも、「まちづくりコンサルタント」は数多くいた方がいいでしょうし、その情報は公開されていた方がいいと言えるのではないでしょうか。(続く)
(2018年11月27日)

 

第43回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える22)

文京区は「まちづくり推進要綱」において、とりあえず「まちづくりコンサルタント」の定義を定め、別途、「まちづくりコンサルタント派遣要綱」もつくっているわけですが、「まちづくりコンサルタント」の仕事(業務内容)とは一体、どのようなものなのでしょうか。

 

しかし、「派遣要綱」にも「派遣要領」にも、「まちづくりコンサルタント」業務内容について具体的かつ明確な記述は見当たりません。

 

唯一、「派遣要綱」の第4条の2のところに、「まちづくり活動において、登録された専門分野に関する啓発、指導又は助言をする」と書いてあるだけです。

 

では、全国の他の自治体ではどうなっているでしょうか。

 

◆港区の「まちづくりコンサルタント派遣要綱」には次のように書いてあります。
(業務内容)
 第6条 前条第3項の規定によりまちづくりに関する業務の依頼を受けたまちづくりコンサルタントは、次の各号に定める業務を行わなければならない。
    (1) 講演会、研究会等における講演、指導及び助言
    (2) まちづくり組織の結成及び地区まちづくりビジョンを策定する際の知識の普及、技術的指導及び運営事務補助
    (3) 地区まちづくりルールを策定する際の知識の普及、技術的指導、運営事務補助及び計画案の作成
    (4) 地区まちづくりルールを実現する際の知識の普及、技術的指導、運営事務補助及び計画案の作成

 

◆大阪市の「まちづくり専門家派遣運用要領」では、「アドバイザー」と「コンサルタント」の役割分担をした上で、以下のように定めています。
 第1条 この要領は、大阪市まちづくり活動支援制度要綱(以下「制度要綱」という。)第8条第1項及び第12条に規定するまちづくりの専門家としてのまちづくりアドバイザー(以下「アドバイザー」という。)、まちづくりコンサルタント(以下「コンサルタント」という。)及びグループアドバイザー(以下「アドバイザー」及び「コンサルタント」とあわせて「まちづくり専門家」と総称する。)の派遣について必要な事項を定めるものとする。
第2章 まちづくり専門家の登録
 (業務内容)
 第2条 アドバイザーが行う業務は、まちづくり推進団体(以下「推進団体」という。)が実施する次の各 号に掲げる活動に関する指導、助言等とする。
  (1)組織の運営
  (2)まちづくり活動の進め方の検討
  (3)まちづくりの制度等に関する勉強会の実施
  (4)その他市長が必要と認めるまちづくり活動
  2 コンサルタントが行う業務は、推進団体が実施する次の各号に掲げる活動に関する指導、助言等とする。
   (1)まちの課題・資源の抽出や将来像の検討
   (2)まちづくり方針案、まちづくり構想の作成
   (3)その他市長が必要と認めるまちづくり活動

 

広島市では「1次派遣」と2次派遣」に分け、「1次派遣」は「現況調査、アンケート調査、まちづくり方針案の作成など」、「2次派遣」は「まちづくり計画案の作成など」としています。

 

板橋区の場合は「一次派遣」~「三次派遣」に分け、以下のように分類しています。
 (1) 一次派遣業務 まちづくり事業を推進するための指導及び助言
 (2) 二次派遣業務 まちづくりの構想及び計画案の作成並びに当該作成に必要な指導及び助言
  (3) 三次派遣業務 まちづくりの事業実施に係る活動

 

一方、文京区の場合、「派遣要綱」で定めているとは言っても、「啓発」や「指導」「助言」であり、これでは余りに抽象的で範囲が広く、これだと「まちづくりアドバイザー」や「まちづくりコーディネーター」にも共通する業務内容と言えてしまうのではないでしょうか。

 

「推進要綱」や「派遣要綱」を見直すにしても、条例化を検討するにしても、「まちづくりコンサルタント」の業務内容を具体的かつ明確に記載し、区民が「何をしてくれる人なのか」を理解しやすいようにしてほしいと思います。(続く)
(2018年11月26日)

 

第42回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える21)

「まちづくりコンサルタント」と並んで、一般的によく使われる言葉に「まちづくり専門家」があります。

 

文京区では「まちづくりコンサルタント」の派遣制度を設けていますが、自治体によっては「まちづくり専門家」の派遣制度としているところも多くあります。

 

Wikipediaによると、まちづくり専門家は「狭義にはハード分野の都市・地域計画にかかわるコンサルタントのことであるが、ソフトを含め地域活性化全般のコンサルタントをいう場合もある」と定義付けられています。

 

◆全国の自治体の中には国分寺市のように、「まちづくりの専門家(以下「コンサルタント」という。)」(国分寺市まちづくりコンサルタント派遣要綱)としているところもあります。

 

23区でも、品川区は「まちづくり専門家派遣(活動支援業務)」事業がありますし、世田谷区にも「街づくり専門家支援制度」があります。

 

◆品川区の場合、「まちづくり専門家」は以下のように定めています。

 

まちづくり専門家 まちづくりに係る各分野において、専門知識と経験を有する個人または法人で、次に掲げる者をいう。
 ア 都市計画、都市再開発および建築設計の専門家で、この要綱に基づき区に登録された者
 イ 法律、経営、税務および不動産等に関し専門の資格を有する者
 ウ その他まちづくりについて特に優れた知識および経験を有する者

 

◆中野区にも「まちづくり専門家の登録」制度があり12人が登録されているほか、北区には「北区まちづくり専門家派遣」制度、墨田区には「まちづくり専門家派遣制度」があります。

 

ただ、「まちづくり専門家」では名称として何となく分かりやすい半面、抽象的すぎて具体的な業務内容が見えてこないきらいがあります。

 

◆その点、仙台市の説明は参考になるのではないでしょうか。

 

同市には「まちづくり支援専門家派遣制度」があるのですが、そこには次のように書いてあります。

 

「市民の皆様が主体的に行うまちづくり活動を支援し、地域の特性や資源を活かした個性あるまちづくりを推進するため、まちづくりを行っている団体にまちづくり専門家を派遣し、専門的な助言やまちづくりに関する情報提供等を行っていく制度です。まちづくり活動の性格や熟度に応じて、まちづくりアドバイザー又はまちづくりコンサルタントを派遣します」--。

 

大切なのは、「まちづくり活動の性格や熟度に応じてまちづくりアドバイザー又はまちづくりコンサルタントを派遣します」という部分でしょう。

 

同市では、下記に紹介するように、「まちづくり専門家」「まちづくりアドバイザー」「まちづくりコンサルタント」に分けて、しっかり説明を試みていると言えます。


◎まちづくり専門家とは
 ・市民が主体的に行うまちづくり活動に対し、市が専門的な助言や情報提供等の支援を行うため派遣する専門家をいいます。
 ・まちづくり専門家として活動しようという方に、事前に登録をしていただいておりますので、登録者の中から地区に適した専門家を派遣することになります。
 ・まちづくり専門家には、「まちづくりアドバイザー」と「まちづくりコンサルタント」があります。

 

◎まちづくりアドバイザーとは

 ・まちづくり学習活動又は地域活性化活動に対し、学習会の開催、地域の問題提起に対する助言、住民アンケートの実施等の支援を行います。
 ・まちづくり計画案作成活動に対し、まちづくりの方針もしくは構想の策定、地域の課題の整理、地元の合意形成等の支援を行います。

 

◎まちづくりコンサルタントとは

 ・まちづくり計画案作成活動に対し、まちづくり計画案の策定、当該計画案に係る地元の合意形成等の支援を行います。

 

当然のことながら、それぞれ「派遣要件」「派遣回数・期間」は異なってきます。

 

文京区においても、「まちづくり専門家」「まちづくりアドバイザー」「まちづくりコンサルタント」の違いを明確にした上で、まちづくりの段階に応じて派遣する人材の「要件」「回数」「期間」を変えていくような仕組みにしていくべきでしょう。(続く)

(2018年11月22日)

 

第41回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑳)

そもそも「まちづくりコンサルタント」とはどういう人たちのことを言うのでしょうか。

 

ウィキペディア(Wikipedia)には次のように書いてあります。

 

「まちづくりコンサルタントとは、都市コンサルタント、都市計画コンサルタントの一種で、都市施設の設計、土地区画整理の業務、都市再開発など、おもにハードやフィジカルな建設の計画や土地利用などの法定都市計画や都市政策分野の業務ではなく、都市に関するソフトの分野、まちづくりのコンサルティング業務を専門に受託し遂行するコンサルタント」--

 

ただ、最も私たち一般区民が留意しておきたいには、「法的には定義のない呼称」 であるというところではないでしょうか。

 

Wikipediaによると、「現在では日本全国の自治体や一般財団法人のまちづくり公社といった公的機関の多くで、まちづくりコンサルタント制度要綱、まちづくりコンサルタント派遣要綱を設け、まちづくりコンサルタント派遣制度を行っており、各組織・機関で派遣するための『まちづくりコンサルタントの登録者』を募集している」

 

「登録者には法の改正により都市マスタープラン、さらに地区計画なども、都市をつくり検討する面々が、行政担当者と学識者等の専門家から一般住民まで、様々な立場の関係者が想定されている」と書いてあります。

 

では、もっと踏み込んで、具体的にどんな仕事をする人たちなのでしょうか。

 

Wikipediaを辿ると、次のように説明しています。

 

「都市計画コンサルタントやまちづくりに関わりの深い建築家らが、その仕事を担っているという状況が多くみられる」

 

「ただし近年、特にまちづくりの調整に関連した業務が生じている。商店街等の活性化は商店会だけではできず、地元合意形成を促し行政などに伝えるつなぎ役を果たす業務、また地域福祉や保健に関する業務など高齢者や障害者、子育てなど地域で暮らす人々が快適な生活できる環境を構築する業務の委託などのケースも増加傾向にある」

 

つまり、「まちづくりコンサルタント」なるものは、法的な定義がなく、確立された職種などでもなく、建築や都市計画、まちづくりなど様々な専門知識を持つ人たちが自由に名乗れて、しかも仕事内容も極めて幅広いことが分かります。

 

それだけに、行政としても「まちづくりコンサルタント」を派遣するのであれば、その定義をしっかりとしておく必要があるのではないでしょうか。(続く)

(2018年11月21日)

 

第40回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑲)

「文京区まちづくり推進要綱」の第2条の「定義」のところには、「区民等」「団体」に続いて「まちづくりコンサルタント」が出てきます。

 

そこには次のように書いてあります。

 

「まちづくりコンサルタント 文京区まちづくりコンサルタント派遣要綱第4条第1項の規定により区に登録された者をいう」--

 

では、派遣要綱第4条第1項にはどのようなことが定めてあるのでしょうか。

 

「まちづくりコンサルタントは、文京区まちづくりコンサルタント派遣実施要領第7条に定める資格要件を備える者で、同要領第8条の手続きにより区に登録された者とする」--

 

そして、派遣実施要領第7条に定める資格要件は次のようになっています。

(登録の資格要件)

 第7条 まちづくりコンサルタントの登録を受けようとする者は、個人にあっては次の各号のいずれかに該当する資格要件を備えていなければならない。

  (1) 再開発プランナー、一級建築士、弁護士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士等の資格を有する者

  (2) 都市計画、都市再開発又は建築設計に関し、3年以上の実務経験を有する者

  (3) 前2号に規定する者のほか、まちづくりに関する事業を行うにつき、区長が特に必要と認める者

 2 まちづくりコンサルタントの登録を受けようとするものが法人にあっては、前項に規定する各号のいずれかに該当する登録の資格要件を満たし、まちづくりコンサルタントとして専ら従事できる者を有していなければならない。

 

どうして、「まちづくりコンサルタント」の定義がこれだけ分かりにくくなっているのでしょう?

 

おそらく、2つの観点から考える必要があるのではないでしょうか。

 

ひとつは、「推進要綱」の中で「まちづくりコンサルタント」を定義付けする必要性があるのかどうか。

 

もうひとつは、「まちづくりコンサルタント」の定義の仕方、あり方がこれでいいのかどうか。

 

なぜ、「まちづくりアドバイザー」や「まちづくりコーディネーター」や「まちづくりカウンセラー」ではなく、「まちづくりコンサルタント」なのかという点も含めて考えなければならないでしょう。(続く)

(2018年11月20日)

 

第39回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑱)

文京区の「文京区まちづくり推進要綱」の第2条(定義)の2番目には「団体」という言葉が出てきますが、文京区は「団体」の定義を以下のように定めています。

 

「団体」=「まちづくりに係わる活動(以下「まちづくり活動」という。)を行う区民等の組織をいう」

 

しかし、「まちづくりに係わる活動」と言われても、「まちづくり」について定義付けがされていないわけですから、「まちづくり活動」も具体的に何を意味するのか分からない状態になっています。

 

従って、この「推進要綱」でいうところの「団体」も、明確に定義付けされているとは言い難いといえるでしょう。

 

では、他の自治体はどうなっているでしょうか。

 

◆品川区は、「品川区まちづくり推進要綱」において、かなり詳細な定義付けをしています。

まちづくり活動推進団体等(以下「推進団体」という。)=区内においてまちづくり活動を推進している団体等で、次に掲げるものをいう。
 ア 都市計画法(昭和43年法律第100号)および建築基準法(昭和25年法律第201号)に基づき、地区計画、建築協定等によるまちづくりを目的として活動している協議会等の団体
 イ 都市再開発法(昭和44年法律第38号)に基づき、市街地再開発組合の設立を目的として活動している準備組合等の団体
 ウ 区が定めた要綱に基づき、共同化、不燃化および木造賃貸住宅の建替え等の良好な建築物の整備を目的として活動している個人または団体
 エ 安全で住みよい市街地整備を目的として、地域住民等により設置されたまちづくり協議会等の団体
 オ その他区長がアからエまでに準ずるものと認める団体

 

◆名古屋市は、「名古屋市地域まちづくり推進要綱」において、「まちづくり組織」として定義付けしています。

「まちづくり組織」=「地域住民等が中心となって地域まちづくりに取り組む又は取り組もうもうとする組織をいう」

※「地域まちづくり」=「地域において、地域住民等、その他多様な主体が、より良い環境を築き、地域の価値を向上させるために行う、地域の資源や特性を活かした自発的・自立的な市街地の形成・維持・改善及び活用に関する取組をいう」

※「地域住民等」=「市内の地域まちづくりが行われている又は行われていようとしている地域において、居住する者、事業を営む者又は土地若しくは建物等を所有する者をいう」

 

◆福岡市の「福岡市地域まちづくり推進要綱」を見ると、次のように定義付けしています。

「地域まちづくり協議会」=「地域まちづくりを推進することを目的とする地域住民等や地域事業者からなる組織として、市に登録されたものをいう」

※「地域まちづくり」=「安全・安心で快適な魅力あるまちを実現するために行う、市街地の形成及び居住環境の維持又は改善に取り組む活動をいう」

※「地域住民等」=「地域まちづくりが行われている地域の住民及び土地の所有権又は借地権を有する者をいう」
※「地域事業者」=「地域まちづくりが行われている地域で事業を行っている者」

 

参考として紹介した上記3つの自治体の「推進要綱」の場合、定義付けの中で使われる言葉の概念についても、しっかり定義した上で定めていることが分かります。

 

文京区においても、「推進要綱」を見直す際には、言葉の定義付けからひとつひとつ確認し、見直ししていく必要があると言えるでしょう。(続く)

(2018年11月19日)

 

第38回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑰)

自治体によって、何を「まちづくりの基本原則」として盛り込むかは様々です。

 

◆例えば広島県庄原市の「まちづくり基本条例」には「基本原則」の5番目に「男女共同参画の原則」が入っています。

第2章 まちづくりの基本原則

(基本原則)

 第4条 まちづくりは、次に掲げる基本原則に沿って進めるものとします。

  (1) 参画の原則 意思決定、活動および評価のそれぞれの過程において、市民が自主的に参画すること。

  (2) 協働の原則 自助、共助および公助の考え方を前提として、協働すること。

  (3) 情報共有の原則 積極的な情報提供により、情報を共有すること。

  (4) 人権尊重の原則 性別、年齢および国籍などにかかわらず、市民一人一人の人権が尊重され、その個性や能力が十分に発揮されること。

  (5) 男女共同参画の原則 男女が対等な立場で参画すること。

 

◆また、長野県茅野市は「パートナーシップのまちづくり基本条例」の中で、「パートナーシップのまちづくりの基本原則」として、下記の5項目を掲げています。

 

 ○自主性の尊重▶市民等のそれぞれの自主性に基づき行います。
 ○市民等と市の信頼関係▶市民等と市が対等、協力の立場において、お互いの信頼関係に基づき行います。
 ○情報の共有▶必要な情報をお互いに共有します。

 ○市民等の権利▶ 市民等は、パートナーシップのまちづくりの企画、立案の段階から参画する権利を有します。
 ○市民等の役割▶市民等は、自らがパートナーシップのまちづくりの主体であることを自覚し、パートナーシップのまちづくりに関する市民等の役割を果たすように努めるものとします。

 

茅野市の場合、カタカナで「パートナーシップ」という言葉を使っていますが、これは「協働」と言い換えてもいいかもしれません。

 

◆一方、愛知県高浜市の場合、「自治基本条例」があり、その第4条に「まちづくりの基本原則」が規定されていることを受け、「まちづくりの基本原則『参画・協働・情報共有』ガイドライン」という約40ページからなる冊子も作っています。

(まちづくりの基本原則)
  第4条 高浜市のまちづくりは、次の基本原則によるものとします。
    (1)参画の原則 議会及び行政は、市民参画の機会を保障し、市民の意思を反映した市政運営を行います。
    (2)協働の原則 市民、議会及び行政は、それぞれの立場や果たすべき役割を自覚し、お互いを尊重・理解し、知恵と力を出し合いながら連携・協力してまちづくりを行います。
    (3)情報共有の原則 市民、議会及び行政は、それぞれが持っているまちづくりに関する情報をお互いに提供し、共有し合います。

 

文京区には、「文の京」自治基本条例がある一方、「まちづくり基本条例」はなく、「まちづくり推進要綱」があるだけになっています。(※「安全・安心まちづくり条例はありますが…)

 

こうした全国の様々な自治体のケースを参考に、知恵を絞ればいくらでも文京区に相応しく、そして全国的に胸を張れる「まちづくり基本条例」を制定できるだろうと思わずにはいられません。(続く)

(2018年11月16日)

 

第37回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑯)

全国を見渡すと、まちづくりの「基本理念」だけ定めている自治体も少なくありません。

 

◆兵庫県宝塚市は「まちづくり条例」の中で、「基本理念」を下記のように定めています。

(まちづくりの基本理念)
 第2条 まちづくりは、主権者である市民と市が、それぞれに果たすべき責任と役割を分担しながら、相互に補完し、及び協力して進めること(以下「協働」という。)を基本とし、次に掲げるまちづくりを推進するものとする。
   (1)すべての市民が健康で安心して暮らせ、災害に強く安全でいつまでも快適に住み続けることができる、安全で安心して暮らせるまちづくり
   (2)次代を担う子ども達が夢と希望を抱き、健やかに成長し、そして、すべての市民の人権が尊重され、文化の薫り高い、心豊かなまちづくり
   (3)豊かな自然環境と歴史・文化の息づく都市の景観が美しく調和し、花や緑があふれ、環境にやさしい、個性と魅力のあるまちづくり
   (4)人と人、人と社会のつながりが強く、 また、地域活動が活発な、にぎわいと活力に満ちたまちづくり

 

宝塚市ではこれとは別に、「開発事業における協働のまちづくりの推進に関する条例」もありますから、上記は「理念条例」の位置づけになるのかもしれません。

 

◆福岡県福津市の「みんなですすめるまちづくり基本条例」も「基本理念」だけで、「基本原則」は盛り込んでいません。

(基本理念)
 第3条 市民、事業者等及び市は、市民参画と共働を基本として、次に掲げるまちづくりをすすめるものとする。
  (1)人と人とのふれあいを大切にし、子どもから大人まですべての人が安心して住むことができるまちづくり
  (2)人が集い、語り、行動し、協力するまちづくり
  (3)人の知恵を生かし、一人ひとりを大切にするまちづくり
  (4)豊かな自然環境と受け継がれてきた伝統文化を大切にするまちづくり
  (5)地域に誇りを持ち、住み続けたいと思えるまちづくり
  (6)地域の資源を知り、生かし、活気あふれるまちづくり
  (7)子どもの思いが尊重され、健やかに成長できるまちづくり

 

文京区として「推進条例」を見直すにしても、新たに条例をつくるにしても、文京区における「まちづくりの基本理念」は区民の思いや意見をはっきり反映させた上で、明確に定めなくてはならないでしょう。(続く)

(2018年11月15日)

 

第36回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑮)

◆「まちづくり」の「理念」「基本原則」「目標」の3本柱を盛り込んでいるのは広島県三次市の「まち・ゆめ基本条例」です。

 

第2章 まちづくりの理念
(理念)
 第4条 まちづくりは,市民のしあわせをめざして進めるものです。

第3章 まちづくりの基本原則
(基本原則)
 第5条 まちづくりは,市民と市議会及び市が協働して進め,市民がその成果を受けるものでなくてはなりません。

(まちづくりの目標)
 第6条 市民と市議会及び市は,次の目標にむけて,まちづくりを行います。
 (1) 共に認めあい,支えあう,温かみと安心感のあるまちづくり
 (2) 自然との共生を図り,安全で快適に暮らせるまちづくり
 (3) 次世代を担う子どもたちが夢と希望を抱き,健やかに成長できるまちづくり
 (4) 歴史と伝統を継承するとともに,学ぶ喜びをもてるまちづくり
 (5) 地域活動が活発で,にぎわいと活力に満ちたまちづくり
 (6) 多様な仕事を興し,地域産業に活力を与え,働く喜びをもてるまちづくり
  2 市民と市議会及び市は,まちづくりのために行動する市民を育み,多くの市民が共感できるように努めなければなりま せん。

 

三次市の場合、第30条の規定により、「4年を超えない期間ごとに、市民の参加を得て、まちづくりにふさわしいものであるか必要に応じて見直しを行うこと」とされており、「平成18年度の条例制定からこれまで、平成21年度、平成25年度、平成29年度に検証」を行っています。

 

それらは「三次市まち・ゆめ基本条例の検証について」というページで公表されており、文京区において「まちづくり基本条例」をつくる場合、「見直し規定」は不可欠でしょう。

 

◆「まちづくり」の「理念」と「考え方」という2本立てにしているのは宮城県柴田町の「住民自治によるまちづくり基本条例」です。

 

第2章 まちづくりの基本理念
  (基本理念)
 第4条 まちづくりの基本理念は、次のとおりとします。
  (1) 住民が安全に、安心して暮らせるまちづくり
  (2) 住民の1人1人が個人として尊重され、住民の思い及び活動が生かされるまちづくり
  (3) 先人が築いてきた文化、伝統等を大切にし、地域の個性を生かしたまちづくり
  (4) 多様な団体及び個人が交流し、又は連携し、住民がお互いに助け合う思いやりのあるまちづくり
  (5) 住民であることの誇り及びまちの良さを子どもたちに引き継ぐまちづくり
第3章 まちづくりの考え方
 第1節 参加及び協働によるまちづくり
(まちづくりの基本)
 第5条 まちづくりは、情報共有に支えられ、参加及び協働により進めることを基本とします。
   2 前項の参加及び協働は、情報共有、話合いの積重ね等により合意を得られるよう進めます。
(まちづくりの主役及び担い手)
 第6条 まちづくりの主役は、住民です。
   2 まちづくりは、住民、地域コミュニティ、住民活動団体、事業者、議会及び行政機関(以下「担い手」といいます。)が担います。
(参加によるまちづくり)
 第7条 担い手は、まちづくりの参加の輪を広げるため、誰もが自由に参加できる環境づくりに努めるものとします。
   2 担い手は、参加の意欲を高め るため、楽しさ、達成感等が感じられるまちづくりを進めるよう努めるものとします。
(協働によるまちづくり)
 第8条 担い手は、それぞれ単独では解決が難しい課題の解決又は関心のあるテーマの実現のため、協働によるまちづくりを進めるよう努めるものとします。
(町外との交流及び連携によるまちづくり)
 第9条 担い手は、町外の団体、機関等との交流及び連携を促進し、まちづくりを進めるよう努めるものとします。
(まちづくりを支える情報共有)
 第10条 担い手は、まちづくりの情報を提供し合い、情報共有に努めるものとします。
   2 議会及び行政機関は、保有する情報を公開するとともに、積極的にまちづくりの活動内容を住民、地域コミュニティ、住民活動団体及び 事業者(以下「住民等」といいます。)に分かりやすく伝えるものとします。
   3 地域コミュニティ、議会及び行政機関は、それぞれ内部で情報共有に努めるものとします。

 

柴田町は「考え方」という表現を使っていますが、「基本原則」と読み換えていいかもしれません。

 

同町でも、「基本条例の見直しや基本条例に基づくまちづくりの実施状況を検証」しており、資料や会議録をHP上で公開しています。

 

「見直し規定」と「検証作業」、その「情報開示」は3点セットで欠かせないことが分かります。

文京区で「まちづくり要綱」を見直すにしても、新たなに条例化を研究・検討するにしても、上記の3点は絶対に欠かせないと言えます。(続く)
(2018年11月12日)

 

第35回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑭)

「まちづくりの基本理念」と「基本原則」のどちらに重きを置くか、あるいはどちらをより詳しく定めるかは自治体によって異なります。

 

◆広島県神石高原町の「人と自然が輝くまちづくり条例」はほぼ同じ分量であり、バランスよくコンパクトにまとめたものになっていると言えそうです。

第2章 基本理念
(基本理念)
 第3条 わたしたち住民は,次の各号に掲げるまちづくりの方針に基づき,行政との協働・補完により,地域の様々な資源を活かし,個性的で活力のあるまちを実現するものとする。
  (1) 高原の特徴を生かした快適で魅力に満ちたまちづくり
  (2) 福祉が充実した安心して暮らせるまちづくり
  (3) 自然と歴史を生かした文化的なまちづくり
  (4) 地域の資源を生かした活力あるまちづくり
  (5) 生活基盤の整った一体感あふれるまちづくり

第3章 基本原則
(住民主体の原則)
 第4条 まちづくりは,住民が主体となって,自らの発言と行動に責任を持ち,これを進めることを基本とする。
(協働参画の原則)
 第5条 まちづくりは,住民が町と相互に連携を取りつつ,住民の意思を反映しながら進めていくことを基本とする。
(情報共有の原則)
 第6条 まちづくりは,住民と町がまちづくりに関する情報を共有しつつ進めていくことを基本とする。
(行政支援の原則)
 第7条 町は,住民主体のまちづくりを財政的に,また人的にも積極的に支援する。

 

◆新潟県柏崎市の「市民参加のまちづくり条例」も同様です。

(まちづくりの基本理念)
 第4条 まちづくりは、市民の幸福の実現を目指して進めるものとする。
  2まちづくりは、市民と市が協働して推進し、市民がその成果を享受していくものでなければならない。

(まちづくりの目標)
 第6条 市民と市は、まちづくりの基本理念に基づき、それぞれに協働し、次に掲げるまちづくりの推進に努めるものとする。
  (1) すべの市民の人権が尊重され、地域社会が連携できるまちづくり
  (2)すべての市民が学ぶ喜びを持ち、生涯にわたって学習できるまちづくり
  (3)すべての市民が共に支えあい、健やかに暮らせるまちづくり
  (4)次世代を担うすべての子どもたちが夢と希望を抱き、健やかに成長できるまちづくり
  (5)歴史と伝統を継承し、感動を分かち合える文化を創造できるまちづくり
  (6)仕事を興し、地域産業に活力を与え、働く喜びを持てるまちづくり
  (7)自然と環境との共生を図り、安全・安心・快適な生活が営めるまちづくり
  2 市民と市は、まちづくりのために行動する市民を育みはぐく、多くの市民が共感できるまちづくりの推進に努めるものとする。

 

◆兵庫県養父市の「まちづくり基本条例」も紹介しましょう。

第2章 まちづくりの理念
(基本理念)
 第3条 まちづくりは、市民と市の相互の理解、信頼そして協働のもとに、次に掲げる事項を基本理念として進めます。
  (1) 一人ひとりの人権が尊重され、すべての市民が持てる能力を最大限に発揮できるまちづくり
  (2) 安全・安心に暮らせる、助けあい、支えあいのやさしいまちづくり
  (3) 子どもからお年寄りまですべての市民が、元気に健康で、夢と希望の持てる明るいまちづくり
  (4) 豊かな自然と歴史や伝統文化を大切にし、生かすことのできるまちづくり
  (5) 自然と共生しながら、元気な地場産業を育て、地域経済が循環し、発展していく活力のあるまちづくり

第3章 まちづくりの基本原則
(市民主体の原則)
 第4条 まちづくりの主体である市民一人ひとりは、しあわせに暮らすために自ら考え行動してまちづくりを進めます。
(相互協働の原則)
 第5条 市民と市は、市民相互及び市民と市の相互理解と信頼関係を築くように努め、それぞれの持つ情報の共有を図り、知恵と力を持ち寄り協働してまちづくりを進めます。
(地域尊重の原則)

 第6条 市民と市は、暮らしの基盤である地域コミュニティの個性と自主的な活動を尊重してまちづくりを進めます。

 

兵庫県養父市の場合、これまでご紹介した自治体に比べ、簡素な感じがしますが、同市は「第10章」として「まちづくりの基本施策」(第25~35条)も定めていますから、それと合わせて考えれば充実した部類に入るでしょう。

第10章 まちづくりの基本施策
 第1節 人権を尊重するまちづくり
(人権の尊重)
 第25条 市民と市は、国籍、年齢、性別、心身の状況、社会的又は経済的状況などの違いにかかわらず、それぞれの個性を尊重し、異なる価値観を認めあえるまちづくりに努めなければなりません。
      2 市は、すべての市民がそれぞれの個性と能力を最大限に発揮し、誇りを持って暮らせるまちの実現のため、必要な施策を講じなければなりません。

 第2節 安全で安心して暮らせるまちづくり
(安全安心の環境整備)
 第26条 市民と市は、安全で安心して暮らせるまちづくりを進めるため、関係機関との協力及び連携を図り、防災及び防犯のための環境整備に努めなければなりません。
(危機管理)
 第27条 市は、災害などに際して市民の身体、生命及び財産を守るため危機管理体制の確立に努めなければなりません。
  2 市民は、災害などに備えるとともに、お互いに助けあいます。
(健康に暮らせるまち)
  第28条 市は、保健、医療及び福祉の連携を進め、市民の健康を支えるための必要な環境整備に努めなければなりません。
       2 市民は、自分の健康は自分で守れるよう、主体的な健康づくりに努めます。

第3節 あらゆる人にやさしいまちづくり
(子どもにやさしいまち)
第29条 市民と市は、未来を担う子どもたちが、健やかに学び、心豊かに成長できるまちづくりを進めなければなりません。
           2 市は、安心して出産や子育てができる環境整備に努めなければなりません。
           3 市民は、地域で一体となり、子どもたちを育てます。
(高齢者や障害者にやさしいまち)
  第30条 市は、高齢者や障害者が自立して社会に参加し、生きがいをもって、安心して暮らせるまちの実現に努めなければなりません。
           2 市民は、地域で一体となり、高齢者や障害者を支えあいます。
(あらゆる人にやさしいまち)
  第31条 市民と市は、あらゆる人々が、利用しやすい施設の整備など容易かつ安全に移動や活動ができる環境整備に努めなければなりません。
           2 市は、市民の暮らしを支える身近な商業や公共交通などの維持確保及び利便性の向上のため市民と協力して必要な施策を講じなければなりません。

第4節 自然と歴史・文化を大切にするまちづくり
(自然と共生するまち)
  第32条 市民と市は、大切な共有財産である緑豊かな自然を守り、将来に引き継ぐことを責務とし、環境の保全に努めなければなりません。
           2 市は、市民、交流人及び観光客などと連携を深め、美しい山々や清流、そして生き物たちとの共生を進めるための必要な取組を進めなければなりません。
           3 市民は、日常の暮らしやさまざまな社会活動において、自然環境にやさしい生活に努めます。
(歴史、文化を守り創造するまち)
  第33条 市民と市は、豊かな心をはぐくむ歴史、文化及び伝統を守り育てるように努めなければなりません。
           2 市は、市民による歴史、伝統文化の保護及び継承活動並びに新たな文化創造活動に対して必要な支援をしなければなりません。

第5節 活力を生みだすまちづくり
(活力のあるまち)
  第34条 市民と市は、恵まれた地域資源とはぐくんできた経験を意欲的に生かした地域の振興に努めなければなりません。
           2 市は、市民と協力して、市民の暮らしの基盤である地域産業の振興及び後継者の育成並びに新たな産業の創造のために必要な施策を講じなければなりません。
(次世代を育てるまち)
  第35条 市民と市は、まちづくりは人づくりであるとの認識のもと、青少年の郷土愛をはぐくみ、のびのびと育つ教育環境の整備に努めなければなりません。
           2 市は、ふるさとを愛する次世代の育成に努めるとともに、若者が生き生きと働き暮らせる環境整備に努めなければなりません。

 

かなり幅広く盛り込んでいるように思うかもしれませんが、文京区において「まちづくり」を考える上で、どれもこれも大切に思えます。

 

文京区には「文の京」自治基本条例があると言っても、それはあくまで理念条例であってそれで十分都は言えず、文京区においても「まちづくり基本条例」のような「条例」も必要なことが分かるかと思います。(続く)

(2018年11月9日)

 

第34回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑬)

引き続き、全国の他の自治体で、まちづくりの「基本理念」や「基本原則」をどのように定めているか見ていきたいと思います。

 

なお、文京区には「文の京」自治基本条例があり、「自治の理念」は定めていますが、「まちづくりの基本理念」は定めていません。

 

「文京区基本構想」や「文京区都市マスタープラン」にも、「まちづくりの基本理念」や「基本原則」は出てきません。

 

◆最もコンパクトな部類に入るひとつとして、岐阜県輪之内町の「まちづくり基本条例」が挙げられます。

(まちづくりの基本理念と基本施策)
 第3条 まちづくりは、主体者である私たち町民と議会及び町が、それぞれに果たすべき責任と役割を分担しながら、相互に補完し協力して進めることを基本とし、次に掲げるまちづくりを推進するものとする。
  (1) 豊かな自然環境を大切にするとともに、環境問題を地球規模で捉え推進するまちづくり。
  (2) 危機管理意識を高く持ち、防犯・防災に強い安全・安心して暮らせるまちづくり。
  (3) 経済・産業が豊かで、町内に働く場がある環境を創出し、みんなが生き生きと働けるまちづくり。
  (4) 生涯現役で生きがいの溢れる生涯学習を推進するまちづくり。

 

「協働」の精神を謳った上で、まちづくりの原則的な基本政策を掲げています。

 

◆分かりやすい表現で「基本理念」と「基本原則」を盛り込んでいるのは北海道黒松内町の「みんなで歩むまちづくり条例」です。

 

(まちづくりの基本理念)
 第3条 人と自然が調和した質の高い環境のもと、誰もが健康で安心して暮らすことができるまちを、みんなで歩むまちづくりにより実現することを目指します。

(みんなで歩むまちづくりの基本原則)
 第4条 町民と町は、次の5原則に基づいてみんなで歩むまちづくりを進めます。
  (1) 主体性 まちづくりの主体は町民であることを認識し、まちづくりを進めます。
  (2) 平等性 町のすべての施策や事業を公平・公正を重視し、まちづくりに取り組みます。
  (3) 柔軟性 従来の発想にとらわれることなく、まちづくりを進めます。
  (4) 普遍性 町のすべての施策や事業を協働の観点から実施します。
  (5) 発展性 常にまちの未来を見据え 町政の発展を目指します。

 

黒松内町が打ち立てた「まちづくり」の5原則は、たとえ文京区でそのまま取り入れたとしても全く違和感がないように思います。

 

◆「基本方針」と「基本原則」の2本立てとなっているのは、埼玉県草加市の「みんなでまちづくり自治基本条例」です。

 

(基本方針)
 第3条 市民、市議会、市は、次の基本方針に基づいて、総合的・計画的・民主的にまちづくりに取り組みます。
  (1) すべての市民が参画できるまちづくりを進めます。
  (2) 市民の自立と自律によるまちづくりを進めます。
  (3) 市民主体のまちづくりを進めます。

(パートナーシップによるまちづくりの7つの原則)

 第4条 市民、市議会、市は、次の原則に基づいてパートナーシップによるまちづくりを進めます。
  (1) 主体性 主体性に基づいてまちづくりを進めます。
  (2) 対等性 対等の立場に立ってまちづくりに取り組みます。
  (3) 協調性 相手を尊重し、相手の立場や主張について理解します。
  (4) 柔軟性 従来の発想にとらわれることなく、自己改革を進めます。
  (5) 公開性 まちづくりに関する情報を広く公開し、共有します。
  (6) 普遍性 市のすべての施策や事業をパートナーシップの観点から実施します。
  (7) 発展性 従来の関係に安住することなく、さらに新しい関係への発展をめざします。

 

黒松内町と比較すると、草加市の場合は、原則において「協調性」と「公開性」が加わった形となっています。

 

文京区のまちづくり行政においては「公開性」が十分でないように見受けられますから、「要綱」を見直すにしても、新たに条例をつくる場合でも「まちづくりの原則」として「公開性」を盛り込む必要があるでしょう。(続く)

(2018年11月8日)

第33回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑫)

国の他の自治体で、まちづくりの「基本理念」や「基本原則」をどのように定めているでしょうか。

 

◆青森市は「まちづくり基本条例」の中で、「基本理念」と「基本原則」の両方を盛り込んでいます。

 

第二章 まちづくりの基本理念

 第四条 まちづくりの基本理念は、次に掲げるとおりとする。

  一 市民一人一人が市民全体のことを考えて行動すること。

  二 青森市民憲章を大切にすること。

  三 男女共同参画都市青森宣言を大切にすること。

  四 市民、議会及び市長等は、それぞれの立場及び役割を認めて協力すること。

  五 市民がまちづくりに参加できる環境を整えること。

  六 まちづくりを担う人材を育てること。

  七 自発性及び創造性のある意見を大切にすること。

  八 子どもが自分の意見を表明し、及びまちづくりに参加する環境を整えること。

第三章 まちづくりの基本原則

 第一節 市民参画

  (市民参画の確保と推進)

 第五条 市長等は、市民参画の機会の確保と推進を行うものとする。

 (附属機関)

 第六条 市長等は、市民参画の推進と公正で透明な開かれた市政の実現が図られるよう附属機関を設置し、運営するものとする。

 (市民意見の収集と尊重)

 第七条 市長等は、まちづくりに関する重要な政策等を決定しようとするとき、及びまちづくりに関する計画を策定し、又は変更しようとするときは、その政策等の検討過程において、適切な方法により市民の意見を収集するとともに、その市民意見を尊重し、可能な限り政策等に反映させるものとする。

 第二節 協働

 第八条 市民、議会及び市長等は、それぞれの立場、役割等を認め合い、信頼関係を築き、及び協働によるまちづくりを積極的に推進するものとする。

 第三節 情報共有等

  (情報の共有)

 第九条 議会及び市長等は、市民参画、協働及び市民公益活動によるまちづくりを推進するため、市民が必要とする情報を提供し、情報共有を図るものとする。

  2 市民は、議会及び市長等に対し、自らが保有しているまちづくりに関する情報の提供に努めるものとする。

  (個人情報の管理)

 第十条 議会及び市長等は、まちづくりに当たっては、青森市個人情報保護条例を遵守し、個人情報を適正に管理し、及び保護するものとする。

  2 市民は、まちづくりに当たっては、個人情報を適正に管理し、及び個人の権利利益の保護に努めるものとする。

 

◆北海道旭川市も「基本理念」と「基本原則」の両方を「まちづくり基本条例」の中で定めています。

 

第2章 基本理念及び基本原則

 (基本理念)

  第3条 旭川市が目指すまちづくりは,次の基本理念のとおりとする。

  (1) 市民等がいきいきと活躍できるまちづくり

市民等がそれぞれの経験と能力を発揮し,幅広い分野で充実した活動に取り組むこと。

  (2) 市民等が支え合いながら,安心して暮らせるまちづくり

市民等がそれぞれの役割を果たすとともに,互いに支え合う地域づくりに取り組むこと。

  (3) 地域資源をいかし,活力を向上させるまちづくり

地域の特徴や優位性の活用及び発信をしながら,将来にわたってまちの活力を維持し,更に高めるための活動に取り組むこと。

  (4) 北北海道における拠点性を発揮するまちづくり

北北海道全体の活性化を目指し,地理的特性や都市機能等をいかすとともに,他の機関との連携や相互の補完により,拠点性の向上に取り組むこと。

 (基本原則)

  第4条 旭川市のまちづくりは,次の基本原則のとおり進めるものとする。

  (1) 市民主体の原則

市民等及び市がまちづくりに関する情報を共有し,市民等の意思と力をいかしたまちづくりを推進すること。

  (2) 地域主体の原則

地域のつながりや特性をいかしたまちづくりを推進すること。

  (3) 健全な市政運営の原則

総合的かつ計画的に健全な市政を推進すること。

 

◆新潟県燕市も「まちづくり基本条例」の中で、両方を定めています。

 (まちづくりの基本理念)

 第3条 市民は、まちづくりの主体であり、市民が望む地域社会の実現を目指すため、市民、市議会及び市が一体となり、自らの積極的な意思でまちづくりに取り組むものとします。

  2 市民、市議会及び市は、人づくりを基本として、人を育て、人を活かし、人がふれあい、及び人が助け合うまちづくりを推進するものとします。

  3 市民、市議会及び市は、独自の魅力ある燕らしさを創り出すことを目指すとともに、地域の特性を尊重した自主的かつ自立的なまちづくりを推進するものとします。

(まちづくりの基本原則)

 第4条 市民、市議会及び市は、まちづくりの基本理念を実現するため、次に掲げる事項を基本原則としてまちづくりを進めるものとします。

  (1) 市民参画の機会が平等に保障されること。

  (2) 協働して公共的課題の解決に当たること。

  (3) 相互にまちづくりに関する情報を提供し、及び共有すること。

  (4) 人と人のつながりを大切にし、広く交流を深めること。

  (5) 市民一人一人の人権が尊重され、それぞれの個性及び能力が発揮されること。

 

青森市、旭川市、燕市を見てきましたが、いずれも文京区に置き換える(区民、区、区議会)ても、「文の京」自治基本条例や「文京区基本構想」、「文京区都市マスタープラン」で謳っているものと大きく異なることはないかと思います。

 

文京区らしい、そして文京区に相応しい形で「まちづくり基本条例」をつくり、その中にまちづくりの「基本理念」と「基本原則」の両方を盛り込むことが十分に可能であることが分かるのではないでしょうか。(続く)

(2018年11月7日)

 

第32回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑪)

昨日は大阪府堺市のケースしか紹介できませんでしたが、「まちづくり」の「基本理念」や「基本原則」について、全国の他の自治体がどのように定めているか、さらに見ていきたいと思います。

 

例えば大阪府伊丹市では、「まちづくり基本条例」を制定する前の「伊丹市まちづくり基本条例への市民提言」をHPに掲載しており、第3章として「まちづくりの基本理念」が示されています。

 

(1)市民主権をまちづくりの基本に位置づける

1 まちは市民のものということを改めて認識する

「まちは市民のもの」「まちは市民が育てるもの」といった市民主権(=市民がまちづくりの主人公)の精神のもとに、伊丹のまちは自分たちでつくるという市民自治の実現に向かって、進みたいと思います。

 

2 すべての市民がまちづくりに関わる権利を保障する

まちづくりは性別、年齢、社会的地位、心身の状況、思想信条、国籍等の違いに関わらずすべての人に開かれたものです。多様な立場や価値観をお互いに尊重し、すべての人々がまちづくりに関わる権利が保障されるべきです。

 

(2)役割を自覚し協働体制を構築する

1 みんなが主体的にまちづくりに関わっていく

市民自治を実現していくためには、市民ができることは市民で行い、市民ができないことは行政が担うという考えに基づいて、市民と行政がお互いにその役割を自覚し、適切に役割を分担しあい、それぞれがまちづくりに主体的に関わっていくことが大切です。

 

2 対等な関係を基本とする

真の市民自治のまちづくりは、市民と行政、市民同士それぞれがまちづくりのパートナーであり、常に対等な関係のもとに適切な役割を担って行なわれることが基本です。

 

3 相互理解からはじまる協働の仕組みをつくっていく

市民と行政が対等なパートナーとして、まちづくりを行うには、相互に支えあう協働の仕組みづくりが必要です。そのためには、お互いの役割と責任をよく理解し信頼関係を築いていくことが大切です。お互いに信頼関係が築かれたら、最初は対立するような問題であっても、何らかの解決策が発見できるでしょう。簡単に答えを出すのではなく、熟議を通じて、協調しあう関係を見出したいと思います。

 

(3)情報共有は協働の前提である

市民と行政が、対等なパートナーとして協働によるまちづくりを進めるためには、その前提としてまちづくりに関する情報を共有する必要があります。市民と行政は、まちづくりの立案段階から実行・評価にいたるまで、すべての情報を共有することが原則です。

 

ここに書いてあることは、「文の京」自治基本条例の中でも謳われていることであり、そう考えると仮に文京区において「まちづくりの基本理念」をつくる際にそんなに苦労することはしないでしょう。

 

「文の京」自治基本条例で謳っている「協働と協治」の精神・理念を、「まちづくり」に落とし込んでいけばいいわけです。

 

伊丹市のケースでは「まちづくり基本条例をつくる会」というものがあり、それは市長からの提言依頼によって組織され、公募委員15人と団体代表15人の計30人で構成されていたとのことです。

 

21回の全体会と17回の運営委員会を経て、市長に「まちづくり基本条例」の提言をしたそうです。

 

文京区において、まちづくりの「基本理念」をつくるにあたっても、区がつくった後で区民の意見を聞くのではなく、区民が区長に対する提言をつくって区が検討する形もあってもいいでしょうし、私たちとしてはそうあるべきだと思っています。(続く)

(2018年11月6日)

 

第31回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑩)

「まちづくり」の「基本理念」や「基本原則」について、全国の他の自治体はどのように定めているでしょうか。

 

例えば大阪府堺市は、「基本理念」の前に「基本視点」を置き、次のように説明しています。(かなり長くなりますが、とても参考になるので引用します)

 

同市は、「まちづくり」をすすめていくための基本となる総合的な視点として、次の4つを掲げます。

 

(1)「ひと」をまちづくりの中心とします

 いつの時代においても、都市の主役は人間です。そして、すべての人々の人権が尊重され、人間性豊かにくらすことができる都市を築くことは、将来にわたって変わることのない目標です。
 すべての人々が、人種、民族、国籍、信条、性別、門地などにかかわりなく、人間として等しく尊重され、平等が確保されていくなかで、一人ひとりの個性を発揮し、みずからの可能性を高め、希望と生きがいをもってくらすことができる社会をつくります。
 市民一人ひとりが、個性や能力を発揮しながら精神的な充実感をもって、社会のさまざまな分野で役割を担うことができる機会づくりをすすめます。
 市民がくらしやすく、やすらぎやうるおいを感じる「ひと」にやさ しいまち をつくります。

 

(2)生活の質を高めます

 人々の価値観は、物質的な豊かさを求めるだけでなく、より精神的な豊かさや充実感を求める方向にすすみつつあり、これからは、まちづくりの基軸を質の高い生活の実現をめざす方向へと転換することが必要です。
 市民生活の多様性や選択性を確保しながら、文化や教育、環境、産業、都市空間など、生活にかかわるさまざまな面の質を総合的に高めることによって、豊かさを実感できる成熟した都市をつくります。
 豊かな生活を実現する基本として、子どもから高齢者まですべての人々が共生し、安全で安心してくらすことができる地域社会をつくります。
 「健康にいきる」ことは、すべての市民共通の願いであり、生きがいのある豊かな人生を送るために大 切なもの です。健康都市宣言の趣旨のもとに、市民が健やかにくらすことができるより良い環境とまちをつくります。

 

(3)将来に向かって発展する基盤をつくります

 本市が、将来に向かって都市の活力を高め持続的に発展していくためには、創造性や感性豊かな人々や企業などが集まり交流する、個性的で魅力をもったまちをつくることが必要です。
 本市が誇る歴史文化や自然がまちと調和した、美しく文化の香り高い都市空間を形成し、いきいきとした市民活動や活力ある産業活動をはぐくみます。
内外との交流や連携をすすめることによって、人やまちの個性をみがき、創造性をかん養することによって都市機能を高め、大阪都市圏全体の発展を先導する、世界に開かれた都市をつくります。
 持続的な発展の条件となる地球環境の保全のために、市民の参加と協働によって、環境への負荷が少なく自然と共生する、環境にやさ しい循環 型社会をつくります。

 

(4)ともにまちをつくります

 まちづくりの主体である市民が、みずからのまちをみずからの創意と選択によって築いていくことができる市民自治のしくみを整え、堺市民が誇る自由と自治、進取の気風の伝統のもとに、市民の連帯に支えられた協働のまちづくりをすすめることが必要です。
 市民一人ひとりの住みよい地域づくりへの意欲や行動を尊重しあうとともに、市民のコミュニティ活動やまちづくり活動などが活発に展開される環境をつくります。また、市民だれもが、市政やまちづくりについて、知り、考え、行動できる市民参画の機会づくりをすすめます。
 生活やコミュニティの多様性と、生活や地域に根ざした発想や活動を尊重して、地域それぞれの特色あるまちづくりをすすめます 。
 市 民、行政をはじめまちづくりに参画する多様な主体が、それぞれの立場や役割、責任に応じて相互に協力関係を築き、ともにまちづくりをすすめます。

 

その上で同市は、次のように「まちづくりの基本理念」を定めています。

 

輝くひと やすらぐくらし にぎわうまち

ともにつくる自由都市・堺

 

 堺市のまちづくりの主役は、このまちに住み、働き、学び、憩うすべての人々です。

 

 自由と自治の伝統を受け継ぐわたくしたちは、創意と努力、情熱を結集して、愛すべき「わがまち堺」をともに築いていかなければなりません。

 

 このまちにくらし、つどうわたくしたちは、魅力あるまちを舞台に、未来への夢と希望をもって、一人ひとりが自分らしい生活文化を創造できる都市をめざします。また、堺市の輝かしい歴史や豊かな文化、自然などの資産や特性を活かし、高めながら、個性あるまちづくりをすすめることによって、人々がつどい交流し、都市活力をはぐくむ多彩な活動が展開される、創造性に満ちた都市をめざします。

 

 このような考え方に立って、 市民の参 加や協働のもとに、すべての人々がともに生き、豊かな生活文化を創造する活力に満ちた、地域それぞれの特色ある生活圏を形成します。また、人々が交流し、新しい文化や情報、産業をはぐくむ場としての求心力をもった、風格のある都心と躍動感に満ちた新都心を形成します。そして、大阪湾岸地域を基軸に圏域内外との交流と連携をすすめ、堺市が大阪都市圏の拠点都市として発展することをめざします。

 

 こうしたまちづくりをすすめることによって、分権を基調とする自治のもとに、自主性と自律性、個性と多様性をもつ自立した都市を築き、新時代の自由都市・堺として発展することを展望します。


 ここに、わたくしたちは、先人たちが築いてきた都市をいしずえとして、堺の未来をひらいていくためのまちづくりの基本理念を「輝くひと やすらぐくらし にぎわうまち ともにつくる自由都市・堺」と定めます。
 この基本理念のもとに、次のまちづくりの目標を設定します。

 

ちなみに、この「基本視点」と「基本理念」を掲載しているページの担当は堺市の都市計画部門ではありません。「市長公室 企画部 政策企画担当」となっています。

 

文京区としても、こうした先例に学ぶところは学び、文京に相応しい、しっかりした「要綱」あるいは「条例」をつくってほしいと思います。(続く)

(2018年11月5日)

 

第30回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑨)

前回は、文京区では「条例」や「要綱」の中で、「まちづくり」という言葉の定義が明確に記載されていない現状を指摘したわけですが、それもあってか文京区では「まちづくり」の「基本理念」や「基本原則」についても特に定められていません。

 

文京区基本構想」には次のような表現が出てきます。

 

「みんなが主役のまちづくりを浸透させていきます」

「ひとにやさしいまちづくり

「身近な場所で自然に親しむことのできるまちづくり

「それぞれの地域の特性を活かした地域主体のまちづくりを進めます」

「安全に安心して暮らせるまちづくり

「協働によるまちづくりを進める」

 

一方、「文京区都市マスタープラン」には下記の表現が出てきます。

 

「安全で快適な魅力あふれるまちづくりをめざして」

「『豊かな緑と変化に富んだ地形のなかに、歴史と文化が香るまち』の魅力を次世代に継承できるようなまちづくり

「文京区に住み、働く人がまちに魅力を感じ、誇ることができ、そして区外から訪れたいと思ってもらえるようなまちづくり

「区民等と区の協働により、文京区の魅力を生かしながら、安全で快適なまちづくりを進める」

「魅力を生かすまちづくり

「周辺と調和する土地利用や、環境に配慮したまちづくりを誘導します」

「より暮らしやすく快適な地域のまちづくり

「災害に強いまちづくり

「区民等と区との協働で防災性の向上や、まちの死角を無くすなどの防犯まちづくり

「犯罪が起きにくい安全なまちづくり

「体系的な景観まちづくり」

「高次の都市機能がコンパクトに集積するまちづくり

「戦略的かつ効果的なまちづくり

 

また「文京区都市マスタープラン」では「まちづくりの目標」を次のように設定しています。

 

~協働で次世代に引き継ぐ~安全で快適な魅力あふれるまちづくり」--。

 

しかし、「まちづくりの目標」はあくまで「目標」であって(「目標」でしかなく)、「まちづくり」の「基本理念」や「基本原則」とは根本的に違います。

 

「基本理念」や「基本原則」を定めた上で、「目標」を設定するのが本来の姿ですが、文京区はそうなっていません。

 

これだけ多種多様な「まちづくり」の言葉の使い方をしているわけですから、その前提となる「まちづくり」の「基本理念」や「基本原則」を定めておく必要性があるでしょう。


私たちとしては、「まちづくり」の定義をしっかり定めた上で、「まちづくり」の「基本理念」と「基本原則」も明確にすることが必要であると考えています。(続く)

(2018年11月4日)

 

第29回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑧)

文京区の「文京区まちづくり推進要綱」の第2条(定義)では、3つの用語について定めており、2番目に出てくるのは「団体」、3番目に出てくるのが「まちづくりコンサルタント」です。

 

○団体・・・まちづくりに係わる活動(以下「まちづくり活動)という。)を行う区民等の組織をいう。

○まちづくりコンサルタント・・・文京区まちづくりコンサルタント派遣要綱(以下「派遣要綱」という。第4条第1項の規定により区に登録されたものをいう。

 

ここで、区民として最も気になるのは文京区において「まちづくり」とは何か?ということですが、その一番重要な言葉が明確に定義されていないのです。

 

の京」自治基本条例にもありませんし、「文京区安全・安心まちづくり条例」にも出てきません。

 

文京区では、「まちづくり」の定義をしていないにもかかわらず、「推進要綱」があるという奇妙な形になっていることが分かります。

 

では、他の自治体はどうなっているでしょうか。

 

例えば「名古屋市地域まちづくり推進要綱」は「地域まちづくり」について、次のように定義しています。


「地域まちづくり地域において、 地域住民等、その他多様な主体が、より良い環境 を築き、地域の価値向上させるために行う 、地域の資源や特性を活かした自発的・ 自立的な市街地の形成・維持改善及び活用に関する取組をいう 」--。

 

最近、施行された例で見ると、山梨県上野原市の「まちづくり基本条例」(平成29年4月1日施行)では、「明るく豊かで活力に満ちた地域社会の実現に向けた活動及び事業をいう」と定めています。

 

秋田県大仙市の「だいせんまちづくり基本条例」(平成28年10月1日施行)では、「市民、議会及び市が、豊かで安心して暮らすことができるまち、活力あるまちをつくるために行う公共的活動をいいます」と定めています。

 

福岡県大牟田市の「協働のまちづくり推進条例」では、「協働のまちづくり」の定義として、「市民等及び市がそれぞれに自己の責任と役割を認識し、相互に補完し、及び協力し合うことによって、自助、共助及び公助の取組による住み良い地域社会を創造することをいう」と記載しています。

 

滋賀県甲賀市の「まちづくり基本条例」は、「まちづくり」の定義を、「第4条に掲げるまちの姿を実現するために行われる全ての活動をいいます」とした上で、第4条において、次のように定めています。

 

第4条 市民、議会及び市長等は、まちづくりの担い手として、自ら輝く未来のために次に掲げる本市のあるべき姿を考え、その実現に向けて行動します。

 (1) 誰もが等しく個人として尊厳及び権利が守られるまち

 (2) それぞれの地域の特性を生かしながら、時代の変化に対応できる活力のあるまち

 (3) 誰もが地域で社会生活を営み、互いに支え合って安心して暮らすことができる福祉のいきとどいた住みよいまち

 

北海道恵庭市の「まちづくり基本条例」は、「まちづくり」について「施設整備ばかりでなく、愛情と温もりのある家庭、市民団体の自由活発な活動や町内会活動など地域における思いやりや支え合い、家庭や学校と地域が一体となった子育てなど、市民が快適で幸せに暮らすためのすべての活動をいいます」としています。

 

愛知県碧南市の「協働のまちづくりに関する基本条例」では、「碧南市をより住みやすいまちにしていくために、市民及び行政が行うあらゆる活動をいう。ただし、次ぐに掲げるものを除く」とし、除外対象として次のア~オを明記しています。

 

ア 営利を目的とする活動等
イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを目的とする活動等
ウ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動等
エ 特定の公職(公職選挙法(昭和25年法律第100号)第3条に規定する公職をいう。以下この号において同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とする活動等
オ 公の秩序又は善良な風俗を乱すおそれがある活動等

 

一方、「まちづくり」に関する比較的簡素で簡潔な定義付けとしては、下記のような例が挙げられるでしょう。

 

○活力ある住みよい地域社会をつくることをいう(青森市まちづくり基本条例)

○自分たちが住みよく、安心して暮らせるまちをつくるための活動をいいます(宮城県加美町まちづくり基本条例)

○より良い羽島市を実現するために行う活動をいいます(岐阜県羽鳥市まちづくり基本条例)

○「すべての市民が住んで良かったと思えるまち」にしていくための、あらゆる活動及び事業をいいます(千葉県茂原市まちづくり基本条例)

○住みよい地域社会を目指す取組をいう(岐阜県山県市まちづくり基本条例)

○地域をより良いものとするための様々な分野における取組みをいいます(長崎市よかまちづくり基本条例)

○釧路市における公共の福祉の増進を目的とする全ての活動をいう(釧路市まちづくり基本条例)

○市民が幸せに暮らせるより良いまちを創るための取組及び活動をいう(茨城県龍ケ崎市まちづくり基本条例)

○安全、安心で快適に暮らすことのできる地域社会をつくるための、あらゆる活動をいいます(石川県野々市市まちづくり基本条例)

○快適な生活環境の確保、地域社会における安全及び安心の推進など、暮らしやすいまちを実現するための公共的な活動の総体をいう(沖縄県南風原町まちづくり基本条例)

○市民生活に係る様々な地域社会の課題を解決し、より良い地域社会を構築するための取組をいいます(北海道岩見沢市まちづくり基本条例)

○住みよい十日町市を実現するために行われる全ての取組をいう(新潟県十日市町まちづくり基本条例)

○市民等及び市が,それぞれの役割と責務を踏まえて,魅力的で快適なまちを築くための活動をいう(北海道旭川市まちづくり基本条例)

○市民一人ひとりが夢及び生きがいを持って安心して暮らせるなど,住みよいまちをつくるために行われる公共的な活動をいいます(三重県鈴鹿市まちづくり基本条例)

○安全で安心な暮らしやすい地域社会をつくり、市民の快適な生活環境を確保するための活動の総体をいう(石川県七尾市まちづくり基本条例)

○自然環境、伝統文化等を活かした住みよいまち及び豊かな地域社会をつくることをいう(富山県南砺市まちづくり基本条例)

○みんなが安心して生きがいを持って暮らし、町外の人も訪れ、住みたくなる、魅力あふれる庄内町をつくり続ける活動をいいます(山形県庄内町みんなが主役のまちづくり基本条例)

○市民が幸せに安心して暮らせるまちをつくるための活動および事業を意味します(広島県庄原市まちづくり基本条例)

○市民生活に係る様々な分野において、わたしたちの暮らす地域等をより良いものとするための取り組みをいいます(岐阜県瑞穂市まちづくり基本条例)

○市民誰もが幸せに安心して暮らせる住みよいまちを実現するための公共的な活動をいう(新潟県阿賀野市まちづくり基本条例)

○四万十町の目指す将来像を実現するための取り組みをいいます(高知県四万十町まちづくり基本条例)

○公共の福祉を増進し、町民の幸福を実現するために行われる町政及び全ての公益的な取り組みをいう(新潟県湯沢町まちづくり基本条例)

○町をより良い姿にしていくために、住民、行政及び議会が取り組む活動をいう(長野県上松町まちづくり基本条例)

○豊かで住みよい魅力と活力にあふれた地域社会を創るため、地域の公共的課題を解決していく営みをいいます(新潟県燕市まちづくり基本条例)

○よりよい地域社会を実現するための行動や取り組みをいいます(岐阜県垂井町まちづくり基本条例)

○町民及び町が、互いに尊敬し合い、助け合い、主体となり、自分たちの役割に合った責任を持ち、町民と町の将来を考え行う公共的な活動をいいます(北海道新十津川町まちづくり基本条例)

 

全国各自治体は「まちづくり」の定義をしたうえで、「条例」や「要綱」をつくり、支援策を講じているわけですから、文京区においてもこれに倣わない手はないのではないでしょうか。(続く)

(2018年11月2日)

 

第28回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑦)

文京区の「文京区まちづくり推進要綱」の第2条(定義)では3つの用語について定めています。

 

まず出てくるのが「区民等」であり、以下のように定義付けしています。

 

「文京区に居住する者又は文京区の区域内の土地若しくは建物に関する所有権、借地権(借地借家法第2条第1号に規定する借地権のことをいう。)若しくは借家権(建物の賃借権をいう。)を有する者をいう」--。

 

では、他の自治体はどうでしょうか。

 

例えば福岡県太宰府市の「協働のまちづくり推進条例」(平成28年4月1日施行)は「市民」と「市民等」を分けて定義付けしています。

 

○市民・・・市内に居住する者及び市内に通勤し、又は通学する者をいう。

○市民等・・・市民並びに市内で事業を営み、又は活動する個人及び法人その他の団体をいう。

 

※ちなみに、「文の京」自治基本条例では、下記のように「区民等」と「区民」を分けて定義付けしています。

 

○区民等・・・区民、地域活動団体、非営利活動団体及び事業者をいう。

○区民・・・区内に住む人、働く人及び学ぶ人をいう。

 

名古屋市の「地域まちづくり推進要綱」は、「市民等」と「地域住民等」を分けています。

 

○市民等・・・市内において、居住する者事業を営む土地若しくは建物等所有る者又は地域まちづくりに関する活動を行う 者をいう。
○地域住民等・・・市内の地域まちづくりが行われている又は行われようとしている地域において、居住する者、事業を営む又は土地若しくは建物等を所有する者をいう 。

 

高知県土佐清水市の「みんなでまちづくり条例」は、「市民 市内に住所を有する人、市内で働く人、市内で学ぶ人、市内で活動する人及び団体並びに市内で事業を営む人をいいます」とした上で、「解説」として以下のように説明しています。

 

「自治に関する様々な活動には、土佐清水市に住所を有する市民に限らず、市内で活動する人たちの協力も不可欠であることかrた、幅広く市民を定義しています(外国籍の市民も含みます)」--。

 

兵庫県尼崎市の「自治のまちづくり条例」も同様です。

 

「市民等」を「市民(本市の区域内に住所若しくは勤務場所を有し、又は本市の区域内に存する学校等に通学する者をいう。以下同じ。)、事業者及び市民活動団体等をいう」とした上で、次のように解説しています。

 

「市民等」は、本市の区域内に住所を有している人のほか、市内通勤する人や通学する人、さらに、市内の事業者・市民活動団体等としています。これは、地域社会が抱える様々な課題の解決やまちづくりを進めていくためには、本市に関係する幅広い人々の参画と協働が必要であるという考えからです」--。

 

こうして他の自治体の「条例」や「要綱」の定義と比較してみて、果たして文京区の「区民等」の定義が「まちづくり」に関する「推進要綱」において、最も相応しく適切であると言えるでしょうか。

 

「まちづくり基本条例」だけでなく、全国の自治体の「自治基本条例」も合わせれば370以上の事例が学べるわけですから、「要綱」で使う言葉の定義付けにおいても、しっかり先例に学んで見直していくことが必要だと思います。(続く)

(2018年11月1日)

 

第27回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑥)

文京区の「文京区まちづくり推進要綱」の第1条(目的)には次のように書いてあります。

 

「この要綱は、文京区都市マスタープランを踏まえ、整備又は保全の必要性のある区域(以下「まちづくり推進対象区域」という。)について、区民等とともに安全で快適なまちづくりを推進することを目的とする」--。

 

これに対して「品川区まちづくり推進要綱」はどうなっているかというと、第1条(目的)には次のようになっています。

 

「この要綱は、区民の自主的なまちづくり活動を援助することにより、地域の特性に応じた生活環境の改善および都市機能の更新を促進し、もって活力ある緑豊かな住みよいまちづくりの実現に寄与することを目的とする」--。

 

文京区の「推進要綱」は、いきなり「文京区都市マスタープラン」が出て来るあたりに、いわゆる“行政主導”のまちづくりのイメージが色濃い印象を受けますが、品川区の場合は冒頭から、「区民の自主的なまちづくり活動を援助する」と謳っており、対照的です。

 

次に、文京区の「推進要綱」が、あくまで「整備又は保全の必要性のある区域(以下「まちづくり推進対象区域」という。)」を対象にしているのに対して(たとえ区が「まちづくり推進対象区域」を柔軟に設定できるとしても…)、品川区の場合はそうした「括り」を設定しておらず、やはり対照的です。

 

「まちづくり」の主体は誰なのでしょうか。

 

文京区の場合、「区民等とともに…」と書いていますから、主語(=主体)は「区」であると読み取れます。

 

これに対して品川区の場合は「区民の自主的なまちづくり活動を援助することにより…」と書いてありますから、主体は「区民」であり、それを「区」が「援助する」という構図であることが分かります。

 

「まちづくり」の方向性はどうでしょうか。

 

文京区は「安全で快適なまちづくり」、品川区は「活力ある緑豊かな住みよいまちづくり」…

 

文京区は「推進することを目的とする」にとどまっていますが、品川区の場合は「実現に寄与することを目的とする」となっており、文京区より一歩踏み込んだ表現を使っており、区の熱意と決意がうかがえます。

 

「文京区まちづくり推進要綱」の見直しにあたっては(条例化を検討するにしても…)、まず「前文」を置くとともに、第1条(目的)はもっと区のまちづくりにかける熱意と決意、覚悟が区民に伝わる表現にしてほしいと思います。(続く)

(2018年10月31日)

 

第26回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える⑤)

「文京区まちづくり推進要綱」の中身について具体的に見ていきたいと思います。

 

まず、文京区のこの「推進要綱」は5条から成っていますが、他の自治体はどうなっているでしょうか。

 

例えば東京都の特別区では、品川区が「品川区まちづくり推進要綱」を制定していますが、25条ありますから、文京区の「推進要綱」は品川区の5分の1ということになります。

 

名古屋市は「名古屋市地域まちづくり推進要綱」を制定していますが、22条で構成していますから、文京区はその4分の1以下となっているわけです。

 

条例の項目数が多ければいいというわけではもちろんありません。

 

ただ、5条でどれだけ文京区の「まちづくり」を「推進」できるというのでしょうか……。区民として素朴な疑問を抱いてしまいます。

 

文京区の「推進要綱」は、第1条として「目的」があり、「品川区」も同じですが、名古屋市の場合は「前文」も置いており、そこにはこう書いてあります。

 

本市では、これまで行政主体のハードを中心としたまちづくりや、面的な規制・誘導など全市的な視点でのまちづくりが進められてきたが、今後は、これらの取組に加え、地域ごとの課題や魅力を踏まえたまちの将来像を地域で共有し、まちづくりの計画・ルールづくりから将来にわたる施設等の活用・管理などを、多様な主体が協力しながら進めていくことが求められている


地域住民等が中心となって、行政等の関係団体と協力しながら、自主的・自発的に、まちづくり構想の策定や構想に基づく実践を展開し、さらにその動きがエリアマネジメントなどの自立的・継続的な取組へとつながることで、市内の各地域が特色を持ったまちへと持続的に発展することができる


本市は、このような地域まちづくりの必要性の高まりについての認識を市民等と共有し、 多様な主体が一体となって地域まちづくりを推進するため、本要綱を制定するものである」--。

 

簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民としては、「文の京」のまちづくりを進めるという観点からも、「推進要綱」にしっかりとした「前文」を置いてほしかったと思っています。(これからでも入れてほしいと思います)

文京区の「まちづくり」に何が求められているのか--。

文京区はどのような認識を持って「まちづくり」を進めようとしているのか--。

文京区は「協働・協治」の精神・理念をどのように「まちづくり」でも反映させようとしているのか--。

 

これらの「目的」の部分を、丁寧に詳しく、そして明確に打ち出してもらいたいと思っています。(続く)

(2018年10月30日)

 

第25回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える④)

「文京区まちづくり推進要綱」の最後の改正があった平成16(2004)年6月2日から14年間--。

 

文京区を除く東京22特別区では「まちづくり基本条例」やそれに準じた条例の施行を巡り、どのような動きがあったでしょうか。

 

行年月日順に並べると以下のようになります。

 

◆足立区まちづくり推進条例(平成17年9月1日施行)

http://www.city.adachi.tokyo.jp/reiki/417901010030000000MH/417901010030000000MH/417901010030000000MH.html

https://www.city.adachi.tokyo.jp/toshi/machi/machizukuri/documents/jyourei.pdf

 

◆渋谷区まちづくり条例(平成17年11月1日施行)

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/reiki_int/reiki_honbun/g114RG00000619.html

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/reiki_int/reiki_honbun/g114RG00000620.html

 

◆練馬区まちづくり条例(平成18年4月1日施行)

https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/machi/jorei/index.html

https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/machi/jorei/index.files/270401jorei.pdf

 

◆葛飾区区民参加による街づくり推進条例(平成19年4 月1日施行)

http://www.city.katsushika.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/777/10181-3.pdf

http://www.city.katsushika.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/777/10181-4.pdf

 

◆港区まちづくり条例(平成19年10月1日施行)

https://www.city.minato.tokyo.jp/reiki/reiki_honbun/g104RG00001717.html

https://www.city.minato.tokyo.jp/reiki/reiki_honbun/g104RG00001719.html

 

◆目黒区まちづくり条例(平成19年10月1日施行)

http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/sumai/katsudo/mijika.files/jourei.pdf

http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/sumai/katsudo/mijika.files/sekoukisoku.pdf

 

◆墨田区まちづくり条例(平成21年3月30日施行)

https://www.city.sumida.lg.jp/reiki_int/reiki_honbun/g108RG00001216.html

 

◆中野区地区まちづくり条例(平成23年10月1日施行)

http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/481000/d013553.html

中野区地区まちづくり活動支援要綱

http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/481000/d013553_d/fil/youkou.pdf

 

◆中央区街づくり基本条例(平成24年4月1日施行)

 

◆豊島区街づくり推進条例(平成26年3月25日施行)

http://www.city.toshima.lg.jp/295/machizukuri/toshikekaku/shisaku/toshikekaku/006097.html

http://www1.g-reiki.net/toshima/reiki_honbun/l600RG00000644.html

http://www1.g-reiki.net/toshima/reiki_honbun/l600RG00000652.html

 

◆地域力を生かした大田区まちづくり条例(平成30年4月1日施行)

https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/machizukuri/about_jyourei/machijyorei201206.html

 

文京区が「まちづくり推進要綱」の改正をしないでいる間に、足立区、渋谷区、練馬区、葛飾区、港区、目黒区、墨田区、中野区、中央区、豊島区、大田区という、ちょうど半分(文京区を除く)にあたる11特別区において、「まちづくり基本条例」やそれに準じた条例が制定・施行されてきたことが分かります。

 

もちろん、文京区の他にも「まちづくり条例」を施行していない特別区はありますし、上記11特別区においては制定・施行の必要性はあったけれど、文京区においては必要なかったという主張も成り立ちます。

 

ただ、その主張が正しいか正し くないかは、過去14年間における文京区の「まちづくり」の状況をつぶさに検証する必要があるでしょう。

 

過去14年間において、文京区の「まちづくり」は本当に、「まちづくり推進要綱」で十分だったのでしょうか。

 

「推進要綱」の改正や条例化は本当に必要なかったのでしょうか。

 

区や区議会でどのような議論があったのか含め、検証する必要があると思っています。(続く)

(2018年10月29日)

 

第24回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える③)

「文京区まちづくり推進要綱」の最後の改正があった平成16(2004)年から14年間--。

 

この14年間を全国の自治体における「まちづくり基本条例」の歩みと重ねて見てみましょう。

 

最後の改正の3年前となる平成13(2001)年、北海道ニセコ町が全国でも先駆けとなる「まちづくり基本条例」をつくっていました。


その後、東京都の市では清瀬市、特別区では杉並区が平成15(2003)年につくりました。

 

文京区が「文京区まちづくり推進要綱」の最後の改正を行った平成16(2004)年7月までには、全国16の自治体において「自治基本条例」や「まちづくり基本条例」がつくられ(注1)、「自治基本条例」いう意味では文京区も平成17(2005)年に「文の京」自治基本条例を施行しています。

 

全国の自治体における「自治基本条例」や「まちづくり基本条例」の制定状況はというと、現在371自治体で制定されており(注2)、「文京区まちづくり推進要綱」が最後に改正された平成16(2004)年7月以降に限っても355の自治体で新たにつくられているのです。

 

何が言いたいのかというと、文京区において「推進要綱」の状態で、しかも最後の改正から14年間経つ間に、全国では355の自治体で「自治基本条例」や「まちづくり基本条例」の制定の動きがあったことになります。

 

371自治体のうちの355自治体は96%に当たりますから、言い換えれば「文京区まちづくり推進要綱」の最後の改正から14年が経過する間に「条例」制定の動きが集中していることを意味します。

 

もちろん、文京区においても理念条例としての「文の京」自治基本条例を平成17(2005)年4月に施行しています。


しかし、その一方で「文京区まちづくり推進要綱」は平成16(2004)年以降、14年間そのままの状態で、手を加えずに置かれることになりました。

 

本当に改正の必要がなかったのでしょうか…。

 

私たちは検証する必要性があるのではないかと考えています。(続く)


注1)NPO法人公共政策研究所の「全国の自治基本条例一覧」

注2)NPO法人公共政策研究所の「全国の自治基本条例一覧」の5月14更新時点

(2018年10月27日)

 

第23回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える②)

前回、紹介したように、「文京区まちづくり推進要綱」は昭和63(1988)年に決定され、その3年後に1回目の改正、その7年後に2回目の改正、その2年後に3回目の改正を経て、さらにその4年後に4回目の改正がありました。

 

しかし、平成16(2004)年を最後に、14年間も改正されていません。

 

区民として一番関心があるのは「改正する必要がなかったからしなかったのか?」、それとも「改正の必要はあったけれどしなかったのか?」という1点に尽きます。

 

もちろん、「必要性」は主観の問題であり、評価の仕方によって変わります。区民が「必要だ」と思っても、区として「必要ない」という判断も当然あるでしょう。

 

ただ一方で、文京区においての14年間を振り返る時、「まちづくり」の分野において何ひとつ問題が起こらず、区民からの要望も何ひとつ出ず、「文京区まちづくり推進要綱」の改正の必要性が全くなかったとも思えないのです。

 

ちなみに、この「要綱」が決定されたのは昭和63(1988)年ですから、故遠藤区長の時代であり、その後の2回の改正も同区長時代に行われたことになります。

 

そして、3回目と4回目の改正は煙山前区長時代であり、2007年に成澤現区長に代わってからは改正が行われなくなりました。

 

これがたまたまなのか、区の「まちづくり」に関する施政方針と何らかの関係があってのことなのかは、改めて検証しなければ分かりませんが、結果として14年間、改正が行われずに今日に至っていることは事実なのです。(続く)

(2018年10月26日)

 

第22回:文京区の「まちづくり支援策」(まちづくり推進要綱を考える①)

文京区のHPには掲載されていませんが、文京区には「文京区まちづくり推進要綱」があります。

 

いつできたか記録を辿ると、「昭和63年7月30日決定」と書いてあります。

 

昭和63年というと1988年ですから、ちょうど30年前ということになります。

 

今日まで改正は4回行われていますが、それは平成3(1991)年、平成10(1998)年、平成12(2000)年、平成16(2004)年であり、直近の改正から丸14年が経っています。

 

「推進要綱」の中身に入る前に、私たちがとても残念に思うのは、区のHPに掲載されていないことです(リンクも貼っていません)。

 

文京区のHPには「文京区例規集について」というページがあり、そこには次のように書いてあります。

 

「文京区の条例や規則などの情報を、多くの方が自由に入手できるようにするために、文京区では、条例や規則などをデータベース化し、インターネットで公開しています」

 

「文京区例規集システム画面へ(外部ページにリンクします)」--。

 

「文京区まちづくり推進要綱」は条例でないので掲載していないのかとも思いましたが、他の分野では要綱や規則も掲載されています。

 

どうして「文京区まちづくり推進要綱」は区のHPや文京区例規集において情報開示しないのでしょうか。

 

区民としてはこの素朴な疑問から答えてほしいところです。(続く)

(2018年10月25日)

 

第21回:文京区の「まちづくり支援策」(区民からの提案⑤)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」にある3番目の項目「文京お届け講座」について考えます。

 

この連載の11~12回でも取り上げましたが、「文京お届け講座」のところには次のように書いてあります。

 

 ~みんなで創り、みんなで守る住みよいまち~

区民の方を中心とする団体・グループの学習会に区の職員等が出向き、まちづくりのルールの紹介やルールづくりの進め方などについてお話しするものです。

 

しかし、これは「平成30年度お届け講座テーマ一覧」の45番目(全部で76講座)に入っているものです。

 

「文京お届け講座」のテーマのひとつを敢えて独立した項目として掲載しているのは「地域整備課まちづくり担当」だけといっても過言ではありません。

 

他の全ての部課のページにおいても、76講座がひとつひとつ紹介されているわけではないだけに、逆に目立つ恰好になっています。

 

つまり、他の部課では取り上げていないような講座を、都市計画部地域整備課だけ敢えて取り上げて紹介するところに“枯れ木も山のにぎわい”的なものを感じざるを得ないというわけです。

 

確かに「まちづくり」は言葉としてはひらがなだけですし、抽象的なイメージとしては何となく分かるかもしれません。

 

ですが、「まちづくり」は、実際には極めて幅広く、奥深く、そして専門的な領域であることも事実です。

 

そうであるなら、わざわざ取って付けたように、「文京お届け講座」を持ってくるのではなく、都市計画部として独自の”出前講座”的なものを揃えてもいいのではないでしょうか。

 

例えば、以下のような講座はどうでしょうか。

 

○「協働・協治」のまちづくりを考える

○文京区民の区民による区民のためのまちづくりを目指して

○「いいまちにしていきたい」~まちづくりの仲間づくり

○「住環境を守りたい」~まちづくりの組織づくり

○区民の手で守り育て育むまちづくり

○まちづくりにおけるルールのメリット・デメリット

○地元だけの「まちづくり憲章」をつくってみよう

○まちづくりにおける合意形成のノウハウを学ぶ

○まちづくりへの「防犯」「防災」「防疫」の視点の取り込み方

○「建築協定」のつくり方、結び方、生かし方

○「地区計画」について考える(初級編/中級編/上級編)

○想定を超える自然災害に強いまちづくりのために

○防災・減災のまちづくりのために地元区民でできること

○大規模災害に備えたまちづくり~早期復旧・復興に必要な対策

○持続可能なまちづくりを考える

○まちづくりで自然を守る、みどりを守る

○「文の京」のまちづくりの歴史を振り返る

○区民で取り組むバリアフリーのまちづくり

○ダイバーシティとまちづくり

○SDGsを通して見た「文の京」のまちづくり

○50年後、100年後の「文の京」のまちづくりを考える

○子育て世代・高齢者に優しいまちづくりを目指して

○助け合い、支え合い、励まし合いのまちづくり

○快適なまち、癒やされるまち、憩えるまちをつくるために

○まちづくりにおける区民の役割、区の役割、区議の役割

○中学生・高校生とともに考える「文の京」のまちづくり

○親子で考える「文の京」のまちづくり

○高齢者の視点を生かしたまちづくりを考える

○景観まちづくりの今と将来

○健康づくりを意識したまちづくり--など

 

いち区民の素人考えですが、ざっと考えただけでもこれだけ出てきます。

 

こうしたメニューを提示することで、少なくとも区が区民に対し、「まちづくり」の手を差し伸べようとしている姿勢が区民に伝わると思います。

(2018年10月24日)

 

第20回:文京区の「まちづくり支援策」(区民からの提案④)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」に出てくる「まちづくり協議会への支援」について引き続き考えたいと思います。

 

が認定した「まちづくり協議会」、そしてそうした「協議会」が作った「まちづくり基本計画」は、確かに区のHP(まちづくり基本計画等>まちづくり基本計画)で公表されています。

 

しかし、このページの冒頭に説明があるように、「文京区では総合的なまちづくりのガイドラインである『文京区都市マスタープラン』の実現性を高め、文京区のシンボルゾーンの早期形成を図るため、拠点地区に位置づけられた地区について、まちづくり基本計画を策定」しています。

 

これは、いわゆる”行政主導”の「まちづくり」であり、「まちづくり基本計画」と言えるでしょう。(もちろん、その根底には地元区民の要請や要望もあるかとは思いますが…)

 

これに対して、簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民が求めているのは、「拠点地区に位置づけられた地区」以外も含めた「まちづくり」の組織・団体を幅広く認定していくことなのです。

 

「拠点地区に位置づけられた地区」であるかどうか、分け隔てすることなく、同じような制度・仕組みのもとで、「まちづくり」の初期段階から支援・後押しする制度や仕組みを求めています。(後からどんどん「拠点地区」に位置づける、あるいは「拠点地区」に準じた位置づけとすることも可能ですが…)

 

区のHPを読む限り、現状においては、いわゆる“行政主導”による「まちづくり協議会」とその計画内容が紹介されているだけに映りますが、区民がそうした印象を受けないような制度・仕組みとし、それをまちづくりの段階ごとに区のHPで公表するようにしてほしいということなのです。

 

「活動に要する経費」の助成のあり方も、組織・団体の活動内容やまちづくりの段階に応じてきめ細かいものになるかと思います。

 

そうしていかない限り、私たちのような団体はいつまでも支援を受けることなく、地元区民が勝手に取り組んでいるだけの「まちづくり」で終わってしまうことになりかねないのです。(続く)

(2018年10月23日)

 

第19回:文京区の「まちづくり支援策」(区民からの提案③)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」にある「まちづくり協議会への支援」について考えてみたいと思います。

 

まず、この項目のタイトルは変えるべきではないでしょうか。

 

なぜなら、これでは「まちづくり協議会」だけにしか支援しないことになり(現状、文京区としてはそういう意向なのかと思われますが…)、「まちづくり協議会」以外の団体に対する支援に門戸を閉しているかのように映るからです。

 

簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民が求めているのは、初期段階あるいはスタートアップの組織・団体から、いわゆる「地区計画」を目指す「まちづくり協議会」まで幅広くフォローする制度や仕組みです

 

もちろん、「区の認定」を必要とする点では全く異論はありませんが、その認定対象の組織・団体が現状では極めて狭義(少なくとも「協議会」という名称を見る限り…)と思わざるを得ません。

 

それに、現状では「区から認定を受けた『まちづくり協議会』」となっていますが、「まちづくり協議会」の認定基準は区のHP上で公表されていません。

 

文京区が言うところの「まちづくり協議会」なる組織の定義も不明なら、資格・要件も不明です。

 

これでは区民は混乱するだけです。

 

区民の立場、区民の目線における「情報開示」が欠かせないのではないでしょうか。

 

次に、「まちづくり協議会への支援」の説明ですが、現状は以下のようになっています。

 

「区民のみなさんで構成されており、区から認定を受けた『まちづくり協議会』に対して、活動に要する経費の一部を助成します」--。

 

確かに簡潔に説明すればこうなるのかもしれませんが、私たちとしてはこの部分について次のように変えたらどうかと思っています。

 

「区民のみなさんで構成されており、区から認定(認定基準についてはこちらのページ(リンク)で掲載しています)を受けたまちづくりの組織・団体に対して、活動に関する経費の一部を助成します。主な助成内容は以下のとおりですが、詳細はこちらのページ(リンク)をご覧ください」

 

まちづくりに取り組もうとする(あるいは取り組んでいる)区民や区民組織・団体等が「主な助成内容」を見てざっと大枠をつかめる程度に、区のHP上でも掲載すべきだと考えています。(続く)

(2018年10月22日)

 

第18回:文京区の「まちづくり支援策」(区民からの提案②)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」のページにある「まちづくりコンサルタントの派遣」のところには、以下のように書いてあります。

 

「地域のまちづくり活動を行う団体などを対象に、都市計画や建築について専門的な知識を持ったコンサルタントを派遣します」--。

 

この部分も、昨日の私たちの提案を踏まえ、次のように丁寧かつ詳しく説明してほしいと思います。

 

地域のまちづくり活動を行う団体などを対象に、都市計画や建築、まちづくりについて専門的な知識を持った人材だけでなく、地元住民の合意形成の仕方、行政との円滑な協議の方法といったソフト面のノウハウも併せ持つ、アドバイザー/カウンセラー/コーディネーター/コンサルタントを、みなさんのまちづくりの段階に応じて派遣します

 

まちづくりの支援人材の派遣に関しては、別に詳細なページを作り、どのようなまちづくりの段階において、区としてどのような人材を派遣しようとしているのか、そして区として具体的にどのような人材を派遣対象として確保しているのか(具体名や名称は伏せても構わないと思いますが…)を、専門分野や得意とするスキル・能力、主な経歴とともに一覧表の形で公表すべきでしょう。

 

現状、文京区は「都市計画や建築について専門的な知識を持ったコンサルタント」と書いていますが、これはあくまで最低限の専門的知識ですし、余りに「専門的な知識」の中身が漠然としています。

 

これでは実際にまちづくりに取り組もうとしている区民にとって十分とは思えません。

 

いわゆる“行政主導”の都市計画に基づいたまちづくりを進めるだけなら、これで事足りるのかもしれませんが、区民の発意と自発的な申し出に基づき、それを形にしていくまちづくり(それは必ずしも「地区計画」を最終目標としたものではないかもしれません…)においては情報開示が不十分と思わざるを得ません。

 

まちづくりにおいて、区民が何に困っていて、何を必要とし、何をどうしていこうとしているか、真剣に聞く努力をしていくことで、区民のまちづくりに必要な制度・仕組みづくりにつながっていくのだと思います。(続く)

(2018年10月20日)

 

第17回:文京区の「まちづくり支援策」(区民からの提案①)

文京区のHPは区の「顔」であるとともに、区民にとっても「顔」のようなものであり、トップページに限らず、どのページであっても区民が誇りに思えるようにしてほしいと願うのは私たちだけではないでしょう。

 

10月2日に新たに設けられた「まちづくり活動の支援」のページはどうでしょうか。

 

区は、「区民が誇りを持てるように…」との思いを胸に、このページを作ったでしょうか。

 

区は、区民のまちづくりの願いや思い、希望を脳裏に描き、区民の心に寄り添いながら、このページを作ったでしょうか。

 

区は、区民目線に立ち、区民に分かりやすく、親切・丁寧な説明を心がけて、このページを作ったでしょうか。

 

区は、このページの冒頭、「まちづくり活動の支援」について次のように書いています。

 

「まちづくりにおいては、区民が中心になって、自分たちのまちをどのようにつくっていくかを検討していくことが重要です。区では、以下のような取組により、区民のみなさんが主体となる地域単位でのまちづくりを総合的に支援しています。詳しくは下記お問い合わせ先までご連絡ください」--

 

しかし、私たち区民としては、願わくば以下のように書いてほしかったと思っています。

 

区は、『文の京』のまちづくりにおいて、区民のみなさんの発意と自主的な申し出に基づき、地元区民のみなさんが中心となり、自分たちのまちをいかに守り、そして将来に向けていかにつくっていくかを検討することがとても重要だと考えています

 

区では、みなさんのまちづくりにかける思いや願いを最大限尊重しながら、文京区基本構想で掲げた『協働・協治』の精神と理念のもと、地元のみなさんに寄り添いながら、みなさんのまちづくりを育て育むべく総合的な支援に取り組んでいます

 

次に、「まちづくりコンサルタントの派遣」についてですが、「まちづくりアドバイザー/まちづくりカウンセラー/まちづくりコンサルタント/まちづくりコーディネーターの派遣」というように、まちづくりの段階と人材の知識・スキル・能力に合わせ、柔軟かつきめ細かな派遣事業にしてほしいと思います。

 

もしかすると、”言葉遊び”のように映るかもしれませんが、名称が違うということは担う役割が違うのです。

 

「まちづくりコンサルタント」に「アドバイザー」「カウンセラー」「コーディネーター」といった全ての役割を担わせるという発想もあるかもしれませんが、それでは無理があり、区民の発意あるいは自主的な申し出に基づくまちづくりの”芽”が出ることも、”新芽”が伸びていくこともないでしょう。

 

極めて初期の段階から、「地区計画」の実現に至るまで、継ぎ目なくスムーズに専門家が助言し、相談に乗り、指導していけるような仕組みづくりが欠かせないと思っています。(続く)

(2018年10月19日)

 

第16回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑮)

私たち文京区民としては、文京区のHPの「まちづくり活動の支援」のページ、さらにはそのページの最後に掲載している「区民が主体となるまちづくりの推進のイメージ」には正直言って、その内容に物足りなさを感じています。

 

例えば、千葉県印西市には「まちづくりファンド」があり、その「助成コース」は3種類あります。

 

1.まちづくり活動スタートアップコース・・・まちづくりへの参加の第1歩を歩み出そうとしている市民活動団体、あるいは活動を始めているが、まだ定着していない市民活動団体などの、初期の段階のまちづくり活動に対して助成を行います。

 

2.まちづくり活動パワーアップコース・・・1年以上の活動実績のある市民活動団体が、印西市をさらに住みよいまち、もっと豊かな地域社会にしていこうとするための活動に対して助成を行います。継続して応募が可能で、現状の活動からレベルアップした活動を展開し、団体活動のパワーアップと経済的な自立をするための支援をすることを目的とします。

 

3.市民がつくるまちおこし整備コース・・・建物、施設等の新設、改修、保全など、市民活動団体が一定期間継続して行う、まちづくり活動に伴う拠点づくり(ハード整備事業)に対して助成を行います。

 

例えば、千葉県鴨川市にはまちづくりの「支援補助金」がありますが、2種類に分かれています。

 

補助金の名称は「みんなで育て鯛!まちづくり支援補助金」とし、次に掲げる支援の区分に応じ当該各号に定める事項について補助するものとする。

 

1.立ち上げ支援「はじめ鯛!コース」・・・まちづくりを開始しようとする市民団体等の立ち上げを補助する。

 

2. 発展自立支援「発展させ鯛!コース」・・・現に取り組んでいるまちづくりを一層充実し、自立、発展させようとする市民団体等に対して補助する。

 

川崎市宮前区でもまちづくりの資金支援制度があり、「区内に活動が生まれ、定着し、自立していくという3 ステップの段階別コースを用意しています」としています。

 

Aコース(活動を生み出す支援)
Bコース(活動を育てる支援)
Cコース(活動を継続させる支援)

 

東京都23区では墨田区が(1)スタート応援コース助成と(2)ステップアップ応援コース助成を設け、杉並区は(A)びぎなーコースと(B)すてっぷコースを揃えています。

 

それぞれの市区で制度の目的・内容は異なりますが、私たちが強調したいのは「まちづくり」の段階に応じた支援をきめ細かく整えているという点です。

 

こうした「まちづくり」の段階に応じたきめ細かい支援は文京区においても必要であり、地元区民の発意に基づく「まちづくり」の花を咲かせ、実を実らせるには絶対に欠かせないのではないでしょうか。

(2018年10月18日)

 

第15回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑭)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」のページに掲載している「区民が主体となるまちづくりの推進のイメージ」はあくまでイメージにすぎません。

 

区民がこれを見て「イメージ」は理解できたとして、果たして次の一歩を踏み出そうとするでしょうか。踏み出せるでしょうか。

 

文京区はこのページの冒頭、「区では、以下のような取組により、区民のみなさんが主体となる地域単位でのまちづくりを総合的に支援しています」と書いています。

 

しかし、こんなに簡素で簡潔なページでは、区が何を以て「地域単位でのまちづくり」と言っているのか分かりませんし、何を以て「総合的」な「支援」と称しているのかも全く分かりません。

 

簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民が今、策定に取り組んでいる「千石憲章(千石4丁目南地区)」も「まちづくり」です。

 

さらにその先に見据えている千石4丁目南地区の「建築協定」も「まちづくり」です。

 

私たちが区に求めようとしている、文京区独自の「地区まちづくりルール」も「まちづくり」です。

 

都市計画法に基づく「地区計画」も「まちづくり」です。

 

「総合的」な「支援」を謳っているものの、その具体策が「相談窓口、職員派遣、コンサルタント派遣、まちづくり協議会助成、事業助成など」で、果たして「総合的」と言えるでしょうか。

 

全国の他の自治体の都市計画部門の人たち、まちづくりに携わる全国の人たちが文京区のこのページを見てどう思い、どう感じ、どう評価するでしょうか。

 

私たち文京区民として、このページが文京区の「まちづくり行政」を記載したものであることを誇りに思えるでしょうか。

 

このページを見た他の市区町村に住む人たちが、こうした「まちづくり行政」をしているのなら「住みたくなる」「住みたいと思える」と胸を張って言えるでしょうか。

 

区のHPは区の顔であるとともに、私たち区民の顔でもあるはずです。

 

「まちづくり活動の支援」と銘打ったページを作る以上、区民が誇りに思える充実したものにして頂きたいと思います。(続く)

(2018年10月17日)

 

第14回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑬)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」のページの最後にある「区民が主体となるまちづくりの推進のイメージ」を見ると、文京区が「まちづくり」を余りに単純に、そして大括りに捉えすぎていると思えてなりません。

 

そのことは他の自治体のHPの「まちづくり」のページと比べれば明らかですが、「まちづくり」はそんなに単純でも平坦でも一直線でもありません。

 

ひと言でいうなら、まちづくりはそれぞれの段階において必要な支援や後押しの仕方は異なり、それぞれの段階において必要な支援や後押しを丁寧に手厚くしていかなければならないということに尽きます。

 

文京区の場合、「まちづくり活動の支援」のページには、「まちづくりの総合的支援」として「相談窓口、職員派遣、コンサルタント派遣、まちづくり協議会助成、事業助成など」と記載していますが、これでは「総合的支援」と言い難いでしょうし(少なくとも「まちづくり」の支援策が充実している他の自治体に比べれば…)、逆に「総合的支援」を謳うのであれば、まちづくりの段階に応じてどのような支援があるのか具体的に明記すべきでしょう。

 

話を少し前の「まちづくりコンサルタント」や「まちづくりアドバイザー」に戻せば、例えば名古屋市では「アドバイザー」を2種類に分け、「ステップアップアドバイザー」と「 実践アドバイザー」に区別しています。

 

そのことは教育システムを思い浮かべれば自ずと明らかではないでしょうか。

 

小学校、中学校、高校、大学・大学院とあり、それぞれの段階においてそれぞれの段階の資格と知識、能力を持った人が教えるわけです。

 

「まちづくり」も同じだと思います。

 

区民の発意を尊重し、その思いや願いを育て育む「まちづくり」を推進するためには、「まちづくり」の種を芽吹かせるための支援、芽を伸ばすための支援、花を咲かせる支援、実を結ばせる支援をそれぞれの段階でしなければならず、その時々の育て方、水や養分の与え方は異なります。

 

もし、文京区が本当に「まちづく活動の支援」として、あのページに記載している内容で十分だと考えているなら、余りに「まちづくり」を軽く考えているのではないかと疑問を抱かずにはいられません。(続く)

(2018年10月16日)

 

第13回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑫)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」のページの最後に、「区民が主体となるまちづくりの推進のイメージ」が掲載されていますが、これは「文京区都市マスタープラン」の92ページに載っているものと全く同じです。

 

この「マスタープラン」は平成22(2010)年度に改定したものだそうですから、文京区における「まちづくり推進のイメージ」が8年前と全く変わらないということを意味します。(※その前のマスタープランは平成8年に策定しており、その時も同じイメージ図が使われていたかどうかは不明です)

 

しかし、この8年で世界だけでなく、日本の社会・経済環境は激変し、地球温暖化の影響と見られる予想を遙かに超えた大規模な自然災害も多発しています。

 

文京区内における住環境の守り方も大きく変わるなかで、「まちづくりの推進のイメージ」だけが何ひとつ変わらないというのも不思議な話です。

 

もちろん、まちづくりの根底にある理念や方向性はいつの時代にあっても変わらないという見方もあるかもしれません。

 

それを「イメージ」として表現している以上、ある意味、抽象的であり、時代を経てもそんなに変わり映えしないかもしれません。

 

ですが、たとえそうであっても、文京区のHPにおいて、新しく「「まちづくり活動の支援」なるページを設けるのであれば、より目新しく、より詳細に、より分かりやすく掲載する工夫をしてもいいのではないでしょうか。

 

少なくとも、このイメージ図が「文京区都市マスタープラン」からの転載であるという出典を明記すべきだったと思います。

 

8年前のイメージ図をそのまま掲載するページを見るにつけ、文京区は本当に区民の発意を尊重し、区民の不安や痛みに寄り添ったまちづくりを本気で後押ししようとしているのか、疑問に感じてしまうのです。

 

ほんのひと手間、ひと工夫で心が通うのと同じように、単に寄せ集めて形だけ取り繕うのではない作り込みをして頂きたかったと残念に思います。(続く)

(2018年10月15日)

 

第12回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑪)

前回に続いて、「文京お届け講座」について考えたいと思います。

 

昨日も指摘しましたが、「文京お届け講座」は区民の「生涯学習」として位置付けられ、「みんなで創り、みんなで守る住みよいまち」というテーマは、「平成30年度お届け講座テーマ一覧」によると、全76テーマのひとつにすぎません。

 

では、他の自治体はどうなっているでしょうか。

 

他でも市民や区民の「生涯学習」の一環として、「出前講座」のようなものがたくさんあります。

 

しかし、文京区と違うのは「まちづくり」に関する講座の充実度です。

 

例えば、埼玉県戸田市の「まちづくり出前講座」--。

 

「まちづくり」に分類されているものは12講座あり、その中には「住民発意のまちづくりについて」というテーマもあります。(※文京区の場合は都市計画部と土木部を合わせて6講座)

 

あるいは千葉県浦安市の「まちづくり出前講座」--。

 

講座名には「浦安のまちづくり」「市民が主役のまちづくり」「市民のまちづくり活動」「浦安市都市計画マスタープランについて」「浦安の都市計画」「地域のまちづくりのルール」といったテーマタイトルが並びます。

 

さらに埼玉県八潮市の「まちづくり出前講座」--。

 

講座名には「みんなで一緒にまちづくりを進めるために『自治基本条例』をみてみよう」「『協働のまちづくり』について」「みなさんでまちづくりを始めませんか?」「北部拠点の形成~地域が主体のまちづくり~」があります。

 

文京区において、「まちづくり活動の支援」の一環として掲げるのであれば、区民としてはその名称に相応しい数多くのテーマと充実した内容を揃えて頂きたいと思います。

 

「まちづくり支援策」と銘打つからには、「『文の京』みんなでまちづくり講座」でもいいですし、「『協働・協治』でつくるまちづくり講座」でもいいですから、「生涯学習」としての「文京お届け講座」から一歩も二歩も深めたテーマと内容にほしいところです。


そうでなければ、敢えて「まちづくり活動の支援」のページに載せる意味がありません。(続く)

(2018年10月14日)

 

第11回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑩)

新たに新設された「まちづくり活動の支援」というページには支援の一環として「文京お届け講座」も登場します。

 

講座の内容はというと、「~みんなで創り、みんなで守る住みよいまち~区民の方を中心とする団体・グループの学習会に区の職員等が出向き、まちづくりのルールの紹介やルールづくりの進め方などについてお話しするものです」との記載があります。

 

では、そもそもこの「文京お届け講座」とは一体、どういうものなのでしょうか。

 

そのページに飛ぶと、次のような記載があります。

 

「さまざまな区政の課題や地域の問題を区民のみなさんと共に考える『区民参画型区政』を推進するため、文京区では』文京お届け講座』を開講しています。これは、区民の方を中心とする団体・グループの学習会に区の職員等が出向き、区の取り組みや職務に関する専門知識を生かした内容をお話するものです」--

 

これは「文京お届け講座実施要項」(※原文ママ、正しくは要綱と思われます)に基づく事業であり、誰でも利用できるわけではありません。

 

対象は、「構成員の半数以上が、区内に在住・在勤・在学している10人以上で構成された、団体・グループ」と定めています。

 

平成30年度お届け講座テーマ一覧」を確認すると、確かに45番目にあります。

 

しかし、利用規程をよくよく読むと、「1講座の利用時間は2時間以内」と書いてあります。

 

たった2時間で、それも1回だけで「まちづくりのルールの紹介やルールづくりの進め方」をどれだけ学べると言えるのでしょうか。

 

そもそも、この「文京お届け講座」は「生涯学習」の事業の一環として位置付けられているものであり、実際に地域内で「建築協定」を結んだり、「地区まちづくり協定」をつくったり、「地区計画」を実現したりするような実践的なものではありません。

 

「生涯学習」の一環の事業において、単にひとつのテーマとしてあるだけなのに、それを「まちづくり活動の支援」の3本柱のひとつとして置くことには区民として大いなる違和感を感じずにはいられません。

 

「生涯学習」の一環として「まちづくり」を学んでみようかという区民と、差し迫った住環境の課題に対処するために、切実かつ真剣な思いで「まちづくり」を取り組まざるを得ない区民では自ずと必要とされる内容が違うはずです。

 

「まちづくり」という概念は極めて広く(狭義にとらえることもできますが…)、そして高く(高度な専門知識が必要という意味です)、深い(掘り下げて考える必要もあるという意味です)ものです。

 

区にも区議の方々にもその辺を理解した上で、文京区における「まちづくり支援策」を考えて頂きたいと思っています。(続く)

(2018年10月13日)

 

第10回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑨)

まちづくり活動の支援」はいいことですが、区民の税金を使うからには最低限の費用で、最大限の効果が見込めなければ”無駄使い”になってしまいます。

 

それは「まちづくりコンサルタントの派遣」「まちづくり協議会への支援」においても同様です。

 

しかし、文京区の今回の新設ページを見ても、いかにしてその効果を検証するかが分かりません。

 

例えば杉並区の場合、「まちづくり助成活動実績報告書」と「まちづくり活動助成公開審査会資料」を区のHPで公開する仕組みを取り入れており、検証の機会を区民に広く提供し、情報を共有しています。

 

それに対して文京区の場合、いかに最低限の費用(区民の税金)で、最大限の効果が見込めるような制度・仕組みにしているのか、さらにそれを後でいかに確認・検証するのかの仕組みがよく分かりません。

 

練馬区の場合、まちづくり支援は「みどりのまちづくりセンター」が担っていますが、「まちづくり活動助成事業」に関しては「報告会」があり、広く区民に活動成果を報告するようになっています。

 

文京区の場合、単にHPに載せていないだけで、もしかするとしっかりとした報告書の作成、公開を義務付け、報告会も実施しているのかもしれませんが、もし実施しているのであれば過去に遡って区のHPで情報開示し、区民と情報共有すべきでしょう。

 

それは単に事業の透明性を上げ、効率的事業にするためではなく、他の地域の区民が見ることで、他の地域へのまちづくりの機運の向上や知識・ノウハウの共有につながっていくことからも極めて重要だと思います。

 

ひとつの事業、ひとつの仕組みで最大限の波及効果、相乗効果を得るという観点からも徹底した情報公開と情報の共有、そのための区のHPの活用が見込まれるのではないでしょうか。(続く)

(2018年10月11日)

 

第9回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑧)

文京区のHPの「まちづくり活動の支援」の2番目には「まちづくり協議会への支援」があり、そこには「区から認定を受けた『まちづくり協議会』に対して、活動に要する経費の一部を助成します」と書いてあります。

 

しかし、具体的な助成の中身は明らかにしていません。

 

区民として分かるのは、これが「補助(金)」ではなく、「助成(金)」であるということぐらいです。

 

「助成金」は一般的に一定の条件を満たすことで支給されるものですが、このHPではどのような条件(要件)があるのか全く分かりません。

 

区(あるいは区の担当課)に大幅な裁量権があるのかもしれませんが、恣意的な裁量を防ぐためにも、公平性・公正性・平等性・透明性が確保されなくてはならないでしょう。(そのためにもHPで要件や条件を公表しておくことは極めて重要です)

 

これに対して、例えば品川区では「まちづくり補助金交付事業内容」がHPで公表されており、次のように書いてあります。 

 

「まちづくり補助金は、区長が補助する必要があると認めるまちづくり推進団体等に対して活動費の一部を補助する制度です。補助対象の経費は推進団体の運営に関して必要は以下の経費です」

 

1)事務費・・・コピー代、文房具など
2)広報費・・・ニュース、ちらし作成など
3)調査研究費・・・他の地区のまちづくり見学、本の購入など
4)その他区長が必要と認める経費

 

港区の場合、「港区まちづくり活動助成要項」に基づいて「まちづくりの段階に応じた助成」の仕組みを導入しており、その内容は以下のようになっています。

 

期段階においては、勉強会の資料印刷費などは3分の2、活動の広報紙・報告書等の印刷物は全額を50万円を上限に補助しています。

 

さらにこれが「地区まちづくりビジョンの登録」にステップアップすると、基礎調査・素案作成業務委託料などの3分の2、活動の広報紙・報告書等の印刷物は全額を350万円を上限に補助するようになっています。

 

もちろん、補助を受けるにあたっては、団体としての要件もあり、初期段階にあっては、活動区域が0.1ha以上、構成員が10人以上、うち区域内に区民が3分の2以上であることなどの条件があります。

 

ところが、文京区の場合はどのような要件を満たすと、どのような活動経費に対して幾らぐらいの助成を受けられるのか全く分かりません。

 

他の自治体に比べて遜色のない十分な助成額であるのか、あるいは他の自治体に比べて手厚くなっているのか比べることもできません。

 

港区と文京区を比べれば(あくまでHP上ということになりますが…)、どちらが区民目線で親切で丁寧か、どちらの区の方がまちづくりにあたって区民に寄り添う気持ちが強いか、どちらの区が区民の発意を最大限尊重し、大切に育て育もうとしているか、明らかではないでしょうか。

 

文京区の場合、「活動費の一部を助成」すると書いてありますが、1割でも一部ですし、9割も一部です。

 

区において制度や仕組みがあることだけではなく、制度や仕組みの内容を分かりやすく区民に伝えることも重要なはずです。

 

制度の仕組みは区民が有効に活用してこそ意味を持つものであり、そのためには区民に対する周知の仕方にも力を入れてほしいと思います。(続く)

(2018年10月11日)

 

↓↓↓下記に参考として港区の助成の概要図を紹介します↓↓↓

第8回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑦)

文京区が区のHP上で新設した「まちづくり活動の支援」について、引き続き取り上げます。

 

「まちづくりコンサルタントの派遣」について、簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民から提案があります。

 

それは、区が選んだ(あるいは区に登録された)「まちづくりコンサルタント」を派遣するのではなく、まちづくりを目指す区民(協議会)が選んだ(あるいは指名した)「まちづくりコンサルタント」を派遣してもらえるようにすることです。(※現状でもそうなっているのかもしれませんが、HP上では分かりません)

 

今年度の文京区の予算で、「まちづくりコンサルタントの派遣」事業費としていくら確保しているのか分かりませんが、例えば1件当たりの年度派遣費用の上限を決めておき、その範囲内で区民(あるいはまちづくり協議会)が選んだ(あるいは指名した)コンサルタントの派遣を受けられるようにするのです。

 

もちろん、区民(あるいはまちづくり協議会)がコンサルタントを選んだ際には事前に区に申請(あるいは相談)し、区の承認を得ることにします。

 

また、コンサルティング内容、派遣期間(あるいは回数)等も事前に区に申請(あるいは相談)し、区の承認を得ることとします。

 

コンサルティング終了後は、派遣を受けた区民(あるいは協議会)、コンサルティングした側の双方はコンサルティング報告書を区に提出します。

 

こうした仕組みを整えてこそ、区民が主役のまちづくりの活動を支援することにつながるのではないでしょうか。

 

私たちが提案する「まちづくりコンサルタントの派遣」の大まかな流れは以下のとおりです。

 

1. 区の認定まちづくり団体(協議会)等がコンサルティングを受けたい「まちづくりコンサルタント」を選定し、区に申請(あるいは事前に相談)

 ↓↓↓
2. 区の承認を受けた後、区の認定まちづくり団体(協議会)等はコンサルティング内容を詰め、区に申請(あるいは相談)

 ↓↓↓

3. 人選・コンサルティング内容とも区の承認を受け、区の認定まちづくり団体(協議会)等は「まちづくりコンサルタント」と契約

 ↓↓↓

4. 区の認定まちづくり団体(協議会)等は契約書の写しを区に提出し、派遣費用の支払いを申請

 ↓↓↓

5. 区は「まちづくりコンサルタント」と認定まちづくり団体(協議会)、その派遣概要を区のHP上で公表

 ↓↓↓

6. 派遣期間(年度内において最大1年)におけるコンサルティング開始

 ↓↓↓

7.  コンサルティング(派遣)終了後、区の認定まちづくり団体(協議会)等とコンサルタント双方が報告書を区に提出

 ↓↓↓

8. 区はHP上で報告書の内容を公表

 

もちろん、必ずこうでなければならないというものではありません。もしかしたら行制手続きの中でできない項目も含まれているかもしれません。

 

なお、これは「まちづくりコンサルタントの派遣」についての提案であり、私たちとしてはこれと並行して「まちづくりアドバイザーの派遣」も必要だと思っていますし、さらに地域のまちづくりの段階に応じて「アドバイザー」「コンサルタント」の派遣を使い分ける必要もあると感じています。

 

区民、区、区議の衆知を集め、その知恵と創意を有効活用できる制度・仕組みにしていくことが、文京区における真の「協働・協治」の理念の実現につながるのではないでしょうか。(続く)

(2018年10月10日)

 

第7回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑥)

文京区HPの「まちづくり活動の支援」のページを見る限り、文京区のまちづくり専門家の派遣事業には「まちづくりコンサルタント」しかなく、「まちづくりアドバイザー」はいません。

 

まちづくりコンサルタント」も、「まちづくりアドバイザー」も、確かに「まちづくりの専門家」なのかもしれませんが、肩書が違えば担う役割も異なるのは当然です。

 

兵庫県宝塚市のケースを見ると、その違いがはっきり分かるかと思います。

 

同市の場合、「まちづくり専門家の派遣」として、「まちづくりアドバイザー派遣」と「まちづくりコンサルタント派遣」の2種類あり、まず「アドバイザー」に派遣を受け、次の段階として「コンサルタント」お派遣を受けるというわけです。

 

◆まちづくりアドバイザー派遣・・・地域でまちづくりをはじめるに際し、地域の住民が行う勉強会に出向いて地区計画などのまちづくりの制度やまちづくり活動関する知識について専門的、技術的なアドバイスを行う専門家を派遣します。
  •対象:まちづくりを考える地域の 住民等の5名以上の団体
  •内容:派遣回数 1組織につき5回まで 期間は2年度まで

 

◆まちづくりコンサルタント派遣(平成23年度から実施)・・・まちづくりルールを策定するためのまちづくり活動を行うには、住民や地権者の方を対象とした「まちづくり活動団体」をつくる必要があります。まちづくり活動団体を設立するために必要な活動を専門家を派遣し、支援します。
  •対象:まちづくりアドバイザー派遣を受け、まちづくり活動団体の設立を考える地域の住民等の5名以上の団体
  •内容:広報・アンケート・構成員調査などのコンサルタント費用1組織につき50万円まで 期間は2年度まで

 

「アドバイザー」と「コンサルタント」で担う役割が異なり、派遣を受ける際のまちづくりの段階が異なることは、宝塚市における「コンサルタント派遣」事業が後からできていることからも見て取れます。

 

仙台市の場合も同じです。

 

◆まちづくりアドバイザー・・・まちづくり学習活動又は地域活性化活動に対し、学習会の開催、地域の問題提起に対する助言、住民アンケートの実施等の支援を行います。まちづくり計画案作成活動に対し、まちづくりの方針もしくは構想の策定、地域の課題の整理、地元の合意形成等の支援を行います。

 

◆まちづくりコンサルタント・・・まちづくり計画案作成活動に対し、まちづくり計画案の策定、当該計画案に係る地元の合意形成等の支援を行います。

 

いずれの場合も、初期段階の支援 として「アドバイザー」の派遣があり、次の段階として「コンサルタント」の派遣があります。

 

しかし、文京区の場合、「まちづくりアドバイザー」の派遣事業はなく、いきなり「まちづくりコンサルタント」の派遣になってしまうのです。

 

簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民が求めているのは、まちづくりの初期段階の支援策ですが、この派遣事業は初期段階の支援ではないことが分かります。

 

「まちづくり活動の支援」としていきなり「まちづくりコンサルタントの派遣」を持ってくるのではなく、まず「まちづくりアドバイザーの派遣」を置くべきなのではないでしょうか。

 

区民の発意を最大限尊重し、まちづく りへの思いや機運を大切に育て育むには、初期段階からきめ細かく支え。後押しする制度や仕組みが欠かせませんが、文京区のまちづくり支援策は少なくとも現状ではそうなっていません。(続く)

(2018年10月9日) 

 

第6回:文京区の「まちづくり支援策」(その後⑤)

文京区が区のHP上で新設した「まちづくり活動の支援」の「まちづくりコンサルタントの派遣」について、区民として不思議に思うことがあります。

 

それはなぜ、「まちづくりコンサルタントの派遣」はあるのに、「まちづくりアドバイザーの派遣」はないのかということです。

 

ひと言でいえば、両者とも「まちづくりの専門家」ということになるのかもしれませんが、例えば仙台市では両者を明確に区別して派遣しています。

 

仙台市のHPでは「まちづくり専門家とは」として、次のように説明しています。

 

「市民が主体的に行うまちづくり活動に対し、市が専門的な助言や情報提供等の支援を行うため派遣する専門家をいいます」「まちづくり専門家には『まちづくりアドバイザー』と『まちづくりコンサルタント』があります」--

 

兵庫県川西市の場合も「まちづくり支援事業」として、「まちづくりアドバイザー派遣」と「まちづくりコンサルタント派遣」が別々に並んでいます。

 

名古屋市も同様です。

 

名古屋市地域まちづくりサポート制度要綱」を読むと、第2章として「地域まちづくりアドバイザーの派遣(第4 条―第18 条)」、第 4 章として「 地域まちづくりコンサルタント活用助成(第27 条―第35 条)」が別々に定められています。

 

つまり、文京区の場合、「まちづくりコンサルタントの派遣」しかなく、どうして「まちづくりアドバイザーの派遣」はないのかという疑問が出てくるというわけです。

 

私たち区民は「まちづくりアドバイザーの派遣」のないことそれ自体が問題だと、短絡的に言っているわけではありません。


どうして「まちづくりコンサルタントの派遣」はあって、「まちづくりアドバイザーの派遣」はないのか、合理的な根拠と理由をうかがいたいのです。

 

また、どのような庁内議論を経て「まちづくりアドバイザーの派遣」は必要ないという結論に至ったのか?

 

なぜ、文京区における「まちづくり活動の支援」は「まちづくりコンサルタントの派遣」だけで十分である(=「まちづくりアドバイザーの派遣」は必要ない)ということになったのか?

 

庁内での検討過程に何か抜け落ちた視点はなかったのか?

 

こうした点を説明して頂きたいと思いますし、それは文京区としての区民に対する「説明責任」の一環であるように思います。

 

「どうしてするのか」とともに、「どうしてしないのか」についても「説明責任」を果たすことが、真の意味での「協働・協治」につながるのではないでしょうか。(続く)
(2018年10月8日)

 

第5回:文京区の「まちづくり支援策」(その後④)

文京区が区のHP上で新設した「まちづくり活動の支援」について、引き続き取り上げます。

 

「まちづくりコンサルタントの派遣」を区のひとつの事業として見た場合「公平性」「公正性」「平等性」「透明性」が担保されていなければならないのは言うまでもありません。

 

しかし、区のHPを見る限り、それらがどのように担保されているのか、区民にはさっぱり分かりません。

 

では、どうなっていれば、「公平性」「公正性」「平等性」「透明性」が担保されていると言えるでしょうか。

 

他の自治体を調べれば参考になる事例は出てくるかと思いますが、例えば他の22特別区の場合、墨田区では「墨田区まちづくり専門家派遣制度要綱」があり、この「要綱」に従って事業を進めています。

 

港区には「港区まちづくりコンサルタント派遣要綱」がありますし、中野区には「中野区まちづくりコンサルタント派遣要綱」があります。

 

公益財団法人練馬区環境まちづくり公社を持つ練馬区では「まちづくり専門家派遣要綱」があります。

 

もしかすると、文京区にもこうした「派遣要綱」があるかもしれませんが、少なくとも区民が容易にアクセスし、区のHPを通じて読めるようにはなっていません。

 

本来的には、「まちづくり基本条例」が制定し、それに基づいて「まちづくりコンサルタントの派遣」に関する「要綱」を整備することが、最も確実に「公平性」「公正性」「平等性」「透明性」を担保することにつながるように思えます。(続く)

(2018年10月7日)

 

第4回:文京区の「まちづくり支援策」(その後③)

文京区が区のHP上で新設した「まちづくり活動の支援」について、引き続き取り上げます。

 

「まちづくりコンサルタントの派遣」について、本当に有効な事業であるなら簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民としても活用したいと思います。

 

しかし、現状の文京区のHPのような簡素な内容では、区民が利用に二の足を踏んでも仕方ないのではないでしょうか。

 

私たち区民としての最大の心配は、そのコンサルタントが私たちのまちづくりの考え方やまちづくりにかける思いを尊重し、心から理解してくれるだろうか。

 

私たちのまちが抱える課題や困難、痛みや苦しみを真に理解し、区民に寄り添い、「解決しよう」「解決してあげたい」と心の底から思ってくれるかどうか。

 

私たちが目指すまちづくりの願いや希望を育て育む形で、最適な助言を与え、導いてくれるかどうか。

 

単に専門的な知識だけではなく、合意形成のノウハウといった目に見えない優れたスキルの蓄積を有している人であるかどうか。

 

コンサルタントという名称が付いているわけですから、そもそもコンサルタントとしての資質・能力を兼ね備えた人でるかどうか。

 

まちづくりのコンサルティング分野において、それなりの実績を有する人であるかどうか。

 

私たち区民としても、お願いするからには、しっかりした頼れるコンサルタントに依頼したいと思っています。

 

ところが、文京区のHPを見る限り、こうした区民の気持ちや思いを汲み取るような内容にはなっていないように映ります。

 

簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち千石4丁目の区民としては、「まちづくりコンサルタントの派遣」事業を活用するのであれば、次のような人にコンサルティングをお願いしたいと思っています。

 

1.大学・大学院等において、都市計画や都市工学、都市計画、建築行政などの専門分野を学んだ方

2.大学・大学院等において、都市計画や都市工学、まちづくりなどに関して教えた経験をお持ちの方

3.自治体において、まちづくり審議会や委員会等で活動歴のある方

4.自治体において、「まちづくり基本条例」などのまちづくりに関する条例・要綱づくりに携わった経験のある方

5.自治体において、まちづくりコンサルティングの実績のある方

6.自治体における都市計画行政やまちづくり政策等に関する論文や書籍の執筆実績のある方

 

こうした「まちづくりコンサルタント」を文京区が確保し、区民に派遣できてこそ、「まちづくり活動の支援」として有効に機能するのだと思います。(続く)

(2018年10月6日

 

第3回:文京区の「まちづくり支援策」(その後②)

文京区が区のHPにおいて、「まちづくり活動の支援」のページを10月2日付で新設しましたので、引き続き取り上げます。

 

「まちづくりコンサルタントの派遣」に関し、文京区は「地域のまちづくり活動を行う団体などを対象に、都市計画や建築について専門的な知識を持ったコンサルタントを派遣します」としています。

 

しかし、「まちづくりコンサルタント」とはどういう専門知識やスキルを持った人物を指すのか、区民には全く分かりません。

 

その点、お隣の北区の場合、まちづくりの「活動」「団体」「専門家」について、以下のように定義付けしています。

 

「まちづくり活動」とは、区民又は権利者が相互に協力し合い、地域特性に応じた居住環境の改善や建築物の整備等を行う活動をいいます。

 

「まちづくり活動団体」とは、まちづくり活動を行うことを目的とする区民等からなる団体、グループ等をいいます。

 

「まちづくり専門家」とは、まちづくりに係る各分野において、「都市計画、都市再開発及び建築計画に関する知識、資格および経験」、「法律、経営、税務及び不動産等に関する専門の資格」、「その他まちづくりに関する特に優れた知識及び経験」を有する者をいいます。

 

その上で、同区は「派遣の対象となる活動」「まちづくり専門家の業務」について、区のHP上で公表しています。

 

派遣の対象となる活動・・・次に掲げる活動を行う「まちづくり活動団体」の活動に対し、「まちづくり専門家」を派遣します。

(1)まちづくりを推進するために行う学習会等のまちづくりに関する活動

(2)地区計画等まちづくりのルール作成に関わる活動

(3)その他区長がまちづくりに寄与すると認めるまちづくりに関する活動

 

まちづくり専門家の業務・・・

(1)「まちづくり活動団体(以下、団体)」の主体的な取組みに対する専門的な助言等

(2)団体が行うまちづくり活動の支援並びに地区計画等のまちづくりルール作成のためのワークショップの企画及び運営の支援

(3)ワークショップの成果のとりまとめ並びに今後のまちづくり活動に必要な提案および報告書等作成の支援

(4)その他区長が必要と認める業務 

 

しかし、文京区の「まちづくり活動の支援」のページにはそうした記載が一切、ありません。

 

もうひとつ別の区の例と比べてみましょう。

 

世田谷区では、街づくり専門家の派遣事業を、一般財団法人世田谷区トラストまちづくりに業務委託していますが、その詳しい内容を公表しています。

 

街づくり専門家の専門分野・・・「都市計画、建築設計、弁護士、不動産鑑定士、中小企業経営診断士、税理士等です」

 

《登録資格》
1.技術士(建設部門)、一級建築士、弁護士、不動産鑑定士、中小企業診断士、税理士等の資格のある方
2.都市計画、都市再開発または建築設計に関し、3年以上の実務経験のある方
3.学校教育法による大学または旧大学令による大学において、都市計画、都市再開発または建築設計に関する課程を修め、かつ、それらに関して2年以上の実務経験のある方
4.上記1~3と同等またはそれ以上の知識、経験、能力があると区長が認める方

 

《登録機関と登録更新の期間》
・街づくり専門家の登録の有効期間は、登録を行った日から2年を経過した日から以後最初の3月31日までとします。
・街づくり専門家の登録を更新する場合、登録者の方は有効期間満了の年の3月20日までに登録申請書を新たに区長に提出する必要があります。この場合の有効期間は、その年の4月1日から3年間とします。

 

《街づくり専門家支援の種類》
◎原案作成・・・地区街づくり協議会が行う、地区街づくり計画原案の作成に係わる作業及び活動に対する専門的立場からの相談・指導・助言・地区住民等の意見調整及び区との連絡調整などを行うものです。

 

◎地区街づくり計画の実現誘導・・・ ・地区住民等または地区街づくり協議会が行う、地区街づくり計画の実現に向けた自主的な街づくり活動に対する専門的立場からの相談・指導・助言・区との連絡調整などを行うものです。

 

◎協定策定・・・ 区民等が行う、安全で住みやすい快適な市街地の整備、開発または保全を目的とする協定等の案の作成に係わる作業及び活動に対する専門的立場からの相談・指導・助言・協定関係権利者の意見調整及び区との連 絡調整を行うものです。

 

しかし、文京区のHPではこうしたことが何ひとつ書いてありませんから、区民としても利用したいと思っても本当に利用価値があるかどうか測りかねてしまいます。

 

文京区において、「まちづくりコンサルタントの派遣」をする際には、まず「まちづくり」の定義をしっかり定めた上で、その定義に沿ったコンサルティングが確実にできるように、知識と能力、スキルの要件を定める必要があるでしょう。

 

文京区民にしてみれば「そういう素晴らしいコンサンタントがいるなら、ぜひお願いしたい」というようにしてほしいですし、そうした制度・仕組みであってこそ、文京区民のまちづくりの機運はさらに高まり、実際の活動も円滑に進むと思います。(続く)

(2018年10月5日)

 

第2回:文京区の「まちづくり支援策」(その後①)

このコーナーでは第1回(2018年9月13日)として文京区を取り上げましたが、区のHPが10月2日付で更新され、新たに「まちづくり活動の支援」というページが新設されましたので、ご紹介します。

 

これまで文京区の「まちづくり」の項目では、「まちづくりの計画等」と「不燃化特区」が並び、「まちづくりの計画等」として「まちづくり基本計画」「都市再生整備計画」「後楽緑道」の3項目がありましたが、10月2日から「まちづくの計画等」「まちづくり活動の支援」「不燃化特区」という3本柱に変わりました。

 

そして新たに加わった「まちづくり活動の支援」のページでは次のように書いてあります。

 

「まちづくりにおいては、区民が中心になって、自分たちのまちをどのようにつくっていくかを検討していくことが重要です。区では、以下のような取組により、区民のみなさんが主体となる地域単位でのまちづくりを総合的に支援しています。詳しくは下記お問い合わせ先までご連絡ください」--。

 

そして、具体的な支援策として、次の3つが挙げられています。

 

①まちづくりコンサルタントの派遣・・・ 地域のまちづくり活動を行う団体などを対象に、都市計画や建築について専門的な知識を持ったコンサルタントを派遣します。

 

②まちづくり協議会への支援・・・区民のみなさんで構成されており、区から認定を受けた「まちづくり協議会」に対して、活動に要する経費の一部を助成します。

 

③文京お届け講座(~みんなで創り、みんなで守る住みよいまち~)・・・区民の方を中心とする団体・グループの学習会に区の職員等が出向き、まちづくりのルールの紹介やルールづくりの進め方などについてお話しするものです。

 

まず、①の「まちづくりコンサルタントの派遣」についてですが、他の区では派遣する「まちづくりコンサルタント」が登録制度となっているところもあり、そうした区では区民がどのような専門知識を持つ人がいるか分かるようになっていますが、文京区ではそうはなっていません。

 

まちづくりの概念は極めて幅広く、区民がどのようなまちづくりを目指しているのか、どのような専門知識を必要としているのか、さらにはどのような活動段階にあるのかで、必要とされる知識とスキルは異なり、相応しい人材も大きく変わります。

 

「区民が中心になって、自分たちのまちをどのようにつくっていくかを検討していくことが重要」であるとの認識が文京区にあるのであれば、区民自らがまちづくりに適した人材を幅広い選択肢の中から選べるようにすることも大切ではないでしょうか。

 

まちづくりを進めようとという地元区民と「まちづくりコンサルタント」がうまくマッチングしてこそ、地元区民の発意を大切にし、それを育て育む形でのまちづくりが実を結ぶでしょう。

 

真の「協働・協治」の理念のもと、まちづくりに取り組もうとする地元区民と「まちづくりコンサルタント」の心が通い合うことが重要であり、区においてはしっかりとした「まちづくりコンサルタント」の登録制度を確立した上で、区のHPにおいて登録者を情報公開することが欠かせないといえます。(続く)

(2018年10月4日)

 

第1回:文京区の「まちづくり支援策」(2018年10月1日まで)

まずは文京区の「まちづくり支援策」がどうなっているのか、HPで見ていきましょう。

 

まちづくりに関して文京区のHPを辿ると、次のようになります。

ホーム>防災・まちづくり・環境>まちづくり・都市計画>まちづくり

 

「まちづくり」のページには、「まちづくりの計画等」と「不燃化特区」が並び、前者には「まちづくり基本計画」「都市再生整備計画」「後楽緑道」の3項目が含まれます。 (注:2018年10月1日まで)

 

一番大きなスペースを割き、詳しく掲載しているのは「まちづくり基本計画」です。

 

そこでは、「まちづくり基本計画とは」として、次のように説明しています。

 

「文京区では総合的なまちづくりのガイドラインである『文京区都市マスタープラン』の実現性を高め、文京区のシンボルゾーンの早期形成を図るため、拠点地区に位置づけられた地区について、まちづくり基本計画を策定しています」

 

まちづくり基本計画を策定した地区(4地区)

(1) 茗荷谷駅周辺まちづくり基本計画(平成10年3月策定)

 ・計画策定区域(大塚一丁目1~9番/大塚二丁目1番/大塚三丁目1~6番、29番、30番/小日向一丁目5番、8~27番/小日向二丁目1~15番、23~31番 /小日向三丁目全域/小日向四丁目全域/小石川五丁目1~19番/音羽一丁目5~7番

 ・まちづくり基本計画概要版:茗荷谷駅周辺まちづくり基本計画

 

(2) 文京シビックセンター周辺地区まちづくり基本計画(平成13年3月策定)

 ・計画策定区域(春日一丁目15~16番/小石川一丁目1~23番/小石川二丁目1~3番、18~25番/小石川三丁目26~28番/本郷四丁目15番~27番/西片一丁目2番,15番)

 ・まちづくり基本計画概要版:文京シビックセンター周辺地区まちづくり基本計画

 

(3) 根津駅周辺地区まちづくり基本計画(平成20年3月策定)

 ・計画策定区域(根津一丁目及び根津二丁目の全域)

 ・まちづくり基本計画概要版 :根津駅周辺地区まちづくり基本計画

 

(4) 千駄木駅周辺地区まちづくり基本計画(平成23年3月策定)

 ・計画策定区域(千駄木二丁目全域及び千駄木三丁目23番~52番の区域)

 ・まちづくり基本計画概要版:千駄木駅周辺地区まちづくり基本計画

 

「まちづくり基本計画」のページを読む限り、「文京区都市マスタープラン」の実現を目指した”行政主導”のまちづくりであることが見て取れそうです。

 

もちろん、簡易宿所建設計画地周辺に住む私たち区民は、必ずしも”行政主導”のまちづくりを否定しているわけではありません。

 

大所高所に立って区全体の発展を考えた上で、様々な観点からの都市計画上の必要性も当然あるからです。

 

それに、もしかするとHPでは紹介されていないだけで、上記の地域に 関してはいろいろな支援策があるかもしれません。

 

しかし、上記の「計画策定区域」に、私たちの住む「千石4丁目」は含まれていません。

 

私たちのように、「計画策定区域」に定められていない地域の区民が自主的にまちづくりに取り組もうとした時、今の文京区には地区計画以外に、制度や仕組みの面で何の支援策もないのです。(※区の担当者が親身に相談に乗ってくれるかもしれませんが…)

 

私たちとしては、いわゆる”行政主導”の「まちづくり」に加えて、地元区民の自発的な申し出に基づく「まちづくり支援策」も必要であり、それを求めているというわけです。

 

私たちは、他の自治体で導入していないような全く新しい 制度や仕組みを求めているわけではありません。

 (2018年9月13日)